( 226314 )  2024/10/25 18:01:57  
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巨人の阿部監督は、クライマックスシリーズ(CS)の問題点を看過できないと考えている。

セ・リーグを制したにもかかわらずCSで敗れて日本シリーズに進出できなかった不条理に対して、もっと怒ってもいいのではないかと思っている。

CSの問題点や批判を受けつつ、CSの導入についての経緯や批判、改革案なども示されており、CSに対する様々な意見があることが示されている。

(要約)

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巨人・阿部監督は何を思うのか 

 

 たとえ手に汗握る好ゲームの連続だったとしても、クライマックスシリーズ(CS)自体が持つ問題点を看過するわけにはいかない──。セ・リーグを制したにもかかわらず、巨人はCSが原因で日本シリーズに進出できなかった。この不条理をG党は、もっと怒ってもいいのではないだろうか。 

 

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 9月28日、巨人は対広島戦を8―1で完勝し、セ・リーグ優勝を決めた。シーズンが終わると2位の阪神には3・5ゲーム差、3位のDeNAには8ゲーム差を付けた。 

 

 ところが10月12日、セリーグのCSファーストステージが始まると、DeNAが旋風を巻き起こす。2連勝で阪神を下すと、その勢いのままファイナルステージで巨人と対戦。初戦は2-0、第2戦と第3戦は共に2-1と接戦をものにして3連勝を飾った。 

 

 怒濤の快進撃でDeNAが日本シリーズに王手をかけると、崖っぷちの巨人は意地を見せる。第4戦は4-1、第5戦は1-0で勝利し、アドバンテージの1勝を含めて逆王手。担当記者が言う。 

 

「初戦から第5戦まで熱戦が続き、セ・リーグのCSは非常に盛り上がりました。どの試合も1点を争う好ゲームで、両チームのファンはもちろん、パ・リーグのファンも試合中継に釘付けだったようです。第6戦は日本テレビが中継し、視聴率は世帯平均が15・4%(註:ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録しました。最終戦は戸郷翔征が先発して力投、8回と9回は菅野智之が登板するという豪華リレーで野球ファンを喜ばせましたが、最後はDeNAの牧秀悟がタイムリーヒットを放ち、巨人は2-3で惜敗しました」 

 

 巨人と阪神のOBである野球評論家の広澤克実氏は、以前から一貫してCSの開催を批判してきた。 

 

 デイリー新潮は2023年9月、「【阪神・オリックス優勝】『2位と5ゲーム以上の差ならCSは開催すべきではない』タイガースOBの持論に賛否 改めて聞くその根拠」との記事を配信した。 

 

 記事では広澤氏に取材を依頼し、CS批判の根拠について尋ねた。詳しくは当該記事を読んでいただくとして、広澤氏の主張を要約すると、以下のようになる。 

 

▼プロ野球がポストシーズンを実施することには賛成。メジャーのポストシーズンは魅力的だが、CSは問題が少なくないため開催を反対している。 

 

▼問題の一つが6チームのうち3チームがCSに進み、日本一となる可能性を手に入れてしまう点。12球団のうち6球団がポストシーズンに進むのは、いくら何でも多すぎる。 

 

▼どんなにアドバンテージを厳しくしても、現行のままでは3位のチームが日本シリーズに進出できる可能性がゼロにはならない。だからこそCSは開催すべきではない。 

 

 ところがネット上には「巨人がCSを推進してきたのだから当然の報い。3位のDeNAに負けて巨人が日本シリーズに行けなくても文句は言えない」という投稿が散見される。実はこれ、偽情報、フェイクニュースの一種だとご存知だろうか?  

 

 話は2003年に遡る。今の若いプロ野球ファンには信じられないだろうが、当時は巨人に人気が集中。パ・リーグの各球団は長期的な人気低迷と赤字経営に苦しんでいた。 

 

 

「パ・リーグは起死回生の策として、プレーオフ制度の導入を決めます。2003年1月に開かれたオーナー懇談会で、まず3位と2位のチームが最初に戦い、勝者が1位のチームと対戦。最終的に勝ったチームがパ・リーグ優勝とし、日本シリーズに進むというルールを定めました。なぜプレーオフの導入を決めたのかと言えば、当時のパ・リーグは消化試合の観客減が深刻な問題になっていたからです」(同・記者) 

 

 優勝チームが決まると、残り試合は誰も球場に来ない。そのためパ・リーグは年140試合を135試合に減らしてでも、プレーオフを実施することを決める。 

 

「これに激しく噛みついたのが、当時巨人のオーナーで読売新聞主筆の渡邉恒雄氏でした。7月のオーナー会議で『セとパで試合数が異なるのも問題なら、最後の何試合かで突然3位のチームが勝つこともありうる。そんな日本シリーズはバカバカしい』と痛烈に批判。もし実際に3位のチームがセ・リーグの優勝チームと日本シリーズを戦うことになれば、『これだけ食い違うなら一緒に行動はできん』と吐き捨て、日本シリーズをボイコットすることも示唆したのです」(同・記者) 

