( 220419 )  2024/10/09 16:59:28  
00

中国政府はEV産業に大きく賭けたが、競争と需要の低迷によりメーカーは不振に陥っている。

EV促進策の修正が始まり、地方自治体が補助金を提供しているが、持続可能な状況ではない。

政府は約34兆円を費やしてEV市場を育成したが、世界的にEV販売は減少しており、米国や欧州では中国製EVに関税を課す動きがある。

中国政府はEV支援を減らし、業界の統合が進む見通し。

地方自治体は財政難の中でEVメーカーを支援しようとしており、無理がある状況が続いている。

(要約)

( 220421 )  2024/10/09 16:59:28  
00

Tada Images / Shutterstock.com 

 

中国政府は経済を発展させようと電気自動車(EV)に大きく賭けた。だが、中国の中央経済工作会議で決められた他の多くの方針と同様、うまくいっていない。ひしめくメーカー間の激しい価格競争と、国内外での需要の減退により、EVメーカーは不振に陥っている。かなりの公的支援を受けているにもかかわらず、損失を計上しているメーカーもある。政府はEV促進策を修正し始めており、これにより地方自治体が補助金の不足分を補うようになっている。これは持続可能な状況ではない。 

 

今や失敗に終わりつつあるEV促進の取り組みは5年以上前に始まった。米マサチューセッツ工科大学(MIT)が出版する科学技術誌『MITテクノロジーレビュー』によると、多額の補助金に減税、調達契約、そのほか生産を増やして市場で中国を優位に立たせるための間接的なインセンティブなどで、政府は2300億ドル(約34兆円)相当を費やしたという。その結果、最終的に1310万台の市場が形成され、EV保有台数は世界全体の60%に達した。政府はまた、中国製EVの国外での販売も推進した。この取り組みは、米政府が中国と中国製品を敵視し始める前から米国ではほとんど進まなかった。だが欧州ではかなりの成功を収めた。 

 

現在、世界的にEV販売は減少傾向にあるようだ。米国はEVとEV部品、そして中国製のバッテリーやパーツなど多くの中国製品に関税を課している。もちろん、中国製EVは北米にはほとんど輸入されていなかったため、米政府の措置で特段の変化はなかった。だが関税と中国を敵視する姿勢から、中国のEVメーカーは米国で利益を上げられるようになる見込みがないことをはっきり悟った。 

 

米国での中国製EV販売にかかる期待をさらに削ぐ要素もある。おそらくテスラを除く米国の車メーカーが、EVに関しては厳しい現状に直面している。つまり、米政府が敵対的でなかったとしても、中国メーカーの米国でのEV販売は困難にぶつかっていたのだ。 

 

 

一方、中国製のEV販売が好調だった欧州は、中国が欧州市場に低価格車をダンピング(不当廉売)し、そうすることで欧州メーカーのEV生産を阻害していると問題視し始めている。EUは中国製EVの輸入に最大45%の関税を課す構えを見せており、中国メーカーがすぐにでも欧州で堅調な販売を見込めるという期待は打ち砕かれている。 

 

国内経済の他分野で過剰な生産能力を生み出した計画ミスですでに行き詰っている中国政府は、EV推進から手を引いている。政府のEV業界への支援は2018年から66%近く減っている。このような動きでは通常、業界の統合が余儀なくされる。他のメーカーより弱く、低効率で、出来の劣る製品を生産する企業はしばらくして廃業となり、廃業を免れた他の企業は少ない生産で収益を確保しなければならなくなる。だが、今起きているのはそうした動きではない。財政難に陥っているところが多い地方自治体が、急速に死に体になりつつあるEVメーカーを存続させるために公金を注いでいる。 

 

上海や深圳、昌平など一部の地域では、国産EVの購入者に1台1000~1万元(約2万~21万円)のリベートを提供し始めている。EVメーカーをより直接的に支援しようとしている自治体もある。EV生産に関わる高収入の労働力を維持・拡大するためだという。一部の地方自治体には選択の余地がない。政府がEV産業を手厚く支援していた初期に、これらの地方自治体はEVメーカーに直接投資したり、EVメーカーに代わって融資を受けたり、債券を発行したりしてEV促進に関与していた。一例として、安徽省合肥市は、EV産業を支援しなければEVメーカーNIOへの50億元(約1050億円)の投資を失う立場にある。 

 

こうした状況は明らかに無理がある。地方自治体はすでに財政難に直面している。不採算の企業を支援する余裕などなく、しかも世界的にEV販売が急回復する可能性は極めて低い。最終的にはメーカーの淘汰が進み、民間の投資家は地方自治体と同様に損失に直面し、地方自治体は維持しようと努めている高所得の労働力も失うことになる。そうなれば、中国は景気回復を目指す中で新たな試練に直面する。 

 

Milton Ezrati 

 

 

 
 

IMAGE