( 221959 )  2024/10/13 17:02:17  
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9月に日中両政府が日本産水産物の禁輸措置を緩和することで合意し、中国からの輸入が徐々に回復する見通しとなった。

豊洲市場の業者は、需要の増加と価格上昇の両面から期待と不安を抱いている。

これまでの1年間は、輸出が大幅に落ち込んでおり、高級魚介の価格も下落したという。

一方で、輸入規制の緩和により価格高騰の懸念もある。

中国の禁輸が解除されれば、高級魚介の価格がさらに上昇する可能性もある。

豊洲市場関係者は、中国に対する不信感もあり、取引リスクを警戒している。

(要約)

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豊洲市場で扱われるキンメダイなど高品質な日本産水産物 

 

 日中両政府は9月、中国が続けてきた日本産水産物の禁輸措置を緩和し、輸入を着実に回復させることで合意、中国外務省は輸入を段階的に進めると明らかにした。これを受け、東京・豊洲市場(江東区)の水産業者には期待と不安の声が交錯している。禁輸が解除されれば需要の増加が見込まれる一方、中国以外でも人気が高いウニやノドグロなどの価格が上昇するとの見方もあるからだ。(時事通信水産部 岡畠俊典) 

 

【写真】すしネタなどに使われる高級魚のノドグロ 

 

◆「この1年は苦しかった」 

 

 東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出が昨年8月に始まって以降、中国は日本産水産物の全面禁輸を続ける。豊洲市場で主要な輸出先だった香港も、同じ時期に10都県の水産物の輸入を停止した。中国の輸入再開に向けた動きに、同市場関係者は「ようやく前進した」と歓迎する。仲卸業者は「香港などの輸入制限解除にも広がってほしい」と話す。 

 

 日本産の魚は、品質の良さから海外でも評価が高く、和食ブームを追い風に米国や東南アジアなどでも消費が広がっている。欧州連合(EU)は既に輸入規制を撤廃しており、同市場の卸会社関係者からは「科学的に安全なのに、まだ禁輸を続けるのか」との声も上がる。 

 

 豊洲市場の仲卸業者らは輸出の大幅な減少を余儀なくされ、豊洲市場は大きな打撃を受けた。中国などで人気だったウニやノドグロ、アワビ、キンメダイといった高級魚介の価格は一時下落。北海道産をはじめとするホタテは相場が3割前後落ち込んだほか、香港の規制対象地域となった千葉県産の魚も値を下げた。 

 

 輸出先を失ったホタテなどの生産者が「脱中国依存」を進める中、豊洲市場でも販路の開拓を急いだ。昨秋以降、消費が旺盛な米国や、マレーシアといった東南アジア向けなどに輸出を広げたり、SNSの発信を強化して国内の飲食店にアピールしたりして、売り上げの回復に努めた。ある仲卸業者は「この1年はとても苦しかった」と振り返る。 

 

◆人気の魚介、価格高騰か 

 

 一方で、輸入規制の緩和により、水産物の価格高騰を懸念する声もある。豊洲市場では、国内外に新たな販売ルートが増えたこともあって、ウニやホタテなどの相場は持ち直している。米国向けなどが高値で取引されるケースもある中、中国の禁輸が解除されれば「人気のある高級魚介などの価格がさらに高くなるのでは」と同市場の卸会社関係者は指摘する。 

 

 海外で品質への信頼が厚いという国産マグロも、引き合いが強まって相場が上向くとみられている。価格が上昇すれば、漁業者らの収入増につながる一方、「国内で消費者の手が届きにくくなるのでは」(別の卸会社)と不安視する声もある。 

 

 豊洲市場関係者の間では、中国に対する不信感も拭い切れないようだ。同市場関係者は、輸入規制が緩和されたとしても「また態度が一変するかもしれず、取引がリスクになりかねない」と警戒する。禁輸を巡る動きが「外交カードに使われているようにも感じる」との声もある。輸入の再開時期や基準も不透明なため、「今後の情勢や動向を注視するしかない」(輸出関連業者)と慎重な声は多い。 

 

 

 
 

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