( 222866 ) 2024/10/16 02:19:56 0 00 楽天の今江監督
楽天の今江敏晃監督が解任され、三木肇2軍監督の就任が発表された。
今江監督は今季が2年契約の1年目。交流戦で球団史上初の優勝を飾ったが、ロッテとCS進出争いをしていたシーズン終盤に今季ワーストの8連敗を喫したことが響き、3年連続4位に終わった。疑問符が付く采配がなかったわけではない。ただ、周囲に経験値の浅いコーチが多いことを考慮すべきで、現有戦力の中で目一杯の戦いをしたといえる。
【写真】J1のヴィッセル神戸でも頻繁な監督交代をしている楽天オーナーはこの人
早川隆久、藤井聖の両左腕が共に11勝をマークし、辰己涼介が最多安打(158本)のタイトルを獲得。小郷裕哉が全球団唯一のフルイニング出場で32盗塁、小深田大翔が29盗塁と機動力を発揮した。20代の伸び盛りの選手たちが成長し、今江監督は来季に向けてどう戦うかイメージをふくらませていただろう。だが、球団の評価は途中解任だった。
今江監督の続投が不透明だった9月下旬、現場では不安の声が漏れていたという。
「いろいろな選手が『今江さん続投ですよね? これで解任だったら意味が分からない』『今江さんどうなるんですかね…球団のビジョンが見えない』など、フロントへの不信感を口にしていました。そもそも、今江監督は全面的なバックアップを得て監督に就任したと言えない。長年守護神を務めた松井裕樹がパドレスに移籍したが、昨オフの目立った補強はポンセ、ターリ―ぐらい。2年契約で推定年俸4000万円と監督としては安すぎる条件でした」(楽天を取材するテレビ関係者)
戦前の下馬評は低かった。最下位を予想する野球評論家も少なくない中で、下馬評を覆すためには改革が必要だった。則本昂大を守護神に配置転換し、浅村栄斗を三塁にコンバート。思い切った決断がすべて成功したとは言えない。それでも、選手たちは試合を重ねることで成長し、たくましくなっていった。
「今年は2年連続最下位から2位に大躍進した日本ハムが目立ちましたが、楽天も来季に向けて可能性を感じさせる戦いぶりでした。経験のあるヘッドコーチを置いて、ポイントゲッターになる打者、即戦力の先発投手を加えればさらに上を狙えると思ったのですが……。ここで今江監督を解任することで、チーム作りがまたリスタートになる。こんな人事ばかりをしていたら、監督の成り手がいなくなりますよ」(スポーツ紙デスク)
■過去にも首をかしげる監督人事が…
2013年にリーグ優勝・日本一を飾って以来低迷期が続いている楽天は、監督人事で首をかしげることが多い。生え抜きで初の監督に就任した平石洋介元監督は19年に3位と前年の最下位から躍進したが、球団は契約延長せずに監督を交代。今回と同じように三木監督が2軍監督から内部昇格で引き継いだが、20年に4位に終わると1年限りで退任。2軍監督に再び戻るという異例の人事だった。そして、石井一久前監督(現楽天シニアディレクター)が21年から就任。GM時代に大型補強した選手たちが主力となり、優勝を目指したが、3位、4位、4位と優勝争いに絡めない。今江監督が今年から就任したが、再び1年の短命政権に終わった。
楽天の球団OBは憤りを口にする。
「石井前監督は結果を出していないのに3年間続けさせた。それなら今江監督にも複数年はチームを委ねるべきです。1年で解任するなら、なぜ就任当時に2年契約を結んだのか。大きな過失があったわけでもないのに失礼ですよ。選手たちが不安になるのも無理はない。こんなチーム作りをしていたらファンにも見放されてしまう」
楽天の三木谷浩史オーナーはJ1・ヴィッセル神戸の会長も務めている。元スペイン代表のイニエスタ、ビジャ、元ドイツ代表のポドルスキなど世界のトップレーヤーたちを獲得するド派手な補強策で話題を呼び、大迫勇也、武藤嘉紀、山口蛍、酒井高徳ら日本代表クラスを擁した昨年はクラブ創設29年目でリーグ戦初優勝。今年もリーグ戦終盤で首位・サンフレッチェ広島に1差の2位の好位置につけている。神戸の歴代監督を見ると、シーズン途中に頻繁に監督が交代することが珍しくない。22年は途中解任を繰り返して4人の監督が務め、その以前も1人の監督がシーズンを通じて指揮を振るうことのほうが珍しい。
■サッカーと野球の監督交代は違う
過去にサッカー担当を務め、現在はプロ野球を取材するスポーツ紙記者はこう指摘する。
「頻繁に監督が代わる楽天のスタイルは神戸と重なります。海外のサッカークラブでは決して珍しいことではなく、複数年契約を結んだ監督でも途中解任される。今回の今江監督の解任は、来年の戦いを見据えた時、チームが強くなるスピード感が遅いと球団フロントが判断したのかもしれません。ただ、サッカーは監督を代えて戦術を変えることで劇的に強くなるケースがありますが、野球の場合は監督がコロコロ代わってすぐに頂点に輝くことはなかなかない」
巨人の阿部慎之助監督が就任1年目でリーグ優勝を飾ったが、楽天と巨人とではチーム状況が全く違う、と言う。
「もちろん、阿部監督の手腕は高く評価されるべきですが、原辰徳前監督が長期政権で築いた土台があってこそです。楽天は主力の高齢化で若手に切り替える過渡期を迎え、育成にも時間を掛けなければいけない。今江監督にすぐに結果を求めるのは酷ですし、三木新監督に代えてもチーム再建に時間が掛かることを覚悟するべきです」
大きな波紋を呼んだ今江監督の解任。シビアな監督交代は吉と出るか――。
(今川秀吾)
今川秀悟
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