( 224314 )  2024/10/20 16:04:25  
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東京23区で子育てする家庭にとって経済的に難しい状況になっている。

大手商社の40~50代のエリート会社員でも、子供の教育費や住居費に苦しんでいる例がある。

特に新築マンションの価格高騰が挙げられ、日銀の金融緩和や低金利、円安がその原因だと指摘されている。

マンション価格の上昇により、子育てコストが高騰し、教育格差を拡大する要因にもなっている。

23区内の世帯年収の10倍以上もする新築分譲マンション価格は異常と言われ、この状況は子育て世代に直撃している。

今後も教育費の上昇について詳しく取り上げる予定だ。

(要約)

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Photo/gettyimages 

 

ここ数年で円安によるインフレが進み、「勝ち組のなかの勝ち組」である大手商社の40~50代のエリート会社員でも、東京23区で余裕を持って子供を育てることが難しくなってきたようだ。 

 

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大手商社の管理職である私の友人も、中古マンションを10年ほど前に約7500万円で購入し、2人の子どもが私立中学校の受験合格を目指しているというが、「子どもの塾代を捻出するのが厳しくなり、妻にもアルバイトに出てもらっている」と苦笑していた。 

 

日本は年収が1000万円を超えると、税負担がいっそう重くなる。年収が1300万円(配偶者と15歳以下の子供2人を扶養)だとすると、手取り額は概算で約910万円になる。所得税と社会保険料がそれぞれ約150万円、住民税が約90万円差し引かれ、手取り額は年収の約70%にまで減少するのだ。 

 

国民の所得が下落基調に転じた1998年以降、東京23区での子育ては経済的に苦しいと言われてきたが、それが今では勝ち組とされる家庭でも余裕がないという有様なのだ。いわんや、その他の家庭では子育てにお金をかけるのがますます難しく、教育格差を拡大する大きな要因となっている。 

 

写真:現代ビジネス 

 

なぜ、東京23区での子育てがそのように苛酷になってしまったのだろうか。 

 

まず第1の要因として挙げられるのは、東京23区内で新築マンションの価格高騰が続いてきたということだ。 

 

不動産経済研究所の統計によれば、東京23区の新築分譲マンションの2023年の平均価格は、1億1483万円と初めて1億円を突破した。2001年の平均価格が4723万円だったので、22年間で価格は2.43倍(143%上昇)まで高騰したことになる。 

 

さらに特筆すべきは、この高騰の大部分が日銀の大規模な金融緩和以降に起こっているということだ。大規模緩和が始まる前の2012年の5283万円と比べると、それ以降の11年間で価格は2.17倍(117%上昇)と上昇率が極めて高いのだ。 

 

この傾向は、全国や首都圏(1都3県)の平均価格の上昇率にもみられるが、そうはいっても東京23区の上昇率が群を抜いていることは一目瞭然だ。 

 

こういったマンション価格の高騰は、日銀の「金融緩和」とそれに伴う「低金利」や「円安」で大半が説明できる。円安によって資材価格が高騰し、マンション価格にその分が上乗せされた。低金利によって不動産市場に投資資金が過剰に流入し、マンション用地やマンションそのものの価格をさらに押し上げた。 

 

たしかに、人手不足による人件費の高騰もあったが、それはマンション価格の上昇分のほんの一部にすぎない。やはり、金融緩和の副作用が非常に大きかったというわけだ。 

 

 

アベノミクスを断行した故・安倍晋三元首相 Photo/gettyimages 

 

金融緩和の影響は凄まじかった。23区内でも超都心とされるところでは、少なくとも昨年までは、マンション購入の4割程度が投資目的だといわれている。 

 

もともと海外の不動産投資家は、シンガポールや香港と比べて割安とされる東京のマンションを買っていたのだが、近年の大幅な円安進行によってさらに割安になったマンションを買い漁るようになった。企業の創業者や経営者といった超富裕層も、超都心のマンションを投資のため積極的に買っていたようだ。 

 

もちろん、実需の買いも旺盛だった。低金利の長期化を背景に、パワーカップルと呼ばれる高所得世帯の購入もマンション価格の高騰を支えていた。 

 

住宅価格が年収の何倍かを示す「年収倍率」は、業界の目安として世帯年収で6倍程度とされる。総務省の2022年の家計調査によれば、東京23区の世帯年収の中央値は1012万円だったので、23区の新築分譲マンション価格は世帯年収の10倍を超える水準になった。異常な水準にあるといえるだろう。 

 

新築の価格が高騰すれば、それに連動して中古の価格も高騰する。23区内では中古マンションでも1億円を超える物件が珍しくなくなった。その結果、新築や中古のマンション購入をあきらめた世帯が賃貸マンションに流れ、賃貸の価格も押し上げるという構図になっているのだ。 

 

23区の2024年の新築分譲マンションの価格(1~8月の平均)は1億1206万円と、日銀が大規模緩和から利上げに転じたこともあり、2023年の価格より2.4%低下している。 

 

その一方で、新築マンションの価格高騰にサヤ寄せするように、2024年の中古マンションの価格や賃貸マンションの賃料はじりじりと上昇傾向を維持している。 

 

「子どもを育てる費用が高騰する住居費に奪われている可能性が高い」という指摘は多い。マンションの広さも新しくなればなるほど縮小傾向にあり、「23区で子どもを2人3人育てるのは不可能だ」という声も多い。金融緩和の副作用が子育て世代を直撃しているのは間違いない。 

 

このように東京で子育てをするのは、多くのひとにとって難しくなっている。 

 

その教育費についても青天井の上昇を繰りかえしている。 

 

その事情については後編記事『もう日本に勝ち組はいない…!教育費がどんどん高くなる東京の「子育ての真相」と衆院選で語られない「東京一極集中」、その危うすぎる罠』でじっくりとお伝えしていこう。 

 

中原 圭介(経済アナリスト) 

 

 

 
 

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