( 226109 )  2024/10/25 02:53:27  
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自民党に非公認候補への2000万円支給問題が浮上し、党の議席減少が予想される中、逆風が吹いている。

公認候補と異なる支援金の扱いに疑念が広がり、「裏金議員」たちも影響を受けている。

自民党の凋落が深刻で、安倍元首相の妻も落選が危ぶまれる候補の応援活動に参加している。

自民党が改革を行わない限り、復活は難しい状況だ。

(要約)

( 226111 )  2024/10/25 02:53:27  
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非公認議員に対する「2000万円支給問題」でさらなる逆風が(写真: Buddhika Weerasinghe/Bloomberg) 

 

 10月27日に投開票される衆院選で、大幅な議席減が確実視される自民党に、またもや激震が走った。日本共産党の機関紙である『しんぶん赤旗』は23日、自民党派閥の裏金問題で非公認となった候補が代表を務める党支部にも、党本部から2000万円が振り込まれていたことを報じた。 

 

【写真】安倍昭恵氏と涙ながらに握手を交わす丸川珠代議員 

 

 10月9日付で自民党の森山裕幹事長から各支部会計責任者宛てに発行された「支部政党交付金支給通知書」によれば、その内訳は「公認料分」としての500万円と「活動費分」としての1500万円で、いずれも翌日付で各支部が管理する指定の政党助成金専用口座に振り込まれている。非公認候補者が代表を務める8つの党支部には、衆院選公示直後に、「党勢拡大のための活動費」として2000万円が支給された。 

 

■「正直者がバカを見る政党だ」 

 

 さすがに非公認の候補に「公認料」を出すことははばかれたのだろう。森山幹事長は23日に「党勢の拡大のための支給で、衆院選の候補者に対して支給したものではない」と述べている。 

 

 また、自民党は24日に「わが党の支部政党交付金に関する報道について」と題する文書を出し、非公認候補が代表を務める党支部に2000万円を支給したことを「支部活動の活発化や、党勢拡大」のためと説明。「非公認となった支部長が自身の選挙運動に使うことはできない」と釈明した。 

 

 しかし、それでは公認候補が代表を務める党支部の活動費は1500万円であるのに対して、非公認の候補が代表を務める党支部の活動費は2000万円と、後者の活動費のほうが多額になるという矛盾が生じる。身内からも不満が出ており、「正直者がバカを見る政党だ」と、ある自民党公認候補が吐き捨てている。 

 

 それでなくても現状は厳しい。しんぶん赤旗がスクープを出したのと同じ日に早刷り版が出た週刊文春では、自民党の獲得議席が200議席を割り、197議席になりそうだと予想された。確かに選挙区を歩いてみても、自民党の候補が開く演説会にはなんともいえない“後ろ暗さ”が漂っている。 

 

 

 とりわけ深刻なのは比例復活の望みが絶たれた“裏金議員”たちだ。中には「泣き落とし戦術」を繰り広げている候補もいる。 

 

 東京1区に出馬している山田美樹氏は10月23日夜に新宿区内で開いた演説会で、「私が勝てないと、私に入れて下さった皆さんの票が無駄になる」と涙声で訴えた。 

 

■維新の小野氏は捨て身で丸川氏追放へ 

 

 参院議員から東京7区に鞍替えした丸川珠代氏も10月16日、「なんとしても組織の論理に負けない、正しい道を行く者が正しい道を進める政治を、私は改めてここから作り直していきたい、そういう思いで天におられる安倍先生にお誓いを申し上げて、この選挙に臨みました」と涙ぐんだ。 

 

 丸川氏は自民党の公認を得たものの、公明党から推薦がもらえず、港区と渋谷区内に存在する1万2000票ほどの「創価票」が入る望みは薄い。さらに日本維新の会の小野泰輔氏が「私、小野泰輔あるいは維新なんて好きじゃないなという方は、立憲民主党にいれてください。そのことによってこの選挙区で、裏金議員に対してしっかりと民意を突きつけることができる」と、捨て身で「裏金議員」である丸川氏を追及。まさに丸川氏は最大のピンチにある。 

 

 しかも選挙戦後半に入ってもなお自民党に勢いがつかないことに石破茂首相は危機感を強め、10月21日に「緊急通達」を出して引き締めを図った。そして40ほどの「重点選挙区」を選び、集中的に応援体制を組むことにした。その中に山田氏の東京1区は入っていたが、丸川氏の東京7区は入っていなかった。 

 

 藁にもすがりたい彼らが頼みの綱とするのは、人気者の応援だ。9月の総裁選で1回目の投票ではトップとなったものの、決選投票で石破首相に敗れた高市早苗前経済安全保障担当相には、130件もの応援依頼が殺到し、全国を飛び回っている。「なるべくたくさんの仲間を応援したい」と日程をやりくりするが、自分の選挙区入りもままならないほどだ。 

 

 

■安倍元首相の妻、昭恵氏も奔走 

 

 2年前の参議院選の最中に凶弾に倒れた安倍晋三元首相の妻の安倍昭恵夫人も、「裏金問題」に喘ぐ旧安倍派の“最後の切り札”のような存在で、16日には2728万円の裏金で自民党から公認されなかった萩生田光一氏の後援会女性部の決起大会に参加。取材陣をシャットアウトした会場では、故・安倍元首相の遺影が置かれ、生前の安倍元首相がピアノを演奏する映像が流されたという。 

 

 昭恵夫人はまたその日の夜に、丸川氏の東京7区に入り、「国会議員となり、大臣となり、この国のために活躍されている(丸川氏の)姿。いまも主人はきっとどこかで『頑張れよ』というふうに応援していると思います」と丸川氏を励ました。丸川氏も「こんなに安倍先生がいないことが悲しく思える選挙はありません」と涙をぬぐった。 

 

 昭恵夫人は24日には、自民党から公認されなかった下村博文元文科相を応援するため、東京11区を訪れるとされる。1996年以来、同区で勝ち続けてきた下村氏は、下馬評では立憲民主党の候補に猛烈に追い上げられ、政治生命の危機にある。 

 

 自民党の凋落はもはや、誰も止めることができないレベルに入っている。思い切って膿を出し切り、これまで党の主流となっていた国民にとって不要なものを切り離さない限りは、自民党の復活はないだろう。 

 

安積 明子 :ジャーナリスト 

 

 

 
 

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