( 227254 )  2024/10/28 03:04:36  
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ヘビーメタルのファン層が年を取り、ライブで客は着席したまま観覧する傾向が見られる。

日本のメタルシーンは70年代や80年代からのバンドや日本国内での人気が高いバンドが主流で、新陳代謝が進んでいない。

メタルアーティストの年齢も高齢化しており、ライブで加齢による衰えが見られることもある。

メタル専門誌の表紙を飾るアーティストも大半が古参のバンドで、世代交代が進んでいない状況が浮き彫りになっている。

(要約)

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アーティストは大熱演でも客は着席したまま?(イメージ) 

 

 あらゆる音楽のジャンルの中でも、「激しさ」という部分で他の追随を許さないのがヘビーメタル。天まで突き抜けるようなハイトーンや“デス声”のボーカル、歪んだ音色で速弾きするギター、手数と足数がとにかく多いドラム……。まさに「轟音」という表現が相応しい音楽でコアなファンを獲得してきたが、その裏でファンの“新陳代謝”は進んでいない現状があるようだ。 

 

【写真】メンバーの平均年齢は60代、2024年のIRON MAIDENのパフォーマンスの様子 

 

 Mさん(50代/男性)は高校生の時にメタルにハマり、足繁くコンサートに足を運んだが、社会人になるとすっかりご無沙汰に。旧友から誘われたことで、メタル界の頂点に君臨するイギリスのバンド「IRON MAIDEN」が9月下旬に行なった来日公演に出かけた。 

 

 メタル系アーティストのライブは約30年ぶりだったMさん。まず驚いたのは「チケット代の高さ」だったという。 

 

「大学時代は確か7000円ぐらいだったと思いますが、今回は1万8000円。バンドTシャツも3000円前後だったものが8000円で、ジャパニーズマネーの弱さを感じましたが、それよりも驚いたのは客層です。 

 

 IRON MAIDENはデビューから40年以上経っているので、ある程度年齢層が高いのは想像できましたが、会場に入ると客席は見事におじさんとおばさんばかり。昔は客電が消えると、みんな一斉に立ち上がり、いわゆる“ヘドバン”をしたものでしたが、今回のライブでは客電が消えても私の周りの観客は座ったままで、アンコール最後の曲まで1度も立ち上がることなくライブを見終えました」(Mさん) 

 

 ベテランバンドなら客の平均年齢が上がるのは当たり前。本来なら座席は“座るため”に存在するのだから、正しい姿に戻ったとも言えるが、この光景はIRON MAIDENに限ったものではないという。メタルに詳しい音楽ライターが言う。 

 

「ハードロック&ヘビーメタルがピークを迎えたのは、BON JOVI、DEF LEPPARD、GUNS N’ ROSES、WHITESNAKEといったバンドがビルボードのアルバムチャートの上位を占めた1980年代の後半です。海外では90年代に入って失速したものの、日本ではむしろ90年代がピークでしたが、そこから日本は“ガラパゴス化”します。 

 

 海外では新人バンドがどんどん登場し、適度にファンも入れ替わりましたが、日本のメタル界隈で人気が高いのは、70年代や80年代から活動しているバンドか、日本だけで人気がある“Big in Japan”のバンドばかり。以降、今に至るまで新陳代謝がほとんど進まず、メタルバンドの来日公演の平均年齢は年を追うごとにどんどん上がっています」(音楽ライター) 

 

 メタル界の世代交代が全く進んでいないことは、メタル専門誌「Burrn!」の表紙を飾ったアーティストを見れば一目瞭然だ。同誌は2024年10月号で40周年を迎え、40年を振り返る特集コーナーを設けているが、2024年発売号の表紙を見ると、 

 

1月号:David Coverdale(WHITESNAKE) 

3月号:KISS 

4月号:JUDAS PRIEST 

6月号:Bruce Dickinson(IRON MAIDEN) 

7月号:Slash(GUNS N’ ROSES) 

8月号:MR.BIG 

10月号:IRON MAIDEN 

 

と、10号中7号が80年代から活躍しているアーティスト。この他にもMETALLICA、AC/DC、MOTLEY CRUE、HELLOWEEN、MEGADETH、BLACK SABBATH、Ozzy Osbourne、Michael Schenker、SLAYERなどが2020年代に入って表紙を飾っており、オールドスクールなバンドが占める表紙を飾る割合は8割を大きく超える。これらのバンドのメンバーは全員が還暦超えだ。 

 

 

 前出のMさんは、IRON MAIDENのライブについて「メンバーのエネルギッシュさは当時と全く変わらなかった」というが、加齢による衰えを隠せないアーティストもいるという。 

 

「IRON MAIDENはメンバーの平均年齢が60代ですが、メタル界には70代を超えていまなお現役を続けるバンドもあり、見ている方が不安になる瞬間もあります。1曲終わるごとに肩で大きく息をしたり、ギターやベースの重みでフラフラしたり、1万回は演奏したはずの曲を間違えたり……。曲のキーが明らかに下がっていたり、疾走感が命の曲のテンポが遅くなっていたりしてガッカリすることもありますね。 

 

 年を取っているのは客席も同じこと。プロモーターの話では、1階がスタンディング、2階が椅子席という会場だと、2階から先にチケットが売れていくそうです。ただ、年齢が上がった分だけ物販の買い方は豪快で、カードで5万円、10万円と“大人買い”する客も珍しくないとか」(前出・音楽ライター) 

 

 さらに、こんな現象もあるという。 

 

「ある時メタル専門のCDショップに行ったら、平日なのに異常に混んでいるんです。店員に聞くと、『年金支給日だったからですよ』とのこと。確かにメタル第1世代は70年代に10代~20代だった人なので、とっくに年金を貰っていてもおかしくありません。中には『(年金支給日の)15日に払うから』と、取り置きを頼む客もいるそうです」(同上) 

 

 12月にはIIRON MAIDENと並ぶメタル界の雄・JUDAS PRIESTの来日公演も控えている。メタル熱が復活したMさんはこちらのチケットも購入したが、ボーカルのRob Halfordが73才だということを知り、もっぱら「無理はしないで」と願う心境だそうだ。(了) 

 

 

 
 

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