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ファーウェイの徐直軍氏は、AIの進化を維持するために持続可能なコンピューティングパワーの構築の重要性を強調し、中国内で利用可能な半導体製造技術を活用することが必要であると述べた。

アメリカ政府の制裁が続く限り、ファーウェイは独自のAI半導体「昇騰」を出してコンピューティングパワーを強化していく方針で、今後の5年間でエコシステムの発展にも投資を続ける意向を表明した。

徐氏は、ファーウェイが世界にもう1つの選択肢となるために取り組んでいくと語った。

(要約)

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ファーウェイは中国独自のコンピューティングパワーの構築に執念を燃やす。写真は「ファーウェイ・コネクト」で基調講演する徐直軍・輪番董事長(同社ウェブサイトより) 

 

 「インテリジェント・トランスフォーメーションは長期的なプロセスであり、その基盤はコンピューティングパワー(計算能力)にある。これは現在も、将来においても変わらない。つまり持続可能なコンピューティングパワーの構築こそ、AI(人工知能)の進化を維持するカギなのだ」 

 

【写真】ファーウェイが自社設計した初のAI半導体「昇騰910」 

 

 中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の輪番董事長(訳注:交代制の会長職。任期は6カ月)を務める徐直軍氏は9月19日、上海市で開催した年次イベント「ファーウェイ・コネクト」の基調講演で、同社のAI戦略におけるコンピューティングパワーの重要性をそう強調した。 

 

 さらに徐氏は、ファーウェイが今後必要とするコンピューティングパワーを確保するための基本戦略について、次のように述べた。 

 

 「われわれは現実的に利用可能な半導体製造技術をベースに、AI革命がもたらすチャンスをつかみ取りたい。そのために新たなコンピューティング・アーキテクチャーを創造し、長期的に必要なコンピューティングパワーを満たしていく」 

 

■米制裁の長期化を覚悟 

 

 徐氏のこの発言は、ファーウェイに対するアメリカ政府の制裁を念頭に置いたものだ。2020年9月のアメリカ政府の制裁強化により、同社はアメリカ由来の技術を用いた先端半導体を調達できなくなり、関連技術やサービスの入手も困難になった。 

 

 そんな中、AIの急速な進化についていくためのコンピューティングパワーをどう確保するかは、ファーウェイにとって極めて深刻な課題なのだ。 

 

 「コンピューティングパワー(の向上)は、半導体製造のプロセス技術(の進歩)に大きく依存している。だが、AI半導体に関するアメリカ政府の対中制裁が解除される見込みはなく、中国の半導体製造技術は長期にわたり(世界の最先端から)後れを取らざるを得ない。それはファーウェイが先進的なチップを作るための制約になる」(徐氏) 

 

 アメリカ政府の制裁が続く前提で、ファーウェイがコンピューティングパワーを高めるにはどうすればよいのか。 

 

 「中国国内で利用可能な半導体製造技術でコンピューティングパワーを構築しなければ、長期的な持続可能性を担保できない」(徐氏)というのが、ファーウェイが出した結論だ。 

 

 徐氏の説明によれば、AIの性能を高めるには半導体の演算能力だけでなく、システムの(最適化を通じた)総合的なパフォーマンスが重要になる。そこでファーウェイは、新たなコンピューティング・アーキテクチャーの創造を通じて、(海外の技術に依存しない)中国独自の持続可能なコンピューティング産業を作り上げていくという。 

 

 

 この戦略の中核となるのが、ファーウェイが自社設計するAI半導体「昇騰(Ascend)」だ。その第1世代の「昇騰910」は(アメリカ政府の制裁が強化される前の)2019年8月にリリースされ、半導体の受託製造で世界最大手のTSMC(台湾積体電路製造)が回路線幅7nm(ナノメートル)のプロセス技術で製造した。 

 

■2025年に次世代AIチップも 

 

 その後、2023年夏に投入した改良型の「昇騰910B」は、生成AIの大規模言語モデル向けのトレーニング機能を大幅に向上させた。業界関係者の間では、さらに性能を向上させた「昇騰910C」が2024年後半に登場すると予想されている。 

 

 (訳注:ファーウェイは昇騰910Bがどこで製造されているかを公表していないが、中国の半導体受託製造大手のSMIC[中芯国際集成電路製造]が協力したとみられている) 

 

 「2025年に次世代の『昇騰920』をファーウェイが投入できれば、その性能はエヌビディアが中国向けに販売する(演算能力を抑制した)AIチップ『H20』を圧倒する可能性がある」。中国の半導体コンサルティング会社の責任者は、財新記者の取材に対してそんな見方を示した。 

 

 ファーウェイは独自のAIチップの開発と同時に、その性能を最大限に引き出すエコシステム構築に全力を挙げる構えだ。輪番董事長の徐氏は、前出の基調講演で次のように決意を語った。 

 

 「今後の5年間に、ファーウェイはエコシステムの発展にさらなる投資をしていく。われわれの目標は、コンピューティングの分野で世界にもう1つの選択肢を提供することだ」 

 

 (財新記者:覃敏) 

※原文の配信は9月20日 

 

財新 Biz&Tech 

 

 

 
 

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