( 220804 )  2024/10/10 17:04:32  
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不破聡氏による記事は、オートバイ販売最大手のレッドバロンがアメリカのベインキャピタルに買収される際の業界再編の可能性や事業の動向について詳しく語られています。

ベインキャピタルが取得したレッドバロンは、中古オートバイの販売において業績が頭打ちとなっていたが、事業承継のための買収であり、業績は悪化していないとされています。

将来的な上場の可能性も示唆されており、業界再編が進む可能性も考慮されています。

(要約)

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yu_photo - stock.adobe.com 

 

 中小企業コンサルタントの不破聡と申します。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、「有名企業の知られざる一面」を掘り下げてお伝えしていきます。 

 オートバイ販売の最大手であるレッドバロンが、アメリカの投資ファンド・ベインキャピタルに買収されます。中古オートバイの販売台数が頭打ちとなる中で、飛び込んだ驚きのニュース。業界の再編も視野に入ります。 

 

 オートバイファンのなかにはレッドバロンのヘビーユーザーも多く、突然の外資系投資ファンド買収に驚きの声も聞こえてきます。ただし、今回のM&Aは事業承継問題を解消する目的のものであり、レッドバロンの業績が悪化したわけではありません。 

 

 2023年10月期の連結売上は889億円で、バイク王の2023年11月期の売上高は330億円。レッドバロンは競合を大きく引き離しています。利益率も高く、EBITDA(税引前利益に特別損益、支払利息、減価償却費を加えたもの)は100億円程度あるとも言われています。 

 

 今回、ベインキャピタルが取得するのは過半数の株式で、創業家は引き続き株主として残る予定。 

 

 ベインのような大手投資ファンドは、株式を取得してから5年ほどでエグジットするのが通例です。エグジットはM&AかIPOによって行われるケースが大半。レッドバロンほどの規模があれば、将来的な上場も視野に入っているのではないでしょうか。 

 

 日本経済新聞はベインの株式の取得額が1000億円近いと報じており、大規模なM&Aでした。また、株主として残る創業家からも、他社への売却よりは上場の方が賛同を得やすいでしょう。創業家は上場後も安定株主として保有し続けることができるためです。 

 

 ベインキャピタルが出資をし、事業の成長支援を行うとなれば、企業価値向上に向けた取り組みを進めるのは間違いありません。DX投資などを進めるとしており、生産性の向上を図る見込みです。 

 

 しかし、可能な限り企業価値を高めたい投資ファンド側からすれば、もっと踏み込んだ経営改善策を行いたいはず。レッドバロンはオートバイの販売店の他、レッドバロン会員のための会員制リゾートである「カイザーベルク」、タイ料理レストラン「ナムチャイ」、オートバイ専用サーキット「那須モータースポーツランド」、二輪専用の「ライディングスクール岡崎」などの運営を行っています。 

 

 周辺事業であるこれらの施設が不採算、あるいは資産効率が悪いと判断されれば、譲渡される可能性もあり得るでしょう。 

 

 

 主力のオートバイ販売店の整理にまで着手するのかは、微妙なところではないでしょうか。レッドバロンはアフターサービスが充実しており、新車・中古車に限らず保証がついています。レッドバロンでオートバイを購入した人は、自動的に会員となるシステム。幅広い店舗ネットワークでアフターサービスが受けられる点は、レッドバロンでオートバイを購入する大きなメリットになっています。不採算だからといって閉店を進めてしまえば、会員の反感を買うことになるでしょう。 

 

 仮にレッドバロンが上場したとすれば、注目したいのはその後のベインの動向。投資ファンドは上場によって持株を処分した後も継続して株主として残り、事業会社などにまとまった株式を譲渡することがあります。業界の再編が進む可能性があるのです。 

 

 オートバイの国内需要は縮小気味。1982年に327万台のピークを迎え、2015年以降は30万台で推移していました。2021年に40万台を回復しましたが、これはオートバイの三密を避けて移動できることなどが背景にあったと言われており、コロナ収束後にどれだけ好調をキープできるのかはわかりません。2023年は40万台を維持したものの、前年比0.1%の減少でした。 

 

 オートバイは趣味性が高く、根強いファンが多いのも事実。しかし、市場が旺盛に伸びている業界ではありません。 

 

 また、中古車の場合、販売店は規模の経済が働きやすいという特徴があります。買取を行う店舗数が多ければ多いほど、中古車の仕入先が広がるためです。つまり、市場が縮小気味のオートバイ市場においては、規模を拡大することが生き残り策の一つとして有効だということになります。 

 

 現在、レッドバロン以外のオートバイ販売の有力な会社といえば、バイク王&カンパニーと、「バイク館」を運営するイエローハット。 

 

 イエローハットは、2024年3月期の売上高は前期比0.4%減の1466億円、営業利益は同5.1%減の144億円でした。やや停滞感が出始めています。 

 

 2025年3月期は売上高を2.3%増の1500億円、営業利益を同3.6%増の150億円と予想しています。しかし、2024年4-6月の売上高は前年同期間比1.1%増の346億円、営業利益は同4.6%減の31億円でした。 

 

 売上の伸びは力強さに欠け、営業減益でのスタートとなりました。二輪を強化事業に掲げており、店舗ネットワークの拡大は大歓迎でしょう。 

 

 バイク王は2023年11月期に1億6600万円の営業損失を出しています。仕入台数不足を補うため、広告宣伝費を積極的に投下したものの、訴求力が不足して十分な費用対効果が得られなかったのです。 

 

 今期は収益力を取り戻すために広告宣伝費を大幅に切り詰めており、営業黒字に転じる見込み。しかし、仕入台数は減少しており、事業者向けオークションでの仕入れを強化しています。やはり、中古車の仕入が経営課題になっているのです。 

 

 ベインキャピタルによるレッドバロンの買収は、業界再編の可能性を多分に含んだものだと言えるでしょう。 

 

<TEXT/不破聡> 

 

【不破聡】 

フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界 

 

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