( 229324 )  2024/11/02 15:58:08  
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衆院議員の加藤鮎子が当選を決めた後、逮捕された太陽光発電設備の販売で法律違反を行った容疑者と関係が深いことが明らかになった。

加藤氏の夫も関与しており、チェンジ社との関係が疑念を呼んでいる。

被害者は国家が推薦したと信じて契約を結んだが、経営破綻で大きな被害が出ている。

加藤氏は国会での質問に一部回答を避けたり、関与を否定したりしていたが、実際に夫がチェンジ社に投資していたことが判明し、疑念が高まっている。

(要約)

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衆院選で当選を決め、お祝いのケーキを手にする加藤鮎子衆院議員 

 

 選挙が終わるのを待っていたのだろうか。大阪府警は10月30日、違法な販売預託商法(オーナー商法)で太陽光発電設備などを売ったとして、山形県酒田市の再生エネルギー関連ベンチャー「チェンジ・ザ・ワールド」(破産手続き中)の元社長・池田友喜容疑者ら6人を預託法違反の疑いで逮捕した。池田容疑者は、先日の衆院選で4回目の当選を果たしたばかりの加藤鮎子前こども政策担当相と親しく、加藤氏が環境大臣政務官を務めた後に環境省から賞を受けたことを預託販売の営業に利用していたことなどが国会でも問題視されていた。 

 

【写真】逮捕されたチェンジ社の元社長 

 

 運用益などを約束して、販売した現物は事業者が預かったままの「オーナー商法」は、ジャパンライフ事件などで多くの被害者を出したため、2022年6月の改正預託法で原則禁止となった。チェンジ社は同年6月以降も消費者庁の定める要件を満たさない販売預託契約を結び続けていた疑いがある。チェンジ社は23年2月に破産を申し立て、東京地裁で破産手続きに入ったが、負債総額は約38億円、債権者は約1万2千人に及んでいる。 

 

■池田容疑者が設立した法人の監事だった加藤氏の夫 

 

 AERA dot.は、チェンジ社のオーナー商法の問題と、加藤氏や加藤氏の夫がチェンジ社と関係が深いことを昨年10月の記事で報じている。 

 

 加藤氏の地盤である山形3区は、チェンジ社がある酒田市などが選挙区。池田容疑者がチェンジ社とは別に設立した一般社団法人「日本西海岸計画」は、池田氏が代表理事を務め、加藤氏の夫が監事を務めていた。同法人が開いたパーティーには加藤氏も出席し、あいさつをしたり、テキーラを飲んだりする姿が同社のSNSに投稿されていた。 

 

 また加藤氏の政党支部の政治資金収支報告書(2021年分)を見ると、チェンジ社に「WEBサイト維持管理費」「HP改修費用」として、計60万円ほどが支出されていることもわかっている。 

 

 加藤氏は2019年9月から約1年間、環境大臣政務官を務めていたが、チェンジ社は20年の環境省グッドライフアワードの「実行委員会特別賞 サステナブルデザイン賞」を受賞している。そして、チェンジ社はSNSなどでその受賞をうたい、事業を広めていた。 

 

 

■「環境省のお墨付きで契約したのに」 

 

「環境省がお墨付きで賞を出しているといううたい文句で販売され、加藤氏もSNSに出ていたので信用して契約したのですが、事業破綻してしまい、腹が立ってなりません」 

 

 と約600万円の被害に遭ったという大阪在住のAさんは憤る。 

 

 加藤氏が環境省の政務官だった時期と加藤氏と関係が深いチェンジ社の受賞が近いため、チェンジ社内の事情に詳しい人も「加藤氏と親しいから選ばれたのでは」と話していた。このため、AERA dot.編集部が前回の記事を出す前に加藤氏の事務所に問い合わせたところ、 

 

「(受賞は)当該分野に知見を有している有識者で構成された実行委員会で厳正な選考を行われているとのことです。政務官などの意思が働く余地はまったくありません」 

 

 と否定していた。 

 

