( 229336 ) 2024/11/02 16:10:56 0 00 当選確実となった候補者の名前を掲示する維新の馬場代表(右)と吉村共同代表(10月27日)
衆院選が終わってトップへの批判がうずまき、“党内政局”で忙しいのは自民党だけではない。議席減となった日本維新の会でも、馬場伸幸代表への批判や「馬場おろし」の声が高まっている。突き上げの声を受けて、維新は10月31日の常任役員会で、代表選を早期に行う手続きに入ることを決めた。
【写真】維新の役員会で馬場会長に辞任を求める浅田参院会長
「衆院選のあとは党内政局、内紛でたいへんですよ。また分裂かもしれない」
こう沈痛な表情で話すのは、維新の衆院議員A氏だ。
10月27日の衆院選で、自民党と公明党の連立与党が215議席と、15年ぶりに過半数(233議席)を割る大敗を喫したが、勝利にわく野党の中で、維新は改選前の44議席から38議席と6議席減らした。小選挙区では大阪の19選挙区すべてで勝利したものの、大阪以外では4議席獲得したのみ。とくに東日本は全敗だった。より衝撃的だったのは比例票で、前回衆院選(2021年)は約800万票だったが、今回は約510万票と300万票近く減らした。
維新の共同代表でもある大阪府の吉村洋文知事は28日の会見で、
「他の野党が躍進する中で、大阪以外は野党の中で1人負け。与党が過半数割れするような選挙で、議席を減らした。非常に厳しい結果だ」
という認識を示した。大阪の小選挙区で全勝したことについても、
「積極的に何か強く支持されたとみるべきではなく、裏金の自民党の政治よりはまともと、実績がある大阪だけは自民党の受け皿になりえただけ。全勝だからと勝利したという感触ではない」
と厳しい見方だった。
一方、馬場伸幸代表は選挙後、
「与党の過半数割れは、維新がその一翼を担った」 「いいトレンドが生まれている。(結果が)すべて悪いわけではない」
などと満足そうに発言。両代表の認識の違いが浮き彫りになった。
■馬場代表に突き付けられた辞任要求
維新の浅田均参院会長は30日、国会議員団役員会で、 「大惨敗の責任を取って辞意を」 と、馬場代表と選挙責任者である藤田文武幹事長に辞任を要求した。馬場代表は、辞任を否定し、代表選を早期に実施する必要はない、という考えを示した。
だが、吉村知事も、「首班指名の前に代表選をやるべき」と発言。31日の常任役員会で、代表選を12月1日にも実施する方針が決まった。
「馬場代表が代表選を行うというのも、批判の声が高まり、吉村知事の発言も受けて、急遽、会見を開いて表明せざるを得なかった」(前出のA氏)
■「大阪組」と「国政組」の対立
A氏によると、今、維新は馬場代表を中心とした「大阪組」と、東徹衆院議員や浅田参院会長が引っ張る「国政組」の2つに割れているという。
考え方の違いが出ているのが、与党との関係だ。過半数割れした自公連立与党は、11月11日に召集予定の特別国会で石破首相を首班指名させるために連携相手を探している。10月31日には国民民主党と幹事長会談を行い、部分的な連携を進める方向が決まった。
「表になっていないだけで、当然、馬場代表は水面下で自民党と何らかの交渉をしているはず」
と、A氏は馬場代表が与党との連携を模索しているようだとみる。
一方、吉村知事は、自公や立憲民主党などとの連携について会見で問われ、
「今の段階でどこかと連携はない。連携するなら選挙で自民党の名前、立憲民主党の名前を書いとけばよかった、となる。維新と書いてくれた有権者の気持ち、期待と信頼を裏切ることになる」
と、自公や立憲との連携を明確に否定した。
A氏は党内の状況をこう説明する。
「党内はまさに『馬場おろし』の嵐だ。中心になっているのは、馬場代表と大阪府議時代からの仲間で、維新創成期から一緒にやっている浅田氏や東氏。代表選があれば東氏が出馬する意向のようだ。吉村知事も、発言などから東氏らに加勢しているとみられる」
松井一郎前代表の後任を決めるために行われた2022年8月の維新代表選では、松井氏が応援した馬場代表が勝利した。当初は、東氏も出馬する意向で、馬場代表の強敵とみられていた。だが、東氏は「党内抗争」の激化を恐れた中間派の説得に応じて、出馬を断念している。それだけに、
「かねて、大阪一辺倒の馬場代表の手法に東氏は否定的だった。今回こそという気持ちは強い」(A氏)
■自民幹部は「維新の分裂は歓迎だ」
維新の国会議員秘書の経験もある、選挙プランナーの藤川晋之助氏は、衆院選の前から、
「維新は現有から5議席減らせば、党内政局になる」
と語っていたが、現実となりつつある。藤川氏はこう話す。
「維新が大阪組と国政組、2つに割れることは十分に考えられる。馬場代表の大阪組が主導すれば、自公との連立参加がありうるかもしれない。理由は来年の万博成功とIRの早期推進で、この2つがあれば連立を組む大義だと馬場代表はじめ大阪組は考えているようだ。これに対して国政組は、自公との連立は絶対に受け入れられない。逆に立憲民主党と共同歩調をとるべきと主張する声もかなりある」
維新の分裂はこれまで2度あった。旧日本維新の会は2014年に創設者の橋下徹共同代表(当時)のグループと、石原慎太郎共同代表(当時)のグループが分党という形で分裂。翌15年には橋下氏や松井氏ら“大阪系”グループと旧民主党出身者らのグループが路線対立によって分裂している。
自民党の幹部に維新の「お家騒動」について聞くと、
「維新が割れて、馬場代表が20人くらい引き連れてうちに来てくれたら歓迎だ。大阪で維新とぶつかり全敗した公明党は嫌でしょうが、与党を維持するためには仕方ないので説得しますよ。見返りに馬場代表に万博担当大臣程度の待遇でよければ、すぐにでもという思いだ」
と期待を寄せた。
A氏は言う。
「大阪組と国政組の対立で、維新の3度目の分裂になりそうだ。唯一、解決できるのは吉村知事が代表選に出馬して圧勝し、維新のトップになること。吉村知事の人気と発信力には誰も及ばないので、1つにならざるを得ない。吉村知事が立ち上がるかどうかに維新の存亡がかかっている」
(AERA dot.編集部・今西憲之)
今西憲之
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