( 225719 )  2024/10/24 02:30:39  
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9月の自民党総裁選で石破茂氏が過去の夏祭りの記憶を語り、「今より豊かではなかったかもしれないけれど、多くの人が幸せそうだった。

そういう日本を取り戻したい」と訴えたことに触れる記事。

その後、日本の若者の働きがいの減少や、ドイツでの若者の働かない傾向、海外との比較調査結果、そして新首相に対する期待が述べられている。

(要約)

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KIM KYUNG-HOONーPOOLーREUTERS 

 

10月、日本は新たな首相を迎えた。9月の自民党の総裁選では、決選投票に残った2人の候補者に5分間ずつのスピーチの時間が設けられたが、そのスピーチで石破茂氏は60年前の故郷の夏祭りのことを話し「今ほど豊かではなかったかもしれないけれど、大勢の人が幸せそうでした。もう一度そういう日本を取り戻したいと思っています」と訴えかけた。 

 

日本「賃金停滞」の根深い原因をはっきり示す4つのグラフ 

 

私はこの言葉が非常に気になった。60年前とは1964年、高度経済成長期ど真ん中で東京オリンピック開催の年だ。戦後復興を果たし、これから日本が豊かになっていく時代で、現在よりは貧しかったが、人々は夢と希望に満ちあふれていたことだろう。 

 

私にはドイツに何人か親戚や友人がいるが、彼らから「最近のドイツの若者は働かない」とよく聞く。SNSの影響で、インスタグラムやTikTokで簡単に大金を稼ぎたいと考えて、地道な仕事や体を動かす仕事が若者から敬遠されているという。 

 

ドイツは税金が高い代わりに社会保障が充実していることが知られているが、失業者に対する行政からの生活支援が厚く、一定水準の生活ができるため、働かない若者が増えている。労働して納税している層はこれに腹を立てていて、政府は就労サポートを増やして生活支援をカットする案を検討しているのだそうだ。 

 

振り返って日本だが、若者の労働意欲は総じて低いと私は感じる。人手不足で売り手市場のせいもあるのだろうが、若者を採用してもすぐ退職してしまうし、そもそも頑張って働こう、仕事を学ぼうという意欲が1日目から感じられない。 

 

私の周りにはベンチャー企業の社長がたくさんいるが、皆同じことを言う。まだ安定しない、仕事が多い、でも頑張って会社を成功させれば社員にも大きなリターンがある、そんなベンチャー企業に志望してくる若者でさえ、ワークライフバランスが一番大事であり、長時間勤務や多岐にわたる業務を任されるのを嫌う。 

 

いやいや、体力があってまだ子どももいない、楽しんでいくらでも働ける、必死に働いた分だけ知識やスキルを吸収できるのが若者である。私は何も長時間勤務を強いるブラック企業で我慢して仕事をし続けろ、と言っているわけではない。 

 

自分が夢や情熱を傾けられる仕事を持ち、懸命に働いて成功をつかもう、という熱意のある若者が減ってきているような気がする。転職のハードルが以前より下がっているのは良いことだが、現在の職場で何も習得せず転職を繰り返して自分の価値を下げていくケースもよく見かける。 

 

 

国際比較で見ると、若者に限らず、日本の働き手のやる気は低いという調査結果もあるそうだ。オランダのランスタッド社の2021年の調査によると、日本で自分のキャリア選択に満足していると回答したのは67%で、34の国と地域の中で最下位だった。 

 

今年公表のアメリカのギャラップ社の調査では、仕事への熱意などを示す従業員のエンゲージメント率は日本ではわずか6%で、90カ国の中で最低水準だった。 

 

長い経済低迷の30年。働いても給料は上がらず、暮らしが今より良くなる気もせず、頑張って働くなんて損をするだけでばかばかしい、と日本の働き手の多くが持つ当然の考えを、新首相には理解してもらいたい。 

 

経済が右肩上がりだった60年前とは世界経済も産業構成も人口構成も、何もかもが違っているのだ。働かない若者を抱えるドイツと同じ先進国で、経済が成熟し、高齢化が進む日本で「大勢の人が幸せそうな」社会をどう取り戻すのか。石破新首相は真面目な有言実行の人だから、私はとても期待している。 

 

石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー) 

 

 

 
 

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