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埼玉県三郷市にある人気の家系ラーメン店「三郷家」が、客がライスを残すことに対して怒りを表明したツイートを投稿し、ネット上で論争が巻き起こっている。

家系ラーメン業界は、原材料費の高騰や人手不足などで打撃を受けており、値上げやサービスの見直しを余儀なくされている状況が続いている。

(要約)

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Photo by Getty Images 

 

《今、米残して帰った女子2人見てたらdmください》 

 

埼玉県三郷市にある横浜家系ラーメンの人気店「三郷家」が10月10日にXに投稿した、この鬼気迫るツイートが波乱を呼んでいる。 

 

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同店は続けて、《本当は店にベタベタベタベタ注意書を貼りたくないし》と前置きした上で、《無料ライスは終了かフォロワーサービスとします》と投稿。さらに《ちょいちょい勘違いしてる人が居るので言うとライスは自己申告にしました。その結果残す》と、ライスを残す客への怒りを吐露した。 

 

この一連の投稿に対し、ネット上では〈サービスのライスを残すなんて、お店にも農家さんにも失礼だと思います〉〈客として最低限のマナーは守るべき〉〈店員さんに『すみません』と一言伝えていれば、こんなことにはならなかったのに〉と、店側を擁護する意見が次々と挙げられた。 

 

だが一方で、擁護を上回る数で店側への批判も殺到する事態に。〈ライスを残したからってそこまで怒る必要あるか〉〈仮に連絡したら何されるか分からない。怖すぎる〉〈また上から目線のラーメン屋か〉〈SNSに客を晒すようなラーメン屋には絶対行きたくない〉など、その対応に苦言を呈する声が目立った。 

 

この一連の騒動に対して、業界側の人たちはどう受け止めたのだろうか。 

 

「三郷家」と同じく、首都圏で家系の看板を掲げるラーメン店の店主は「確かに、匿名とはいえど、SNSで特定の人物を晒しあげる三郷家さんの投稿は配慮に欠いている」とした上で、「そこまでしてしまう気持ちは同情せざるをえない」と明かしてくれた。 

 

「『ライス無料、おかわり自由』といったサービスを維持しているのも、すべて『家系ラーメンにはライスが欠かせない』というイメージがお客さんの間に浸透しているからです。ライスのサービスがあるかないかで、売り上げも雲泥の差です。 

 

ただ、米の値上がりは深刻で、去年と比べて約3割も上がっています。それでもなんとかギリギリのところで『無料』にしている店は、三郷家さん含め多い。だからこそ、注文したのに残されてしまうことに怒りがこみ上げてくる気持ちは十分理解できます」 

 

事実、家系ラーメン業界はいま、厳しい状況に置かれている。米だけでなく、あらゆる材料、それも家系ラーメンを特徴づけている、俗に言う“三種の神器”、チャーシュー・ほうれん草・海苔が大幅に値上がりしているという。 

 

 

Photo by iStock 

 

まずチャーシュー。国産豚肉の卸売価格は、今年1月からわずか半年で2倍近く上昇している。つぎにほうれん草は、猛暑や豪雨により出荷量が伸び悩んだことを受けて、例年より2割、ピーク時には実に5割近く平均価格が高騰した。 

 

追い打ちをかけたのが全国的に不作が続いている海苔だ。収穫量は半世紀ぶりの低水準といわれた前年から変化せず、価格は前年度より2割上昇。海苔相場は過去最高を更新している。 

 

フードビジネスコンサルタントの永田雅乙氏もこう語る。 

 

「原材料費、スープを長時間にわたって炊くことによる光熱費、そして人手不足による人件費が軒並み高騰を続けており、ラーメン業界は大打撃を受けています。実際、帝国データバンクの調査によれば、ラーメン店の倒産が急増しており、前年から倍増ペースでこのままでは過去最多の倒産件数になる可能性もあります。 

 

何より家系ラーメンは、ラーメンの中でも際立って原価設定が高いジャンルです。ここ最近、家系ラーメンの多くが値上げに踏み切っていますが、これも仕方がないのでしょう。また、値上げラッシュの背景には、年末の宴会シーズンにラーメンの需要が高まる前に、新しい値段設定に早く慣れてもらうという意図もあると考えられます」 

 

永田氏の言葉通り、10月1日には横浜家系ラーメン発祥の地、神奈川県横浜市の「吉村家」が、麺類を40円値上げすることを発表し、話題を呼んだ。また、吉村家直系で知られる同市の「杉田家」が6月1日に、直系ではないものの、一大グループを築いている千葉県柏市の「王道家」も7月1日に、それぞれ値上げに踏み切っている。 

 

話を戻そう。この一連の状況を踏まえると、今回騒動となった「三郷家」も、〈ライスを有料にすればいいのでは?〉というSNSで多数見られた指摘にある通り、ライスの無料をやめることが、一つの落としどころのように思える。 

 

だが、前出の家系ラーメン店店主はこう呟く。 

 

「吉村家の直系筋などの常に行列ができるような有名店であれば、値上げやライスを有料にしても客足への影響は少ないかもしれません。しかし、直系ではない店の弟子の弟子、というような『傍流』の店はどうでしょうか。 

 

味の部分でどうしても負けてしまう。それでいて、『町田商店』さんや『魂心家』さんのような資本系に対しては、味で多少上回っても、値段の部分でやはり負けてしまいます。そうなると、やはり安易にライスを有料にできないのが現実なんです……」 

 

この辛さを少しでもわかってもらえるとありがたい――。全国的に大人気の家系ラーメンといえど、厳しい環境に置かれている店は少なくないようだ。 

 

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