( 225909 )  2024/10/24 18:00:35  
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50代でも各社から「引く手あまた」になる人の特徴は、まず希少性が高い職種の人、ポータブル性が高い職種の人、柔軟性が高い人の3つだと言われています。

ITエンジニアなど特定の職種の人気が高まっており、マネジメント経験が豊富な管理部門系の職種も需要があるようです。

柔軟性やフレキシビリティを持つ50代は評価され、組織に調和と安定感をもたらすことができるとされています。

(要約)

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50代でも各社から「引く手あまた」になる人の特徴とは?(写真:すとらいぷ / PIXTA) 

 

組織をよりよくするための“黒子”として暗躍している、企業の人事担当にフォーカスする連載『「人事の裏側、明かします」人事担当マル秘ノート』。現役の人事部長である筆者が実体験をもとに、知られざる苦労や人間模様をお伝えしています。 

 

【画像で確認】「こういう50代はぜひ採用したい!」3つのタイプ。市場でニーズが高まっている職種は? 

 

 連載8回目は、採用現場から見た、「50代でも採りたい転職者の特徴」について紹介します。 

 

■会社組織における50代の位置づけ 

 

 健康寿命の延伸による影響だろうか。今どきの50代は、実年齢より若々しく、気力・体力も旺盛な人が多い。その気になれば、新たなビジネスで一花も二花も咲かせられるほど、実社会でまだまだ力を発揮できる世代だ。 

 

 だが、会社組織では、どうだろう。残酷にも、会社には「定年」という、れっきとした労働寿命が定められている以上、50代はもはや会社員としては「晩年期」だ。 

 

 しかも、「晩年期」に当たる50代の給与はめっぽう高く、年功序列の会社であれば、年収額は最高値に達している。 

 

 人件費は高くつくのに、定年までの残り時間が少ない。その限られた時間で、成果を挙げてくれるかわからない……。そのような50代転職者を採用側は、敬遠しがちなのは事実だ。高い給与に見合うほどの高い実力がなければ、積極採用しないのが正直なところである。 

 

 ただ、そうした実情がありながらも、「こういう人物なら50代でもぜひ採りたい!」という層がいる。その特徴を3つに絞ると、以下のような人物像になる。 

 

① 希少性が高い職種の人 

② ポータブル性が高い職種の人 

③ 柔軟性が高い人 

 上記の特徴はあくまで、採用現場を見てきた人事担当である筆者の“一見解”だが、それぞれについて思うところを書いてみたい。 

 

■54歳男性を他社と獲り合いに… 

 

①希少性が高い職種の人 

 「希少性が高い職種の人」とは、特定の専門知識やスキルを持ち、なおかつ転職市場において対象者が少ない層のことだ。 

 

 中でも、ITエンジニアは、圧倒的に人材が不足しており、企業間でも獲り合いになっているのが現状だ。年齢にこだわらず、積極採用する企業が増えており、50代以降も第一線で活躍できるチャンスが広がっている。 

 

 一方、特定の職種でも急激にニーズが高まっている。たとえば、品質管理(品質保証)、法務・コンプライアンス、内部監査、サスティナビリティ推進などだ。 

 

 背景には企業のグローバル化に伴い、労働環境や業務プロセスなどで、より厳しい国際基準が求められるようになったことが挙げられる。 

 

 

 また、不正会計などの不祥事防止や国際競争力向上のために、「コーポレートガバナンス」に力を入れる企業が増えたことも大きい。 

 

 こうした、さまざまな外的要因から、「我も我も」と取り組みを強化し始めた日本企業が、慌てて人材確保に乗り出したのが、ここ数年の採用市場の主たる傾向だ。 

 

 だが、これらの職種を経験してきたスペシャリストは、そもそも母数が少ない。しかも、私が想像するに、彼らはえてして律儀で、真面目で、職人気質であるため、自社にとどまる傾向がある。果敢に転職に挑まないからか、転職市場になかなか出てこないのだ。 

 

 以前、こんなケースがあった。とあるベンチャー企業で採用を担当していた私は、「品質管理」のスペシャリストを探していたが、なかなかいい人が見つからず、苦戦……。ようやく見つかったのが、転職エージェントから紹介された大手メーカー出身の男性Aさん(54歳)だった。 

