( 226989 )  2024/10/27 16:35:46  
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清水製粉工場の社長である佐藤篤さんは、キノコ業界が培地の高騰に苦しむ中、食料生産の未来を心配している。

彼は農家との板挟みの状況にあると感じており、政府や日銀の政策による円安などが培地価格の上昇に影響していることを指摘している。

佐藤さんは地域産業とのギャップに首をひねっており、キノコ業界の苦境を重く受け止めている。

(要約)

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キノコの培地の原料を配合する大型機械を操作する、清水製粉工場の佐藤篤社長。食料生産の行く末を懸念している 

 

 全国1位の生産量を誇る長野県のキノコ業界が、栽培に必要な「培地」の高騰にあえいでいる。培地の原料は大半が輸入品で、政府・日銀の政策による円安などの影響で値上がり。培地を製造販売する清水製粉工場(長野市)社長の佐藤篤さん(57)は、苦しむ農家との板挟みに遭ってきた。「物価高騰対策」「食料安全保障」…。衆院選では27日の投開票に向け与野党のかけ声が響くが、佐藤さんは、置き去り状態にある地域産業とのギャップに首をひねる。 

 

【グラフ】長野県の品目別のキノコ生産者数。激減していることが一目で分かる 

 

 「おれっちに、(キノコ栽培を)やめろってことか?」。新型コロナの感染拡大に伴う輸送費の高騰で、培地を値上げした3年ほど前のことだ。佐藤さんが北信地方の農家に値上げを申し入れると、激しい口調で詰め寄られた。この小規模農家では、月70万~80万円の培地購入額が100万円ほどに膨らむ計算。「自分たちも努力していますので、お願いします」。ただ頭を下げるしかなかった。 

 

 佐藤さんは県内の大手建設会社の現場監督だったが、2007年、後継者がいなかった妻の実家を継いで清水製粉工場の社長に就いた。同社の培地を使う農家は200件ほどに上る。農家の負担を少しでも減らそうと、トウモロコシの芯を砕いた「コーンコブ」と呼ばれる培地原料の仕入れを工夫。中国や東南アジアに安いルートを見つけた。 

 

 農家の生産性を高めるために、キノコの種類や環境によって最適な培地の配合を研究した。より良い原料を大量に仕入れるには調達を海外に頼らざるを得ず、コーンコブだけでも年間約5千トン以上を輸入した。 

 

 だが、安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」に伴う円安と中国の経済成長で、12年ごろから輸入コストが上昇。自動車関係など輸出系製造業が好況となり、株価が急上昇する一方で、キノコ業界は苦境に陥った。「日本の基幹産業を支えるために仕方ないのだろうが、農家は置いてけぼりだった」 

 

 20年以降、コロナ禍とロシアによるウクライナ侵攻で海上輸送網が混乱し、コーンコブの仕入れ値はコロナ禍前の2倍近くに達した。上昇分を全て価格に転嫁できず、2期連続の赤字を計上した。 

 

 帝国データバンク長野支店によると、県内では今年に入りキノコの栽培や資材卸に関わる企業が少なくとも6社倒産した。佐藤さんが培地の納入先を回ると、交換時期を過ぎて汚れた栽培瓶や、ボロボロのコンテナが目に入る。後継者がいる農家はほとんどない。「日本の食料生産は、どうしてこれほどもろくなったのか」。憤りが口を突いた。 

 

 

 
 

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