( 224079 ) 2024/10/19 17:09:57 1 00 10月27日の日本の総選挙に向けて、与野党の動きが加速している。 |
( 224081 ) 2024/10/19 17:09:57 0 00 自公の関係は変化するのか(左から自民党の石破茂首相、公明党の石井啓一代表/時事通信フォト)
来る10・27総選挙に向けて、与野党の動きが加速している。旧統一教会や裏金問題の醜聞に揺れた石破茂首相率いる自民党は政権の座を保持するのか――そのカギとなるのが、自民党と公明党の「選挙協力体制」だが、今回の選挙結果によっては両者の関係性が大きく変わる可能性があるという。菅義偉内閣の首相補佐官を務めた経歴を持ち、最新刊『権力の核心「自民と創価」交渉秘録』(小学館新書)が話題の帝京大学教授の柿﨑明二氏が解説する。
* * * 今月27日に投開票される衆院選の序盤情勢についての大手新聞社の調査結果が出そろった。各社のトーンには与党の自民、公明両党の「過半数公算大」から「過半数割れの可能性」まで幅があるが、自民党が単独過半数を維持できるかどうかについては「不透明」という見方で一致している。
政権交代した2009年衆院選では、自民党は181議席減の119議席に落ち込み、308議席を獲得した民主党に惨敗した。そのときのように対応のしようもなく政権を失うようなレベルではないが、石破茂首相の退陣の有無、また政権運営上の枠組みが「自公+α」になるか否かかが焦点となりそうだ。10月5日に連立発足から25年を経た自民・公明関係は、2009年の下野以来の見直しを迫られる曲がり角となりそうな状況である。
新聞各社の序盤情勢調査についての見出しは次の通りだ。
毎日新聞「与党 過半数の公算大 自民「単独」維持視野」 読売新聞「与党、過半数見通し 自民苦戦、立民増の勢い」 日経新聞「自民、過半数割れの可能性」 産経新聞「与党過半数 激しい攻防」(*共同通信調査)
与党にとって情勢が良好な順番に並べている。10月1日に発売した拙著『権力の核心「自民と創価」交渉秘録』では、自民党と公明党の関係を「連立政権」ではなく、連立政権樹立を前提として、緊密な選挙協力を築き、稼働させ続けた体制を政党ブロック(連合)と呼んだ。そして、自公ブロックが優位だった1999年から2024年の四半世紀を連立政権発足年にちなんで「99年体制」と定義した。
保守党を含めた自公ブロックで初めて臨んだ2000年衆院選以降、2003年、2005年と自民党は小選挙区選での、公明党は比例代表選での得票数を伸ばし続けた。自公ブロックでは、小選挙区での候補を統一、相互支援を行う。つまり、小選挙区で公明党は候補者を絞るため、圧倒的に自民党の候補者が多くなるが、その自民候補の多くは「比例代表は公明党に投票して」と呼びかけるバーター協力を行う。自公双方が、ある程度の議席数を保ってきた背景はその成果と見られる。
この選挙協力関係は、1998年参院選で敗北、「ねじれ国会」に陥った危機を克服するために官房長官として公明党との連立を押し進め、その後、自民党幹事長に就いた野中広務氏が始めた「野中方式」ともいえる特異な協力方法だ。しかし、この野中方式にも弱点がある。
一つ目は、自民党に逆風が吹くときは逆回転することである。今回のように自民党の劣勢が伝えられ、小選挙区での勝利が危うくなったと感じる自民候補は比例代表での復活可能性を高めるため「比例は公明へ」という呼びかけを行わなくなる。また、公明党も公認候補の当選のため、その選挙区に運動員を集中させる傾向にあり、その分、自民候補への支援が手薄になる。つまり、相互支援から保身に転じるのだ。
二つ目が、投票率の上昇である。自民党と公明党はブロック形成に注力するため、常連さんともいえる強固な支持者へのアクセスが優先され、最大の票田であるはずの無党派層対策が次となる。そのため、投票率が上がると不利になる傾向がある。実際、政権選択選挙となった2009年衆院選で自民党は、小泉純一郎首相が仕掛けた郵政解散で無党派層の支持を集めて圧勝した2005年衆院選に次ぐ得票数を小選挙区で獲得したが、投票率が69.78%まで上昇したため敗北した。自公ブロックの限界と言える出来事だろう。
今回の選挙は一つ目の弱点である自公の劣勢が伝えられる状況にあるが、無党派層がどの程度、投票所に足を運ぶのか。つまり、第二次安倍政権以降、50%台半ばまでにとどまっている投票率がどの程度上がるかは不透明だ。
仮に投票率が低迷したまま、自民党が単独過半数を割るようなことがあれば、投票率の問題は弱点というよりも、自公ブロックの弱体化を意味する。そもそも緊密な選挙協力を可能ならしめている公明党の支持母体である創価学会の得票力が落ちてきている。全有権者に対する得票率「絶対得票率」が、比較可能な参院選では2004年の8.4%以降、減り続け2022年で5.88%と最低を記録している。
拙著『権力の核心「自民と創価」交渉秘録』では、自公ブロックと99年体制を支えるものとして、自民党結党直後の「岸信介首相――戸田城聖・第2代会長」「佐藤栄作首相――池田大作・第3代会長」の関係から続く、首脳同士の自創連携があると指摘した。しかし、それも昨年の池田氏の死去に象徴されるように弱まりつつある。今回の衆院選が99年体制の曲がり角となる可能性は高い。
【プロフィール】 柿﨑明二(かきざき・めいじ)/1961年、秋田県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、毎日新聞社を経て共同通信社に入社。政治部で首相官邸、外務省、旧厚生省、自民党、民主党、社民党などを担当した。政治部次長、論説委員兼編集委員、菅義偉内閣首相補佐官などを経て2022年より帝京大学法学部教授。近著『権力の核心「自民と創価」交渉秘録』(小学館新書)が話題となっている。
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