 

 自社の平均年齢からすると、できれば「40代まで」がありがたかったが、贅沢は言っていられない。あまり期待はせず、面談に臨むと想像以上に若々しく、快活な雰囲気や語り口にも好感が持てた。もちろん経歴も実績も申し分なかった。 

 

 Aさんの現職での年収は1000万円。ぜひとも当社に来てほしかったため、少し強気に1200万円の年収額を提示すると、先方から断りの返事が……。なんと他社から1500万円を提示されたらしく、そちらに決めてしまったというのだ。「やられた!」と思った。 

 

 この分野の人材獲得競争は思いのほか激しく、年齢も年収も高かろうと、いい人材ならあっという間に獲られてしまう。そのことを痛感した出来事だった。 

 

 Aさん自身もきっと驚いたであろう。これまで1000万円で雇われていたのが、ひとたび転職市場に出れば、1500万円の価値があるのだから。本来なら高値がつくのに、自身の市場価値を知らずに自社で飼いならされている50代は、実は多いのかもしれない。 

 

 

■管理部門系の職種は手堅いニーズが 

 

② ポータブル性が高い職種の人 

 どこの会社でも必要とされる職務に就いている人(ポータブル性が高い職種の人)は、やはり企業からのニーズは高い。 

 

 人事の自分が言うのもおこがましいが、その代表職種が人事や経営企画、経理・財務、宣伝・広報などの「管理部門系」の仕事だ。 

 

 これらの分野で一貫して専門性を磨いてきた人は、年齢や出身業界に関係なく、企業から常に手堅いニーズがある。50代以降の場合、マネジメント経験が豊富にあるとさらに付加価値は高まり、年収アップも期待できるだろう。 

 

 営業職のプロも、専門性があると言えるが、必ずしも他社で通用するとは限らない。それは扱う商材やサービス、取引対象によっても、やり方がまったく異なるからだ。 

 

 営業手法も多岐にわたるため(新規開拓またはルートセールス、従来型の訪問営業またはインサイドセールスなど)、入社後も前職同様、成果を挙げてくれるかどうか、予測がつきづらいのが難点だ。 

 

 また、ブランド力の高い会社で営業やマーケティング職をしていた人も、少しだけ注意が必要だ。その会社で得た成績は、自身の実力というより、自社のブランド力によるものと考えられなくもないからだ。 

 

 要は会社に「下駄をはかせてもらっている」可能性も高いので、採用時に過去の実績について詳しく確認する必要がある。 

 

■欲しいのは“表にも裏にも回れる”50代 

 

③ 柔軟性が高い人 

 組織で活躍してもらうには、経験やスキルもさることながら、「人間性」も重要な要素だ。特に年齢とともに失われがちな“フレキシビリティ”を持つ50代は、高い評価を得やすい。 

 

 長い間、仕事をしていると、「こうあるべき」という自分なりの型ができてしまうものだが、会社が変われば、仕事のやり方も取り巻く状況も異なり、そこに柔軟に合わせていく姿勢が必要だ。 

 

 ときに自分の型を崩してでも、新しいやり方やアイデアを取り入れられる人は、結果もすぐに出やすい。 

 

 また、50代ともなると、自分より年下の社員が上司になることもザラにある。「オレがオレが」系の自分を曲げられない人は、新しい組織でやっていくのはまず難しいだろう。 

 

 その時々の場面によって、表にも立てるし、裏方にも回れる。年下の上司が多少頼りなく見えても、上から目線にならずに陰で支えることができる。 

 

 そうして、表にも裏にも上手に立ち回れる経験豊富な50代は、多種多様な人材が集う会社組織に「調和」と「安定感」をもたらしてくれる。ぜひとも職場に長くいてほしい人材だ。 

 

 こうした人間性の部分は、採用時に見極めるのはなかなか難しいのだが、私の場合は、面談で念入りに掘り下げたり、「リファレンスチェック」で前職での仕事ぶりをリサーチしたりしながら、できる限りつかむようにしている。 

 

 さて、次回は、「こういう50代は採用したくない」というポイントや実例について紹介したいと思う。 

 

萬屋 たくみ :会社員(人事部長) 

 

 

 
 

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