( 222969 )  2024/10/16 16:03:34  
00

日本維新の会の共同代表である吉村洋文大阪府知事は、衆院選の応援演説で自民党の裏金作りに反対し、比例重複を認めない姿勢を示している。

維新は18選挙区の候補者に比例近畿ブロックへの重複立候補を認めず、その方針を強調している。

一方で、維新は地元での敗北が続く中、万博、兵庫県知事、テレビ出演などが低迷の要因とされている。

維新の参院議員が無所属で兵庫県知事選に出馬するなど、維新の内部でも動きがある中、維新は今回の衆院選で前回の議席を獲得するのが難しいとみられている。

(要約)

( 222971 )  2024/10/16 16:03:34  
00

衆院選の応援演説をする日本維新の会共同代表の吉村大阪府知事 

 

「自民党の裏金作る政治、どうやって日本をよくするのか。(議員という)身分を守りたいのでしょう。維新は比例重複を認めず、やっていく」 

 

【写真】吉村知事に代わるようにテレビ出演が増えているのはこの人 

 

 衆院選初日の10月15日、大阪市内でマイクを握った日本維新の会の共同代表でもある大阪府の吉村洋文知事が訴えた。 

 

その数日前、 

「これまでの選挙では比例の『保険』なんてどうでもええと思っていた。今回だけは欲しいと願っていたら、小選挙区の単独と決まった……」 

 と困惑していたのは、大阪府内で複数回当選を重ねてきた日本維新の会の前衆院議員A氏だ。 

 

 日本維新の会は8日、今回の衆院選で、大阪府内の全19選挙区のうち、擁立が決まったばかりの大阪9区の新人を除く18選挙区の候補者について、比例近畿ブロックへの重複立候補を認めないと発表し、名簿を公表した。 

 

 A氏の事務所で話を聞いたが、パソコン画面には吉村知事の会見動画が映し出されていた。 

 

 動画の中の吉村知事は、 

「大阪のメンバーは背水の陣で、厳しい状況で自民党、公明党とぶつかっていく。それぞれ(候補者は)腹くくっていると思う」 

 と険しい表情で語っていた。 

 

■「維新も自民党も変わらない」 

 

 2021年の衆院選、22年の参院選、23年の大阪府知事選、大阪市長選を含む統一地方選と、大阪や近畿の選挙で連戦連勝を重ね、近畿圏以外へも党勢を拡大してきた維新。しかし、今年になって風向きが変わってきた。地元大阪で今年4月には大東市長選、8月には箕面市長選と連敗し、市議補選、府議補選でも勝てなくなっている。 

 

 その理由をA氏はこう説明する。 

 

「総論として、橋下徹氏が大阪府知事時代の2010年に大阪維新を結成して大阪では14年、国政に進出してからは10年ちょっとになる。いろいろ改革をして、有権者にも一定程度、認められている。しかし、府民・市民にはよくなったという生活実感があまりなく、『維新も自民党もどっちも変わらない』という話を聞かされることがある」 

 

 

■低迷の要因は「万博」「兵庫県知事」「テレビ」 

 

 A氏は低迷した具体的な要因として、25年4月に開催される大阪・関西万博、兵庫県の斎藤元彦前知事の「悪名」、そしてテレビの3つをあげた。 

 

 万博は、費用が膨れ上がる問題だけでなく、工事が遅れ、ガス爆発事故が発生し、海外のパビリオンが撤退し、前売りチケット販売は低迷するなど、マイナスのニュースが流れることが多い。 

 

 最近も、日本国際博覧会協会(万博協会)の方針に、批判が殺到した。近畿6府県は万博に子どもを無料招待する事業の実施を決めている。学校の先生は児童・生徒を引率するために事前に会場の下見が不可欠だが、下見をした後に引率が難しいなどと判断して来場を取りやめたときには、万博協会がその入場券代を学校側に請求する方針だということが報じられ、あまりに理不尽な対応だと批判の声があがったのだ。大阪府交野市の山本景市長は7日に会見を開いて、子どもの無料招待事業の中止を求めた。 

 

 これに対して協会の副理事長でもある吉村知事は10月9日の会見で、 

「下見の結果、(万博に)行かないと判断することもありえる。入場料の請求は間違っている」 

 と火消しに走らざるを得なかった。 

 

