( 226409 )  2024/10/26 01:17:38  
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25日に政府は自衛官の採用達成率が過去最悪になっていることに危機感を持ち、処遇改善に向けて関係閣僚会議を開催。

特殊な給料体系や全国転勤、定年退職の影響などが採用に不利に働いており、採用率が急激に低下している。

一方、米軍の社会的な優遇措置に比べ、日本の自衛官にはそれらがない現状も問題視されている。

政府は改善の取り組みを加速しており、今後の具体策や社会の理解を得るための方向性が重要となっている。

(要約)

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自衛官の採用達成率 

 

自衛官の処遇改善について、政府は25日に関係閣僚会議の初会合を開催。石破茂首相は、年内に対策の方向性を取りまとめ、具体策を令和7年度予算案に盛り込むよう指示した。政府が省庁横断の会議で検討し始めたのは、過去最悪レベルの採用達成率への強い危機感がある。 

 

【表でみる】自衛隊の歴史と防衛力整備の推移 

 

■採用達成率わずか30% 

 

「正直なところ、警察官より少しでも給料の額面が高ければ…」。採用活動に関わるある防衛省関係者はこう漏らす。自衛官は警察官や刑務官と同じ俸給月額だが、有事に備えた常時勤務体制のため、超過勤務手当がない代わりに月給の約1割を上乗せする特殊な給料体系になっている。 

 

また、市町村単位の消防士、都道府県単位の警察官と違い、全国転勤があることも採用に不利に働いているとみられるほか、全体を若く精強に保つため、多くが56歳で定年退職し、将来不安を抱えることもマイナス要因とされる。 

 

こうした状況下で、採用率は過去3年で急激に下がった。隊員の約8割を占める「下士官」階級のうち、任期制の「自衛官候補生」は昨年度の採用達成率がわずか30%で、終身制の「一般曹候補生」も69%と低迷。中途退職者は5年前から1・3倍近く増えた。 

 

■米軍は社会でさまざまな優遇 

 

現場は、現状を打破しようと、魅力向上に余念がない。 

 

電波の入らない洋上で数カ月勤務する艦艇では衛星通信によるインターネットへの常時接続可能な環境を導入。陸上では隊舎の個室化やトイレの洋式化などの整備も進めた。防衛省は人員不足が深刻な艦艇乗員に加え、離島など僻地(へきち)勤務となるレーダーサイト隊員らの手当てを増額。再就職支援も打ち出した。 

 

だが、ある幹部は「改善すべき不満はあるが、それが入隊の決め手になるだろうか」と疑義を呈している。 

 

米軍では映画館やレストランの料金が優遇され、退官後は民間軍事会社などに再就職し、医療費が免除される。これに対し、日本の自衛官にはこうした地位はない。この幹部は「使命感への共感を持ってもらうには社会の理解が前提だ」とも訴える。 

 

関係閣僚会議が立ち上がったが、現状では他省庁との検討項目は各種業界への再雇用推進などにとどまる。今後、社会の機運を醸成する抜本的な方向性を示せるかが、空前の自衛官不足解消のカギとなりそうだ。(市岡豊大) 

 

 

 
 

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