( 225459 )  2024/10/23 15:52:09  
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前兵庫県知事の齋藤元彦氏がパワハラなどの内部告発で失職し、2度目の立候補を表明している。

一方で、証拠が乏しかったり、前知事との対立なども浮上しており、状況は変化している。

齋藤氏はなぜあきらめずにいるのか、そして騒動の本質は何か。

元知事への対応や地元有力者との関係など、現在発売中の『週刊現代』が報じた記事により詳細が明らかにされている。

(要約)

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パワハラや贈答品の「おねだり」に関する内部告発で失職した、齋藤元彦前兵庫県知事(46歳)。「職員を自殺に追い込んだ」と非難されても仏頂面を貫き、11月17日の出直し選に再出馬を表明している。「鋼のメンタル」と揶揄され、今や「全国民の敵」と言っても過言ではない扱いだ。 

 

【ひと目でわかる騒動まとめ】齋藤前知事が辞職するまで、何が起きていたのか? 

 

だがここにきて、ハラスメントの証拠が乏しいことや、齋藤氏の前に5期20年の長きにわたって県知事を務めた井戸敏三氏(79歳)との対立などの論点が浮上し、空気が変わりつつある。 

 

なぜ齋藤氏は「あきらめようとしない」のか。そして、齋藤騒動の本質とは何なのか? 現在発売中の「週刊現代」が報じたスクープ記事を特別に全文公開する。 

 

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「ぜひ次の兵庫県知事選に立候補してください」 

 

2020年11月、大阪市内の某会議室。県知事選を翌年7月に控えたベテラン自民党県議数人が、当時、大阪府財政課長だった齋藤氏に直談判した。 

 

自民党兵庫県議団は分裂していた。井戸元知事の後継候補である、金沢和夫副知事の擁立をめぐって割れていたのだ。この県議らは、井戸路線との決別を唱える「改革派」だった。 

 

「井戸さんが自ら『金沢でまとめてくれ』と自民党県議団に指示し、多数決で強引に決めようとした。これに反発した党内の有志が、水面下で齋藤擁立に動いた」(ベテラン自民党県議) 

 

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齋藤氏は東京大学経済学部卒業後、2002年に総務省に入省。2018年に大阪府へ出向し、出世ポストの財政課長を務めていた。 

 

「齋藤さんはもともと、政界進出を考えていたようだ。自民の有志と会ううちに『自民党内では(改革派は)少数派でも、そこまで言ってくれるのなら』とその気になっていった」(兵庫県庁幹部) 

 

齋藤擁立の動きを知った井戸氏と自民党県連幹部は2020年12月、井戸氏の引退表明にあわせて金沢支持を大々的に表明した。流れが変わったのは、齋藤支持派の自民党有志に大阪維新の会が乗ったのが契機だった。 

 

「当時は維新も対抗馬擁立を模索しており、齋藤さんも候補の一人だった。そんな中、齋藤さんが松井(一郎・前大阪府知事)さん、吉村(洋文・大阪府知事)さんに『自民党から出馬の打診を受けた』と報告したのです。 

 

齋藤さんは吉村さんのお気に入りで、通例2年で総務省へ帰さなければならないところを、引き止めて出向3年目に入っていた。なので、吉村さんにも齋藤さんを応援する強い意向があった」(前出の県議) 

 

そもそも齋藤氏は、こうした自民党内の井戸派と反井戸派の分裂抗争を背景に知事の座に就いたことを、まず押さえておく必要がある。 

 

 

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齋藤氏は県知事選で金沢氏に25万票あまりの大差をつけて当選した。しかし、就任早々に「井戸路線との決別」を推し進めたために、県庁職員や県関係者の反感を次々と買うことになった。 

 

まず着手したのが、地域整備事業と分収造林事業による、合計約1500億円規模の「井戸時代の隠れ負債」の返済だ。 

 

