( 225424 )  2024/10/23 15:12:19  
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2024年の第50回衆議院選挙まで1週間を切った状況において、自民党は裏金問題による逆風で苦戦が報じられています。

特に東京都では一部の選挙区で野党共闘の解消が影響を与え、立憲民主党関係者から嘆きの声も上がっています。

裏金問題により自民党議員の立場が危うくなっており、一部議員は非公認や比例重複なしの状況にあることから、苦戦を強いられています。

一方、立憲民主党は勢いづき議席を伸ばすと見られていますが、一部の選挙区では共産党との共闘が解消されたことで競り合いが激化しているようです。

(要約)

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第50回衆議院選挙候補者のポスター掲示場=2024年10月14日、東京都中央区 - 写真=時事通信フォト 

 

衆議院選挙は10月27日の投票日まで1週間を切った。ジャーナリストの宮原健太さんは「裏金問題の逆風は大きく、自民党議員の苦戦が報じられている。一方、東京都の一部の選挙区では『野党共闘の解消』が情勢に影響を与えており、立憲民主党の関係者からは嘆く声も聞かれる」という――。 

 

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■「裏金問題による選挙戦の逆風は想像以上だ」 

 

 10月27日の投開票に向けて与野党が激戦を繰り広げている解散総選挙。 

 

 自民党は裏金問題による大逆風を受けており、議席を大幅に減らすと見られている。 

 

 特に、裏金議員は一部が非公認になったほか、公認された議員も比例代表への重複立候補が認められていないため、どんなに相手候補と接戦を繰り広げても、落選すれば比例復活はなく、議員バッジを外さなければならない。 

 

 そうした中、大臣を務めた大物議員の苦戦も報じられており、衆院選は大波乱の状況だ。 

 

 「裏金問題による選挙戦の逆風は想像以上だ」 

 

 永田町に駆けめぐる、さまざまな政党や報道機関による情勢調査を眺めながら、自民党関係者は絶句した。 

 

 特に、地方のような固定票や組織票が少なく、無党派層や浮動票が多い東京都で、逆風はより強くなっている。 

 

 都内では、下村博文氏、平沢勝栄氏、小田原潔氏、萩生田光一氏の4人が裏金議員として非公認となり、山田美樹氏、丸川珠代氏の2人が公認されたものの比例重複なしとなった。 

 

 このうち盤石の態勢を築いているのは平沢勝栄氏のみである。 

 

 テレビ出演を重ねて培ってきた圧倒的知名度から、これまでも東京17区において圧勝を続けており、立憲もこの選挙区への候補者擁立を見送っている。 

 

 今回は日本維新の会、共産党、国民民主党がそれぞれ候補者を擁立しているが、平沢氏は大きくリードを保っている。 

 

■「大臣経験者」も窮地に陥っている 

 

 それに対して、下村氏、小田原氏、山田氏、丸川氏の4人は野党候補にリードを許しており、萩生田氏も大接戦を繰り広げている状況だ。 

 

 文科大臣や党政調会長などを歴任してきた下村氏は、これまで東京11区で一度も敗れることなく9選を重ねてきたが、裏金問題で非公認となるなか、立憲民主党元職の阿久津幸彦氏にリードを許して苦戦している。 

 

 また、環境大臣や五輪担当大臣などを務めてきた丸川氏も立憲元職の松尾明弘氏に対して劣勢だ。 

 

 1票の格差を解消するための区割り変更「10増10減」によって東京都内の選挙区が増えたため、満を持して参院議員から衆院選の東京7区に鞍替え出馬した形だが、国会議員を続けられなくなるかもしれない窮地に陥っている。 

 

 小田原氏も山田氏も2021年の前回選では小選挙区で勝利をおさめたが、相手は立憲でも長く議員を務めてきた大河原雅子氏や海江田万里氏であるため厳しい戦いだ。 

 

 

■東京24区は一進一退の「激戦」に 

 

 そして、萩生田氏は立憲の有田芳生元参院議員とどちらが勝つかわからない一進一退の攻防を繰り広げている。 

 

 政党や報道各社による調査でも、萩生田氏が有田氏をリードしているものもあれば、その逆もあるような状況だ。 

 

 萩生田氏といえば、旧安倍派の幹部として裏金問題で大きくニュースになっただけでなく、旧統一教会問題でも2022年の参院選直前に立候補予定者を関連施設に連れていくなどしており、その密接な関係を野党から激しく追及された。 

 

 逆風は強いはずだが、一方で立憲の有田氏は「リベラル色」が強すぎて、なかなか中間層が取れていないという情報もある。 

 

 立憲関係者は「萩生田氏を厳しく糾弾するために、これまで旧統一教会の問題で取材を重ねてきたジャーナリストの有田氏を擁立したが、批判の色合いが強くなりすぎてしまい、一般層への波及は課題だ」と語った。 

 

 一方、裏金で逆風の自民とは対照的に、議席を伸ばすと見られ勢いづいている立憲民主党だが、油断すると足をすくわれる選挙区もいくつか出てきている。 

 

 「あと一歩で自民党に競り勝てる選挙区において、その一歩がつまずいてしまうかもしれない」 

 

 立憲関係者は情勢調査を分析しながら、眉間にしわを寄せた。 

 

 「ネックになっているのが、共産党との野党共闘が瓦解したことだ。前回の衆院選では共産党が候補者を降ろした選挙区でも、今回は擁立しているところが多くあり、せっかく自民が裏金問題で窮地に追い込まれているのに、野党乱立によって一部で漁夫の利を許してしまう状況になるかもしれない」 

 

