( 225084 )  2024/10/22 16:24:34  
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総選挙が迫る中、石破茂首相率いる自民党が厳しい状況にある。

石破首相は「自公で過半数」とラインを設定していたが、支持率の低さや「裏金問題」の影響で逆風が強まっている。

公明党の支持がある議員には望みがあるが、公明党の支持が得られない場合は苦戦が続いている。

特に創価学会の支持を得ていた萩生田光一元政調会長が厳しい戦いを強いられており、裏金問題や創価学会との関係が影響を及ぼしている。

このような状況から、自民党は大きな逆風に直面しており、政権奪還が困難な状況にあると言える。

(要約)

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「自公で過半数」でさえ厳しい情勢になってきた(写真:Buddhika Weerasinghe/Bloomberg) 

 

 衆議院が解散された10月9日夜の会見で、勝敗ラインを聞かれた石破茂首相は「自公で過半数」と答えている。「政治と金」問題の逆風を受け、自民党の苦戦は容易に予想できたが、石破首相はこの時そ、「“裏金議員”を非公認、あるいは比例復活を許さないことで、有権者に対して党の姿勢を示すことができるだろう。その上で選挙後に当選者を追加公認すれば、このラインくらいは乗り越えられる」と思っていたに違いない。 

 

【写真】自民にも公明にも“見放され”、大苦戦中の萩生田氏 

 

■早くも「危険水域」に突入した支持率 

 

 だが実際の逆風は、その想定を超えていた。何より石破首相の「人気のなさ」が露呈したことが問題だ。 

 

 時事通信が10月17日に公表した世論調査によると、石破茂政権の支持率は28%で森喜朗政権より低かった。通常なら政権発足後3カ月ほどは「ハネムーン期間」とされて支持率は高く、メディアの批判も抑えられる。 

 

 政権成立10日後に衆議院を解散した岸田文雄前首相でさえ、政権発足直後の内閣支持率は40.3%と、4割台を維持していた。にもかかわらず、石破内閣の支持率は「危険水域」と言われる2割台に突入した。 

 

 もっとも2009年7月の時事通信の調査では、政権交代前夜の麻生太郎内閣の支持率は16.3%で石破内閣発足時よりも低い。また、自民党の政党支持率は4カ月連続低下の15.1%で、民主党(当時)の18.6%に逆転されている。 

 

 当時も国民の怒りは自民党全体に向けられていたが、今回はこれに加えて「裏金問題」の余波がある。これに伴い12人の前職が党の公認を外され、34人が比例名簿に登載されなかった。 

 

 比例単独の3人の非公認も決定し、そのうち上杉謙太郎氏は福島3区から無所属で出馬。自民党福島県連の推薦は得たものの、苦しい戦いを強いられている。 

 

■公明党の支持があれば… 

 

 自民党の公認を得られなかったり、公認されても比例との重複立候補が認められなかったりした場合、公明党の支持がある場合はまだ望みはあるかもしれない。公明党は各小選挙区に2万票ほどを有しており、それに支えられている自民党議員は少なくない。 

 

 実際に、公明党は自民党から公認を得られなかった西村康稔氏(兵庫9区)と三ツ林裕巳氏(埼玉13区)と、比例重複なしの自民党前職34人のうち33人を推薦。公明党は兵庫2区で赤羽一嘉氏、兵庫8区で中野洋昌氏を擁立しており、自民党兵庫県連会長を務めたことのある西村氏との「票のバーター」を期待する。 

 

 

 また、10増10減によって旧埼玉14区から新埼玉13区に移動した三ツ林氏は、新14区に出馬している石井啓一公明党代表に八潮市と三郷市を譲った形となっており、公明党からの推薦はその「お返し」といえるものだ。 

 

 公明党の支持も得られない場合は厳しい戦いになるだろう。例えば、多くの創価学会の施設を擁する八王子市(東京24区)を選挙区とする萩生田光一元政調会長がこれに当てはまる。同選挙区は創価学会の大票田で、4万から5万票ほどあると見込まれる。 

 

 そのような大量票が萩生田氏から離反したきっかけは、2022年7月に発生した安倍晋三元首相の狙撃死だった。これによって萩生田氏が参院選候補だった生稲晃子氏を市内の旧統一教会の施設に案内したことを週刊誌で報じられ、萩生田氏と旧統一教会との関係が露呈。これが創価学会を激怒させたのだ。 

 

 さらに「裏金問題」が、不正を嫌う創価学会女性部の逆鱗に触れた。萩生田氏の「裏金」は2728万円で、二階俊博氏の3526万円、三ツ林氏の2954万円に続いて3番目に多かった。萩生田氏は公明党と近い菅義偉元首相を通じて関係修復に務めているが、どのくらいの票が戻るかは不明だ。 

 

■関係のよくない小池知事にも協力仰ぐ 

 

 そこで、萩生田氏は総力を挙げて応援体制を組んでいる。10月16日には安倍昭恵夫人を呼んで支援者のみの会合を開き、会場には安倍元首相の遺影が飾られた。17日には高市早苗前経済安全保障担当相に応援演説してもらった。 

 

 18日の決起大会では、さほど関係がよくない小池百合子知事からのビデオメッセージを公開。なお、小池知事が特別顧問を務める都民ファーストの会は、国民民主党を支援しており、24区には同党から弁護士の浦川祐輔氏が出馬している。 

 

 19日には萩生田氏とは20年来の盟友の松井一郎前大阪市長も大阪から駆けつけて、マイクを握った。同選挙区には日本維新の会からも佐藤由美氏が出馬し、18日に馬場伸幸代表が応援に入ったが、松井氏は「私は1年半前に政治から引退した」「応援に来たのではない、萩生田さんと一緒にみなさんに謝ろうと思った」とはぐらかした。 

 

 なお昭恵夫人が参加したのは支援者限定の会合で、松井氏が参加した「ハコモノ演説会」も取材陣の参加が拒否された。おそらく「アンチの乱入」を懸念したのだろう。 

 

 

 安倍政権時には自民党を激しく攻撃していたものの、石破政権になってずいぶん大人しくなったように思われたアンチだが、八王子市では以前として活発に活動している。 

 

 萩生田氏が屋外で行う演説会で「裏金議員いらない」「はて? 裏金議員まだ議員やるの?」と書かれたプラカードを持って歩き回り、演説する萩生田氏の頭上にはデッキから「ウラ金 2728万円 萩生田」と書いた垂れ幕を下ろしている。 

 

■萩生田の苦戦が示していること 

 

 萩生田氏の苦戦ぶりは、各調査が立憲民主党の有田芳生氏の若干のリードを伝えていることでも明らかだ。ほぼ落下傘候補の有田氏は、当初は選挙事務所の開設すらままならない状況だったが、旧統一教会問題での批判票を集めて徐々に伸びている。 

 

 昭恵夫人が「主人(安倍元首相)が最も信頼する国会議員の1人」と述べた萩生田氏が議席を失えば、それは有権者が安倍政権に「NO!」を突き付けたにも等しい。 

 

 まさに山高ければ谷深し。2012年に政権を奪還して以来、自民党は12年間もの「我が世の春」を楽しんだ。しかし現在、未曽有の逆風に喘いでいる。しかもこの苦難を乗り越えたからといって、誰も「裏金問題」は禊が済んだとならないだろう。 

 

安積 明子 :ジャーナリスト 

 

 

 
 

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