 

 そして2004年のシーズンが開幕すると、パ・リーグに激震が走る。6月に近鉄とオリックスの合併が合意に達したと発表されたのだ。6球団が5球団に減るのだからプレーオフどころの騒ぎではない。パ・リーグが消滅して1リーグ制になることも現実味を帯びた。 

 

「渡邉恒雄氏は1リーグ制を強く支持。さらに選手を守ろうと奔走していた、当時ヤクルトのキャッチャーで、プロ野球選手会の会長だった古田敦也氏を『分をわきまえなきゃいかんよ。たかが選手が』と批判しました。この2点で渡邉氏はプロ野球ファンの反感を買います。最終的には楽天が“白馬の騎士”としてパ・リーグに加盟。12球団2リーグ制が維持され、プレーオフも予定通り実施されることになりました。この年は3位が日本ハム、2位が西武、1位がダイエーという順位だったのですが、今で言う“ファーストステージ”が始まると、再びパ・リーグに激震が走ったのです」(同・記者) 

 

 観客が球場に詰めかけたのだ。8試合の観客動員は34万8000人。1試合平均4万3500人に達し、グッズや売店の売上げを合わせると1試合で数億円の収入が転がり込んだ。これでオーナー側の風向きが全く変わってしまう。 

 

「実際の試合は、3位の日ハムは2位の西武に敗れました。ところが1位のダイエーも西武に負けてしまったため、西武が1位に決定。日本シリーズに進んで中日と対戦しました。結果は西武が4勝3敗で勝利したため、プレーオフまでは2位だったチームが日本一になってしまいました。CSの原点と言える2004年のプレーオフと、それに伴う日本シリーズでは共に下剋上が発生したという事実は興味深いと言えます」(同・記者) 

 

 

 興行面は大成功でも、下剋上が起きてしまったのは問題だったはずだ。2004年のパ・リーグはプレーオフが始まる前、2位の西武は1位のダイエーに4・5ゲーム差を付けられていた。 

 

 それをひっくり返してしまったのだから、今のCSと全く同じ欠点が露呈していたことになる。だが世論もオーナーも「下剋上の問題点」を指摘することはなかった。それだけのインパクトがプレーオフにはあったということなのだろう。 

 

「パ・リーグのファンは『最初にプレーオフを知った時は、無駄なことをするんだなと思ったが、実際に観戦するとあまりにも面白いので驚いた』という高評価ばかりでした。興行としても非常に収益性が高いことが分かり、セ・リーグでもオーナーの一部が賛成に転じました。具体的には巨人のオーナーになった清武英利氏が旗振り役を務め、ヤクルトも賛成。最後まで反対していたのは阪神と報じられましたが、最終的には2007年のシーズンからセ・リーグでも実施されることが決まったのです」(同・記者) 

 

 言うまでもないことだが、プロ野球にはスポーツとしての側面と興行としての側面がある。クライマックスシリーズは、オーナーが興行面を重視したことでスタートしたのは間違いない。改めて広澤氏に取材を依頼した。 

 

「私はポストシーズン自体は賛成しています。ただし日本のCSは3位のチームが勝ち上がって『下剋上、おめでとう』と褒められるわけです。12球団や18球団で3位なら分かりますが、6球団の3位は真ん中に過ぎません。今後、シーズンによっては1位と2位が独走し、3位のチームは負けが込んで借金を抱えてCSに出場、にもかかわらず日本シリーズを制して日本一になるというケースが起きる可能性があります。負け越したチームが日本シリーズに出場するのは、誰が考えてもおかしな制度だと思うはずです」 

 

 パ・リーグのCSでは3位のロッテが2位の日ハムに敗れ、1位のソフトバンクが勝利した。レギュラーシーズンと同じ結果になったわけだが、ならばCSを開催する意味があるのかという疑問も湧く。 

 

「パ・リーグはファイナルステージでソフトバンクが勝利したので、批判の声は出ませんでした。しかし結局のところ勝負は時の運です。日ハムが4連勝して日本シリーズ進出を決めても全く不思議ではありませんでした。もしそうなれば、13・5ゲーム差がひっくり返されたことになってしまいます。異論が続出したのは間違いありません」(同・広澤氏) 

 

 23年の記事ではCSの改革についても触れた。「4チームの3リーグ制とし、優勝できなかった9チームのうち勝率1位のチームをワイルドカードで選出。4チームでポストシーズンを戦う」という改善案について広澤氏に考えを訊いたのだ。 

 

 広澤氏の回答は「この意見に私が賛否を示すつもりはありませんが、非常に建設的な内容で傾聴に値するものだと考えています」というものだった。 

 

デイリー新潮編集部 

 

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