■「野党共闘の瓦解」が与える大きな影響 

 

 立憲は前回の2021年衆院選で、政権交代を果たした際に共産党と「限定的な閣外からの協力」をするという約束を交わし、多くの選挙区で候補者調整して選挙戦に臨んだ。 

 

 野党共闘によって、小選挙区における共産票の取り込みを期待した形だが、与党から選挙戦で「立憲共産党」と批判され、中間層が離反。 

 

 その多くの票が維新に流れ、維新は30議席増の躍進を遂げた一方、立憲は自民と競り負ける選挙区が多発し、まさかの議席減で衆議院100議席を割ってしまった。 

 

 その後、立憲は共産から距離を取る方向にシフトし、代表も枝野幸男氏から泉健太氏、そして党内きっての保守派の論客である野田佳彦氏へと変わっていった。 

 

 実際に、野田氏は共産と政権構想を交わすことには否定的な見解を示し、反発した共産は野党共闘から手を引いて、野田氏が出馬する千葉14区にも候補者を擁立した。 

 

 もっとも、立憲も共産と離れる代わりに中間層や穏健保守層を取りに行く戦略をとったということなので、今回の野党共闘瓦解がすべての選挙区でマイナスに働いているわけではない。 

 

 しかし、東京都の一部の選挙区においては、この共闘解消が選挙情勢に大きな影響を与えているのだ。 

 

 

■立憲都連関係者が嘆く「東京ならでは」の事情 

 

 先に述べた通り、東京は固定票や組織票が少なく、浮動票が多いため、地方に比べて共産票が出やすいという特色がある。 

 

 そのため、立憲の東京都連では共産に候補者を降ろしてもらうことが選挙戦略のセオリーになっており、共産の支援によって自民に競り勝つ候補も多くいた。 

 

 実際に今回も、公党同士の野党共闘が崩壊した一方で、9選挙区においては共産が立憲候補を自主支援し、1選挙区は自主投票とすることを決めている。 

 

 ただ、前回衆院選で共闘が成立していた東京15区と、東京18区には共産が候補者を新たに擁立しており、立憲は苦しい戦いが強いられている。 

 

 東京15区と言えば、自民党の柿沢未途元衆院議員が「政治とカネ」の問題で逮捕され、今年4月の補欠選挙では自民が候補者擁立を見送る中、小池百合子都知事が乙武洋匡氏を擁立した選挙区だ。 

 

 結局、各党乱立の中で乙武氏は沈み、立憲の酒井菜摘氏が初当選を果たしたが、このとき共産は酒井氏と政策協定を結び、擁立する予定だった候補者を降ろして、酒井氏の支援に回っていた。 

 

 まさに、野党共闘が勝利を収めた形だったが、今回は共産も前回降ろした小堤東氏を擁立。 

 

 各政党や報道各社による情勢調査の一部では、酒井氏が自民の擁立した大空幸星氏にリードを許している情勢となっている。 

 

 立憲都連関係者は「相手の大空氏が25歳の超若手で、これまでメディアへの露出も多かったことから苦戦している側面もあるが、共産に候補者を立てられてリベラル層が割れている影響は大きい」と嘆く。 

 

■「混迷を極めた政治」にどのような審判を下すのか 

 

 また、引退を表明した菅直人元首相のお膝元である東京18区でも同じ事態が発生している。 

 

 東京18区はもともとリベラルが強い地盤で、2021年衆院選では菅氏の街頭演説に共産の地方議員が駆けつけるなどもしており、野党共闘体制が十分に取られていた。 

 

 しかし、今回は菅氏から地盤を引き継いだ前武蔵野市長の松下玲子氏に対して、自民の福田かおる氏だけでなく共産の樋口亮氏も立候補している。 

 

 選挙序盤の情勢調査では松下氏が福田氏に競り負けているという情報もあり、ここも野党共闘瓦解が致命傷となる可能性がある。 

 

 こうした共産の動きについて、野党関係者は「共産が味方しないと勝てない選挙区があることを示して、立憲の共産離れを防ごうとしているのではないか」と語った。 

 

 一方で、立憲内からは「また共産との距離を詰めることになれば2021年衆院選の敗北を繰り返すことになる。そもそも共産が候補者を立てていても選挙に勝てる力を各議員つけなければいけない」という声も出ている。 

 

 今回の東京15区と18区は、共産候補が立っても勝つことができるのか。 

 

 立憲候補の地力が試されていると言えるだろう。 

 

 与野党をめぐる選挙の情勢は現在進行形で刻一刻と変わりつつある。 

 

 裏金問題の影響で、序盤から厳しい戦いを強いられてきた自民党だが、中盤になって逆風はより強まっているとの情報もある。 

 

 混迷を極めた政治に対して国民はどのような審判を下すのか。 

 

 その結果によっては、発足したばかりの石破茂政権が早くも崩壊することになるだろう。 

 

 投開票日の10月27日に向けて、選挙戦はさらに混迷を深めている。 

 

 

 

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宮原 健太(みやはら・けんた) 

ジャーナリスト 

1992年生まれ。2015年に東京大学を卒業し、毎日新聞社に入社。宮崎、福岡で事件記者をした後、政治部で官邸や国会、政党や省庁などを取材。自民党の安倍晋三首相や立憲民主党の枝野幸男代表の番記者などを務めた。2023年に独立してフリーで活動。YouTubeチャンネル「記者VTuberブンヤ新太」ではバーチャルYouTuberとしてニュースに関する配信もしている。取材過程に参加してもらうオンラインサロンのような新しい報道を実践している。 

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ジャーナリスト 宮原 健太 

 

 

 
 

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