( 219974 )  2024/10/08 16:17:04  
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自民党の石破茂新総裁が誕生し、総裁選挙後に新内閣が発足した。

総裁選挙は消極的な選択で進行し、候補者の準備不足が問題視された。

石破内閣のスタートには賛否が分かれ、総裁選の経緯や内閣人事に対する批判が根強い。

新内閣の支持率は50%前後で、特に早期解散論への対応で反発を招いている。

国民の納得と共感を得られるかは疑問視されており、総選挙で自民党の議席が減少する可能性が高いとの見方がある。

(要約)

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衆院本会議で行われた所信表明演説で笑顔を見せる石破茂首相=10月4日、国会内【時事通信社】 

 

 自民党の石破茂新総裁が誕生し、10月1日に臨時国会で首相に選出され、石破内閣が発足した。石破氏は首相に選出される前の記者会見で、同27日投開票の衆院解散・総選挙の意向を表明。野党は、総裁選時の発言を翻し、予算委員会での十分な論戦を避けた石破氏への批判を強めている。新総裁誕生から新内閣発足への一連の動きをどう見るか。総裁選前にも話を聞いた自民党の久米晃元事務局長に再びインタビューした。(時事通信解説委員 村田純一) 

 

【ひと目でわかる】石破茂新首相はこんな人 

 

◆総裁選は消極的選択 

 

―自民党総裁選の結果をどう見ましたか? 

 

▽「誰がいいか」というより、「誰よりいいか」「誰よりマシか」という話。結局、消極的選択ということでした。 

 

 今回、候補者が総裁選への準備を何もしていなかったというのは非常に問題だと思っています。もし総裁選出馬の意思があるなら、水面下でもいいからもっと前から人を集めておくとか、公約を考えておくとか準備しておくべきでした。推薦人を20人集められるかどうかばかりが焦点になってしまい、それでは、国民に訴えるべきものや熱意が伝わりません。 

 

―岸田内閣の閣僚も出馬し、候補者は9人にもなりました。 

 

▽何も準備せず、思いつきのようにやっているから、20人集められない人もいました。去年から、岸田文雄首相(当時)の続投はもう無理だと分かっていたのに、今回の立候補者9人はあまりにも準備不足。石破さんは5回目の出馬なのに、当初20人集まるかどうか分からないという局面もあり、いかがなものかと思いました。 

 

 当初は小泉進次郎さん、石破さん、高市早苗さんが先行したけど、小泉さんにとって、最初の関門は記者会見そして候補者の討論会でした。そこで経験不足などが明らかになるだろうと思っていたら、案の定で、そこから急速に支持は沈んでいきました。 

 

―最初の出馬表明の記者会見が「小泉人気」のピークだったのではないかと思います。 

 

▽9人の候補が並んだ日本記者クラブの記者会見でつまずきました。論戦の受け答えで経験不足が露呈して、小泉ブームが沈んで、その代わりに石破さん、高市さんが浮上しました。 

 

 決選投票の結果は「高市さんよりは石破さんの方がマシだろう」ということでしょう。高市さんの論は、かつての「暴支膺懲」(ぼうしようちょう)政策と同じようなものです。「暴れる支那(しな)を懲らしめよ」「中国何するものぞ」という論です。日本らしさを貫き通すことは当然のことですが、しかし、ことさら過大に中国を敵視することは、今は得策ではないように思います。その通りにやっていたら、中国だけでなく、韓国、米国との関係も良くなるわけがない。威勢のいいことを言うのはいいが、戦前と今とでは明らかに国力が違います。 

 

 

退任のあいさつを終え、花束を手に職員らに見送られる高市早苗前経済安全保障担当相=10月2日、東京都千代田区【時事通信社】 

 

◆決選投票で議員票は? 

 

―石破氏と高市氏との決選投票では、実力者や派閥的思惑で議員票が動いたようですが。 

 

▽岸田内閣で高市さんがどれだけ足を引っ張ったかを考えると、岸田さんの石破さん支持という対応は分かります。全体を見ると、派閥的な動きは若干残っていましたけど、高市さんを支持した麻生派の動きは、完全に崩壊したに等しい。 

 

 今までは、総裁候補を持たない派閥が多かったけど、これからは9人の候補の推薦グループが総裁候補を持つ派閥になり得ます。総裁候補者を持つグループという新しい動きになるでしょう。だけど、それも本人たちの努力次第です。 

 

―高市氏が1回目の投票で議員票2位、党員・党友票がトップだったのは意外でしたか? 

 

▽やっぱり、高市さんは旧安倍派の票を集めたのでしょう。安倍晋三元首相が石破さんを嫌っていたことが影響しているのでしょう。旧安倍派には石破さんに対する嫌悪感がそこそこあるけど、高市さんに対する嫌悪感もあります。だから、よりマシな方を選んだということじゃないですか。 

 

―総裁選後の自民党だが、ノーサイドの雰囲気はあまりないようですが。 

 

▽ないですね。新総裁が石破さんに決まったら、それに従うのがこれまでの自民党の伝統でした。高市さんの支持者の中には「敵に塩を送る必要はない」と言っている人もいるようで、これはいいことではありませんね。 

 

◆国民は石破さんに「がっかり感」? 

