( 227864 )  2024/10/29 17:50:33  
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石破茂首相の政策は大前研一氏により批判されている。

石破首相は、解散・総選挙や選択的夫婦別姓制度などで方針の変更を繰り返し、朝令暮改の姿勢が目立っている。

また、岸田前首相の政策を踏襲しすぎており、首相交代の目的が不明瞭だと指摘されている。

また、地方創生と最低賃金引き上げを柱とする成長戦略についても、その政策の妥当性が疑問視されている。

石破首相の経済政策や金融政策に対する理解不足も批判されており、経済オンチとまで評されている。

(要約)

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石破茂首相の政策をどう評価するか(イラスト/井川泰年) 

 

 5度目の挑戦で自民党総裁の地位を勝ち取った石破茂氏だが、「何の準備もできていなかった」と断じるのは経営コンサルタントの大前研一氏だ。石破氏について“岸田文雄・前首相以上の経済オンチ”と酷評する大前氏が、その政策の問題点について解説する。 

 

 * * * 

 石破茂首相がブレまくっている。たとえば、解散・総選挙。自民党総裁選挙の時は国会で野党側と論戦を交わしてから実施すると言っていたが、実際は戦後最短の首相就任から8日後の解散・総選挙に踏み切った。 

 

 選択的夫婦別姓制度についても、総裁選の時は導入に前向きな姿勢を強調していながら所信表明演説では触れず、衆議院本会議の代表質問で「国民各層の意見や国会における議論の動向などを踏まえ、さらなる検討をする必要がある」と手のひらを返して導入に慎重な考えを示した。 

 

 また、総裁選直前までは金融所得課税の強化を主張していたのに、やはり代表質問で豹変し「現時点で具体的に検討することは考えていない」と答弁した。 

 

 さらに、当初は裏金議員を総選挙で「原則公認」とする方針だったが、世論の批判が強く、党内でも異論が相次いだため、旧安倍派幹部ら12人を非公認にした。政治資金収支報告書に不記載が確認された議員は、公認しても比例代表との重複立候補を認めなかった。 

 

 まさに朝令暮改である。総裁選に5回も挑戦しながら、総裁になったら何の準備もできていなかったことが露呈した。石破首相は就任演説で「納得と共感内閣」と述べ、所信表明演説でも「国民の皆様の納得と共感を得られる政治を実践する」と強調したが、実際は「納得も共感もできない迷走政治」の開始にほかならない。 

 

 しかも、経済政策は「新しい資本主義」や「資産運用立国」など岸田文雄政権の主要政策をほぼ踏襲した。副大臣や政務官も多くを再任し、異例の“居抜き人事”となった。これでは何のために首相が交代したのか、さっぱりわからない。岸田首相のままでよかったのではないかということになる。 

 

 

 石破首相は成長戦略の柱として「地方創生」と「最低賃金の引き上げ」を掲げているが、これも頓珍漢だ。 

 

 前者は自身が初代の地方創生担当相になった2014年以来「十年一日」であり、「地方創生の交付金を当初予算ベースで倍増することを目指す」としているが、交付金を倍増したところで、自治の権能(立法・行政・司法の三権)がなく「国の出先機関」にすぎない都道府県や市町村には自律的に繁栄する手立てがない。 

 

 一方、後者はむしろ地方衰退を加速させる政策だ。かつて私は、福岡県を中心に九州でネットスーパー事業を展開していた。福岡県を選んだ理由は、人件費が安かったからである。当時の最低賃金は650円台だったが、そのレベルでも従業員の大半は自分の軽自動車で通勤していた。大都市より住居費も生活費も安いから、賃金が低くても十分暮らしていけるのだ。 

 

 石破首相は最低賃金の全国平均(2024年度は1055円)を「2020年代に1500円」を目指すと言っているが、地方の時給が上がっていくと不動産賃料をはじめとする様々な物の値段も上がっていくから、東京や大阪などの企業が地方に行くメリットはなくなる。ましてや最低賃金が1500円になったら、労働分配率が70%を超えている中小企業は倒産・廃業の山になるだろう。つまり、地方に企業が立地することが難しくなるので、最低賃金1500円は「地方衰退策」と言ってよい。 

 

 また、石破首相は「デフレ脱却最優先」「その第一歩として物価高対策を行なう」と言っている。だが、10月の食品値上げが2911品目に達するなど、もはや日本はデフレではなくインフレだ。そもそもデフレなのに物価高対策というのは、完全に矛盾している。 

 

 かてて加えて、大規模な金融緩和を柱とするアベノミクスに否定的だったかと思えば、日本銀行の植田和男総裁と会談して追加利上げに慎重な姿勢を示した。 

 

 しかし、景気を良くするためには金利を上げて2200兆円の個人金融資産をさらに増やし、それが市場に出てくるようにしなければならない。その理屈がわかっていない石破首相は、岸田前首相以上の経済オンチと言わざるを得ない。 

 

【プロフィール】 

大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。ビジネス・ブレークスルー(BBT)を創業し、現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊『日本の論点2024~2025』(プレジデント社)など著書多数。 

 

※週刊ポスト2024年11月8・15日号 

 

 

 
 

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