地域整備事業とは、民間の乱開発を防ぐため、県が先回りして土地を買い取り開発した事業のことで、バブル崩壊後の地価下落で負債となっていた。分収造林事業は、かつて木材需要が高かった時代に県がヒノキや杉を植え、売却益を土地の所有者と折半していた事業で、これも木材が売れなくなるにつれて負債が拡大した。 

 

県の財政事情に詳しいベテラン職員が話す。 

 

「これらの事業で取得した土地や資材の簿価と実勢価格が大きく違うことは、井戸県政最大のタブーとなっていました。もし露見すれば、20年にわたり『兵庫の殿様』として絶対的地位を築いていた井戸さんのメンツを潰すことになる。井戸さんと近い多くの県議も触れない『公然の秘密』だったわけです」 

 

そのタブーに、齋藤氏はいきなり「返済開始」を宣言したのだ。 

 

「正論ではありますが、急に寝た子を起こされた財政系の職員・OBは、自分たちの長年の恥部を指摘されたような気持ちになった。OBの中には、県庁にやって来て『あいつ何やねん、余計なことしやがって』と現役職員に不満をぶちまける人もいた」(同前) 

 

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さらに齋藤氏は、県の外郭団体役員に対して、定年規定を「厳正適用」し始めた。本来、県の内規では65歳定年のところ、井戸体制下でなし崩し的に70歳以上まで延長されていた慣行に、メスを入れたのだ。 

 

外郭団体役員は県庁幹部の天下りポストであり、さらに「多くの団体役員が、井戸氏の後援会『新生兵庫をつくる会』の幹部を兼任していた」(県幹部)という。この幹部が続ける。 

 

「齋藤さんは『脱・井戸県政』がテーマでしたから、外郭団体役員に就いた県職員OBとの飲み会には一切出なかった。コミュニケーションがないところに、急に定年規定の話が出てきたわけです。 

 

彼らからすれば、老後の年収300万円以上が消えるわけですから、まさに死活問題です」 

 

取材に応じた兵庫県庁職員・関係者の多くが、齋藤氏の性格について「正論で押し通そうとする人」と語った。その片鱗は今回の騒動でも窺えたが、地方の役所で避けて通れない「地元有力者との飲みニケーション」も、齋藤氏は大いに苦手としていたようだ。 

 

 

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彼が踏んだ「虎の尾」はこれだけではなかった。国政自民党の怒りを買ったのが、昨年8月に表明した県立大学の無償化だ。 

 

教育無償化は大阪での維新の目玉政策で、齋藤氏も踏襲した。これに自民党文教族の重鎮国会議員が猛反発したという。 

 

「その重鎮にとって、高等教育の無償化は自分が成し遂げられなかった悲願。それをポッと出の40代の若造が、根回しもなく進めようとした。『俺を差し置いてどういう了見だ。やっぱり維新絡みの知事は信用できない』と怒り、それ以来、反齋藤の急先鋒となった」(前出と別の県幹部) 

 

この重鎮を含む兵庫県選出の自民党国会議員は、県知事選では全員が齋藤支持だったが、この件を機に離反が相次いだ。維新と近い当時の菅義偉総理の意を受けて、齋藤支持の流れを作った西村康稔衆院議員が、裏金問題で党員資格停止となり「地元の国会議員の抑えが利かなくなった」(同)ことも影響した。 

 

さらに齋藤氏に対して、県庁職員からも反発が強まっていく。あげくのはてに起きたのが、今年3月の西播磨県民局長による告発だった。 

 

その詳細を、後編記事【追及スクープ第2弾】齋藤元彦・前兵庫県知事を潰した「既得権益の逆襲」と「パワハラ・おねだり告発文書」の深層とは…齋藤氏辞職までの「全内幕」】にてお伝えする。 

 

「週刊現代」2024年10月26日・11月2日合併号より 

 

週刊現代(講談社・月曜・金曜発売) 

 

 

 
 

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