 

―石破政権の閣僚・自民党役員人事をどう見ますか? 

 

▽石破さんは5回も総裁選に出たけど、信頼できる参謀や手駒がいない。せっかく内閣はできたのに、華がない。初入閣組が13人いるとはいえ、内閣がどこへ向かおうとしているのかはまだよく分かりません。 

 

―新総裁就任後の記者会見で、衆院選投開票日を10月27日と表明しました。総裁選期間中、石破氏は国会の予算委員会で論戦を行った上で解散する意向を示していましたが、手のひらを返して早期解散論を打ち出し、野党は「うそつき」と反発していますが。 

 

▽石破さんの取りえは何かと言えば、例えば、自説を曲げないことでした。総裁選中と違うことを言ったので、石破さんらしくないと批判されています。 

 

 それは、石破さんにそう言わせた人がいるんです。「鉄は熱いうちに打て、野党の準備が整わないうちに総選挙をやった方が(自民党の)得だ」という論です。しかし、この早期解散論で、石破さんらしさ、石破さんのカラーが完全になくなり、自民党にはマイナスに働くと思います。 

 

―各社の新内閣支持率をどう見ますか? 新内閣発足に伴う「ご祝儀」は出なかったようですが。 

 

▽マスコミ各社とも内閣支持率はおおむね50%前後で、これまでの内閣発足時に比べて低いとされていますが、私は、国民の半分近い支持があったことに、正直驚いています。国民が期待している証拠です。 

 

 岸田内閣発足後の2021年衆院解散・総選挙で自民党は261の議席を獲得しました。しかし、今回はこれを増やすことは難しいでしょう。せっかくのご祝儀相場も、あの早期解散論によって石破さんらしさが吹っ飛んでしまいました。いつも早期解散を主張する理由は、相手の準備が整ってない方がいいと、それだけです。 

 

 選挙はやってみないと分からないが、国民は石破さんに対する「がっかり感」の方が強いのではないですか。結局、石破さんは弁解せざるを得なくなりました。選挙は弁解するようでは負けますから。 

 

 

自民党の選対委員長に就任し、記者会見する小泉進次郎氏。右は副総裁に就任した菅義偉氏=9月30日、東京・永田町の同党本部【時事通信社】 

 

◆国民の「納得と共感」得られるか 

 

―石破内閣は「納得と共感」を打ち出していますが、なかなか国民の「納得と共感」は得られないのでは? 

 

▽私の持論だが、選挙というのは自民党に入れたいか、野党に入れたいかではない。野党の準備が整っていないから、というのは自民党の得にはなりません。自民党に入れたいか、入れたくないかですから。野党の準備が整っていなくても、「自民党は駄目だな」と思われたら、野党に票は入るのです。 

 

「裏金議員」に対しても、世論は厳しい対応を求めています。厳しい対応をしたら、それを穴埋めするような時間はもうないんです。公認するかしないか。小選挙区と比例代表の重複立候補を認めないという案もあるようだけど、国民がそれで留飲を下げて納得するかどうかは分かりません。 

 

 一方で、一回処分を下しているのに、何でまた処分を下すのかという党内の声もあり、そういう議員に同情する声もあります。議員だって、5年間で(政治資金収支報告書の不記載額が)10万円程度の人と2000万円以上の人と同じにするのかという意見もあります。 

 

 最初に岸田さんがきちんと対応して、国会の政治倫理審査会に全員出ろと言っておけば、それで収まったと思いますよ。それを出るも出ないも人任せみたいな感じでやって、誰も出ないから岸田さん自身が出ました。そういう対応が国民の不信感を今日まで引きずっているんじゃないですか。 

 

―自民党の衆院議席は前回をかなり下回るのではないでしょうか? 

 

▽これからいろいろ予想が出てくるでしょうけど、前回よりプラスと言う人は一人もいない。マイナス20~30か、あるいは与党で過半数割れという数字ばかりです。せっかく石破内閣が発足したのに、石破さんらしくない対応をして、国民が納得する説明をできないなら、選挙結果にも影響を与えるし、前途は多難だと思います。 

 

 石破さんは幹事長も官房長官も「外様」に頼むしかない。これは、そのポストを頼める側近をつくり、総裁選に出るための兵を養い軍師をつくるという、当たり前の作業をしてこなかったつけでしょう。「石破さんらしさを封じられた石破内閣」です。しかし、この総選挙を乗り切ったら、石破さんらしさを出して、言ったことはやり切るしかないでしょう。そう願いたいものです。 

 

(インタビューは10月2日実施。世論調査に対する回答部分は後日追加しました) 

 

 

 
 

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