■国会での質問に「お答えは控えます」 

 

 この問題は国会でもとりあげられた。 

 

 今年4月10日の衆院内閣委員会で、緒方林太郎衆院議員(有志の会)が質問に立ち、AERA dot.の記事などをもとに、当時大臣だった加藤氏に質問をしている。 

 

 池田容疑者と加藤氏や夫が「近しい関係だった」のではないか、との質問に加藤氏は、 

 

「主人のほうが先に池田氏と知り合っておりまして、同じ若手起業家の集まりに参画をしていた」 

 

 と答弁。太陽光発電を業務とするチェンジ社に加藤氏の政治団体がウェブサイトの発注をしたのは関係が近しいからではないかとさらに追及されると、 

 

「親しい関係にあったからというよりも、ウェブデザインやホームページ制作のセンスがいいとの評判を聞きましてお願いをした」 

 

 と加藤氏は説明した。 

 

 そして、チェンジ社が環境省の受賞を投資の宣伝に使っていたこと、その後の経営破たんで1万2千人もの被害者が出ていることの責任について問われると、加藤氏は、 

 

「チェンジ社が私と関係が近いことをうまく喧伝してビジネスを行っていたとすれば、まったくの不本意で、大変残念なことだ」 

 

 と答えた。 

 

 すらすらと答弁をしていた加藤氏だったが、加藤氏の夫がチェンジ社への出資や投資をしたことがなかったかと緒方議員が尋ねると、 

 

「お答えは控えさせていただきます」 

 

 と、この質問だけは回答を避けた。ちなみに、加藤氏の夫は、加藤氏の政治団体の会計責任者を務めており、まったくの私人というわけではない。 

 

 

■チェンジ社の債権者に加藤氏の夫の名前 

 

 そこでさらに取材を重ねたところ、加藤氏の夫がチェンジ社の創業間もないタイミングで、チェンジ社の商品に投資していたことがわかった。 

 

 現在、チェンジ社の破産手続きが進んでいるが、その事件記録の中にある〈債権者一覧表〉を見ると、リストに加藤氏の夫の名前があり、約111万円の債権額が記載されている。つまり、加藤氏はチェンジ社と利害関係にあったわけだ。 

 

 また、加藤氏の政治団体の収支報告書を調べると、池田氏関連の支出は、前出のWEBサイト関連の約60万円のほかに、2022年にも池田氏の親族が経営する酒田市の会社に、「インスタグラム管理費用」として38万2千円、「動画編集費用」として83万6千円と計120万円以上が支出されていることが新たにわかった。 

 

 被害者のAさんは、こう話す。 

 

「加藤氏の国会答弁も繰り返し聞いたが、緒方氏の質問にしっかり答えていない。加藤氏の夫が関与していたとなれば、ますます疑念が募ります」 

 

 国会で質問した緒方議員に、加藤氏の夫がチェンジ社に投資をしていたことを伝えると、 

 

「やはりチェンジ社に投資をしていたのですね。加藤氏の答弁が急にトーンダウンした様子で変だなと思っていました。加藤氏の夫は長く加藤氏や加藤氏の父の紘一氏(故人)の会計責任者として公的に政治にかかわっている。加藤氏がその投資を知っていて答えなかったとすれば問題だ。夫は会計責任者ですから公人で、個人的なことだと隠したりはできないはずです」 

 

 と話した。 

 

 改めて加藤氏の事務所に、会計責任者である加藤氏の夫がチェンジ社に投資をして債権があることや、国会で答弁を控えた理由、池田容疑者の逮捕とその責任などについて聞いたところ、次のような回答だけが文書で送られてきた。 

 

「ご質問の内容は衆議院内閣委員会における質疑と同じ内容で、丁寧に答弁しているところですので、該当会議録をご覧ください。加藤の配偶者に関する質問についてのお尋ねですが、別人格の民間人の経済行為に関することであるので答弁を差し控えたところです」 

 

(AERA dot.編集部・今西憲之) 

 

今西憲之 

 

 

 
 

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