( 229714 )  2024/11/03 16:51:42  
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働き方改革や組織変革を支援してきた沢渡あまねさんは、「人が辞めていく職場」には共通する時代遅れな文化や慣習があり、それらを見直す必要があると指摘している。

音楽を聴くことが不真面目とされる職場もあるが、音楽を聴きながら仕事をすることには集中力向上やリラックス効果、行動を促す効果などがあり、職場の雰囲気を明るくしコミュニケーションを促す場合もある。

上位者が不在のときに音楽を流したり、歌のない音楽を流すことで職場の文化を変える試みも紹介されている。

音楽が聴きながら書かれたこの記事は、『組織の体質を現場から変える100の方法』からの一部を抜粋・編集したものである。

(要約)

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音楽を聴くことが不真面目とされていないか?(イラスト:ナカオテッペイ) 

 

 「あなたの職場では、音楽を聴くことが不真面目とされていませんか?」 

そう語るのは、これまでに400以上の企業や自治体等で、働き方改革、組織変革の支援をしてきた沢渡あまねさん。その活動のなかで、「人が辞めていく職場」には共通する時代遅れな文化や慣習があり、それらを見直していくことで組織全体の体質を変える必要があると気づきました。 

その方法をまとめたのが、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』です。社員、取引先、お客様、あらゆる人を遠ざける「時代遅れな文化」を変えるためにできる、抽象論ではない「具体策が満載」だと話題。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、「音楽が禁止された職場」の問題点について指摘します。 

 

● 音楽を聴いて仕事するのが不真面目とされる組織 

 

 イヤホンをつけて好きな音楽を聴いて仕事したり、フロアに音楽を流したり。音楽を聴きながら仕事をすることができる職場がある。 

 

 その一方で、「音楽を聴きながら仕事をするなんて不真面目だ」と言う人もいる。もちろんお客さんと接する職場においては、フロアのBGMはともかくとして個々がイヤホンで耳を塞(ふさ)いでいては何かと都合が悪い。異音を察知して危険を回避しなければならない現場では、音楽が雑音となり安全・安心を妨げるリスクにもなりうる。 

 

 「耳を塞がれていると話しかけにくい」など、コミュニケーションの阻害を指摘する声もあるだろう。 

 

● 職場で音楽を聴く/流すメリット 

 

 職場で音楽を聴いたり流したりすることについては、賛成、反対、いずれの意見にも合理性がある。聴覚にも個々の特性があり、音楽が流れていると仕事に集中できない人もいる。そのような人たちへの配慮も必要だ。 

 

 その上で、ここでは音楽を聴きながら仕事をするメリットに注目したい。 

 

 ・集中力が高まる 

 ・音楽に合わせて、作業をリズミカルに行える 

 ・曲の長さに合わせたタイムマネジメントがしやすく生産性が上がる 

 ・リラックス効果をもたらす 

 ・活気ある行動や動作を誘発する(曲につられて歩行速度が速く/遅くなるなど) 

 個人がイヤホンで聴く場合は個の尊重。フロアで音楽を流す場合においては全体の場創り、雰囲気創りなどの意義もある。 

 

 「音楽を聴きながらのほうがPC作業が捗(はかど)る」 

「思考が行き詰まったとき、音楽を聴きながらお茶を飲むとリフレッシュできて新たな発想が浮かぶ」 

 

 そんな声もある。 

 

 工場でも音楽を流していることがある。曲に合わせてテンポよく作業を行うことができ、曲と作業のズレが発生することで生産の遅れやトラブルを皆が認識しやすくなる。異常発生時や、進捗遅れが生じているときにはアップテンポの曲を流し、危機感や緊迫感を高めている現場もある。 

 

 このように、音楽には人の行動を促す効果もあるのだ。 

 

● シーンとした職場がもたらす体質 

 

 とくに大きいのがコミュニケーションにおける効果だ。 

 

 一切の物音がしない環境では、仕事で疑問があったときやトラブルが起きたとき、隣席の人に相談するのも憚られる。会話が周囲に筒抜けになってしまうからだ。 

 

 最悪の場合、「そんなことも知らないのか」「何をやっているんだ」などと思われるのを恐れ、ミスを隠したり、独断的な行動をしたりする体質に変わっていく。話す際は別の場所や個室に移動するなど、おのずとクローズドなコミュニケーションが主体となっていく。当然、情報の共有もなされないだろう。望ましくないさまざまな体質を生み出していく。 

 

 その点、BGMがあったほうが人々の気持ちは明るくなり、コミュニケーションが誘発されたり、リラックスして仕事に集中できたりするメリットがある。 

 

 

 音楽を聴きながら仕事ができる環境や空気を創っていきたいならば、次の2つを試してみてはいかがだろう。 

 

● 上位者が不在のときに音楽を流してみる 

 

 音楽否定派の上位者に、面と向かって音楽の効果を力説しても受け入れてもらえないかもしれない。 

 

 また、皆が忙しくギスギスしているときに「音楽を流しましょう」とは言いにくいだろう。ましてや、突然イヤホンをして音楽を聴き始めたら、協調性のない人、空気を読まない人と思われイヤな顔をされてしまうだろう。 

 

 そこでまずは、下記のようなタイミングで提案して職場で音楽を嗜む文化を育んでみてはどうだろう。 

 

 上位者が休暇や出張で不在のときに「音楽でもかけましょうか」と言って、やわらかめの音楽を流してみる 

 繁忙期が一段落した頃合い、お盆時期など仕事が少なく穏やかなムードなときを見計らって「たまにはリラックスしませんか?」と音楽を流す 

● 歌のない音楽を流してみる 

 

 職場の音楽を拒む人の中には、歌詞が気になるという人もいる。言葉が情報として頭に入ってくるから思考や作業を邪魔してしまう。 

 

 そこでまずは、歌のないインストゥルメンタル(クラシック音楽など)などから流してみよう。 

 

 最近ではスターバックスコーヒーの店内や、ホテルのフロントや客室で流れている曲を厳選した「BGM集」も発売・公開されている。 

 

 「スタバっぽいBGMを流しましょう!」 

 

 などと切り出し、流してみるのもよい。「たまには、こういうのもイイね」と、そこから理解が生まれ、個人で音楽を聴きながら仕事をしても文句を言われない文化を創れるかもしれない。 

 

 なお、筆者はこの原稿をアニメ「ゆるキャン△」のサウンドトラックを聴きながら書いている。 

 

 一歩踏みだす! ・上位者の不在時や、仕事の閑散時期などに、やわらかめの音楽から流してみる 

 ・歌のない曲をBGMとして流してみる  

 

 (本稿は、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です) 

 

沢渡あまね(さわたり・あまね) 

作家/企業顧問/ワークスタイル&組織開発/『組織変革Lab』『あいしずHR』『越境学習の聖地・浜松』主宰/あまねキャリア株式会社CEO/株式会社NOKIOO顧問/プロティアン・キャリア協会アンバサダー/DX白書2023有識者委員。日産自動車、NTTデータなどを経て現職。400以上の企業・自治体・官公庁で、働き方改革、組織変革、マネジメント変革の支援・講演および執筆・メディア出演を行う。『チームの生産性をあげる。』(ダイヤモンド社)、『職場の問題地図』(技術評論社)、『「推される部署」になろう』(インプレス)など著書多数。 

 

沢渡あまね 

 

 

 
 

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