 2つ目は、維新が知事選で推薦した斎藤前知事がパワハラや「おねだり」など数々の疑惑を内部告発され、兵庫県議会から不信任決議を可決され失職した問題だ。 

 

 吉村知事は箕面市長選で維新の現職市長が惨敗した後、選挙戦の応援に入った際に、 

「『維新を応援しているんだけど、斎藤さん、おかしいんじゃないか』と言われました」 

 と、斎藤前知事の問題が箕面市長選や維新の支持急落に影響しているという見方を示していた。 

 

 3つ目の「テレビ」は、吉村知事のテレビ出演が激減したことだ。 

 

 新型コロナウイルスの感染拡大がはじまった20年から、関西の民放テレビ局では連日のように、吉村知事を登場させていた。当初はニュース関連で話を聞いていたが、いつしかワイドショーやバラエティーにも出演。 

 

「吉村知事がテレビに出ると、視聴率が一気にアップする。知事なので、ギャラはいらない。コロナのせいで番組制作が苦しくなっていたテレビ局にとって、本当にありがたかった。吉村知事にとっても、大阪府や維新のPRになるという思いもあって、積極的に出演してくれたはず」 

 

 と大阪の民放局幹部は話す。 

 

 

■吉村知事にかわって泉房穂氏がテレビ出演 

 

 だが、コロナ禍が縮小して行動制限がなくなるのと歩調を合わせるように、吉村知事をテレビで見る回数はすっかり減った。 

 

 とって変わるようにテレビで見ることが増えたのが、兵庫県明石市の前市長、泉房穂氏だ。泉氏は自民党にも維新にも容赦ないコメントで知られ、衆院解散後も明石と大阪、東京を駆け回ってメディア出演を続けている。 

 

 泉氏は取材に対してこう話す。 

 

「私がワイドショーなどに呼んでもらっているのは、出ると数字が跳ねるからだと聞かされています」 

 

 先の民放局幹部も、こう言った。 

 

「いま、いちばん視聴率、数字がとれるのは泉さん。衆院の解散・総選挙もあって、維新の吉村知事は出しにくい。それに数字も泉さんの方が明らかにアップして、吉村知事は伸びにくくなった」 

 

 冒頭の維新のA氏は、こう話す。 

 

「自民党や公明党のような強固な組織の支援がない維新にとって、テレビの威力はすごいものがありました。これまで選挙で勝てたのも、人気のある吉村知事がテレビに出まくっていたのが追い風になっていた。しかし、万博関連での批判や、維新議員の不祥事での謝罪、とりわけ兵庫県の斎藤前知事の疑惑と、対応に追われることばかり。テレビ出演で吉村知事が泉氏にこれまでの立ち位置をとられてしまったことも維新低迷の理由でしょう」 

 

■維新の参院議員が無所属で知事選出馬へ 

 

 斎藤氏の失職に伴う兵庫県知事選は11月17日に投開票が予定されている。維新は、独自候補として維新の参院議員、清水貴之氏を知事選に擁立するはずだった。だが、清水氏は立候補表明の記者会見でこう言ったのだ。 

 

「維新の会でずっと活動してきたが、本当に兵庫県が全国的に悪い印象を与えてしまった。無所属で立候補する」 

 

 清水氏は維新からの推薦も支援も受けない方針だという。要は、斎藤氏の「悪名」とともに、推薦した維新も評判を落としたため、 

「維新から出馬しても勝てない可能性が大」(維新の兵庫県議) 

 と判断したのだ。 

 

■「大阪で維新は自民党以上の逆風」 

 

 すっかり色あせつつある、維新の看板。維新の国会議員の秘書経験もある選挙プランナ―の藤川晋之介氏は次のように語る。 

 

「大阪の小選挙区で比例重複なしというのは、思い切った戦略だ。衆院選は全国的には自民党に逆風とみられる。しかし、維新は発祥の地の大阪で、自民党以上に逆風とも聞く。事実、清水氏は維新でなく無所属で出馬する。総選挙でも風向きが悪いと、関東や東海などで急に維新からの立候補を取りやめた予定者がいた。維新が前回の衆院選で獲得した41議席を維持するのはかなり難しいだろう」 

 

(AERA dot.編集部・今西憲之) 

 

今西憲之 

 

 

 
 

IMAGE