( 224369 ) 2024/10/20 17:09:54 1 00 Netflix制作のドラマは、地上波とは異なる点が多い。 |
( 224371 ) 2024/10/20 17:09:54 0 00 Netflix制作のドラマは何が違うのか(左から小池栄子=時事通信フォト、ピエール瀧、豊川悦司)
米国発の「ネットフリックス(Netflix)」に代表される有料の配信サービスが急速に存在感を高めている。「韓国ドラマ」など海外作品を配信するだけでなく、日本の豪華俳優に精鋭スタッフを集め、テレビ局を超えるクオリティのドラマを次々と制作するようになってきたのだ。
長与千種(唐田えりか)がライオネス飛鳥(剛力彩芽)をリングの四隅にある鉄柱のひとつに叩きつける。飛鳥は苦しい表情を見せながらも、すかさず反撃。一進一退の攻防に後楽園ホールに集まった超満員の観客は大盛り上がり。そして、飛鳥は大技「ジャイアントスイング」を炸裂させる──。
これは話題のドラマ『極悪女王』のワンシーン。劇中の放送時間は約10分。だが、この場面を撮影するためだけに4日間をかけたのだという。『極悪女王』は1980年代に女子プロレス旋風を巻き起こした全日本女子プロレス“最凶ヒール”のダンプ松本(ゆりやんレトリィバァ)の半生を描く。豪華キャストによる大作だが、地上波のテレビで観ることはできない。ネットフリックスによる「配信」のドラマなのだ。
この数年、ネットフリックスやアマゾンプライムビデオといった有料の会員制配信サービスが加速度的に普及している。無料放送の地上波とは、どう違うのか。テレビ業界ジャーナリストの長谷川朋子氏が語る。
「契約して定額を支払わないと視聴できず、連続ドラマでも1話から最終話まで一度に配信されることが多くて“一気見”できる。1話何分と決まっておらず、地上波とは違って固定CMも入らない。表現の自由度が非常に高いです。制作期間や制作費が地上波とケタ違いでスケールが大きいことも魅力です」
事実、『極悪女王』の企画・脚本・プロデュースを担当した鈴木おさむ氏は関西のテレビ番組で、「ギャラは地上波の5倍だった」と明かしている。
そうした配信作品は「企画段階」からすでに地上波とは違うという。ネットフリックスが日本で普及するきっかけのひとつが、2019年の『全裸監督』。AV監督・村西とおる氏の半生を描き、バストトップの露出や大胆な濡れ場シーンが描かれた。原作者の本橋信宏氏は当時、制作側のオファーに「本気度を感じた」と語る。
「ネットフリックスのプロデューサーから、コンプライアンスが厳しくなった時代に、『地上波ではできない作品をドラマ化したい』という熱意を伝えられた。担当者はモデルである村西監督に『こんな男が日本にいてまだ生きているのか』と感銘を受けたそうです。
ですが、当初は村西監督は消極的でした。彼は“昭和の男”だから、『実写化するならスクリーンでやるべき』という考えだったんです。ですが、向こうが人気俳優の山田孝之さんのスケジュールを押さえてくれたことで翻意した。山田さんは向こう3年のスケジュールは押さえられている状態でしたが、本(脚本)を読んでもらうところから説得して、快諾いただいたそうです」
こうした企画段階の交渉は今のキー局では難しい現実がある。キー局関係者がいう。
「地上波は春夏秋冬の4クールがあり、3か月に1度、10話程度のドラマを完成させます。作品もキャスティングも“妥協”が必要になる。ネットフリックスでは制作会社など外部の人間や監督も自由闊達に企画を持ち込みます。それぞれがキャスティングや企画内容を作り込む。時間の制約という点で大きな違いがあるんです」
制作サイドの熱意が実現する背景には「予算」の潤沢さもある。
「国内のスポンサー収入に頼る地上波と違い、世界展開する配信はヒットすれば莫大な利益が見込めるので制作費は青天井です。地上波の連ドラ予算は1クール3000万~1億円ほどですが、ある配信作品で1話に8000万円かけたと知った旧知のテレビマンは仰天していました」(同前)
実際の「撮影現場」はどんな様子なのか。『極悪女王』にレスラー役で出演した花屋ユウが言う。
「出演したのは全5話のうち1~3話ですが、撮影は2022年7月から10月まで4か月かかりました。契約時に『4か月間、ほかの仕事は入れずプロレスラーの体型を維持する』との条件があった。主演のゆりやんさんや剛力彩芽さんはさらにその2年前からプロレスの稽古をしていたそうで、準備から配信まで約4年も費やしたことになります」
『極悪女王』の撮影は1シーンごとに強いこだわりをもって行なわれた。剛力演じるライオネス飛鳥が改名後の初戦、唐田演じる長与千種と対戦するシーンは強烈なインパクトを与えた。
「作中の映像は10分くらいですが、この試合だけで3日間+予備日の撮影日程が最初から組まれていた。結局、予備日も使って撮影は4日間。試合の場面では後楽園ホールに500人のエキストラを集め、リングの北側や南側が映るたびにエキストラを大移動させて細かく撮影しました」(同前)
エキストラの待遇も異なる。前出のキー局関係者が言う。
「我々のドラマだと『芸能人に会える』『思い出作りに』と無料のボランティアとして撮影に参加してもらうことが多い。提供しても500円のQUOカードです。ところがネットフリックスのエキストラ募集は普通のドラマの端役と同程度の5000円支給だった」
※週刊ポスト2024年11月1日号
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