( 230739 ) 2024/11/06 16:52:27 1 00 1995年まで遡る中国の不動産バブルは、国民の住宅所有欲求を背景に発展しました。 |
( 230741 ) 2024/11/06 16:52:27 0 00 photo by gettyimages
中国の不動産バブルの端緒は1995年までさかのぼる。当時、中央政府は“都市不動産管理法”を公布。それによって、地方政府は土地の使用権を不動産デベロッパーに売却できるようになった。
【写真】これはヤバすぎる…!中国で「100年に一度の大洪水」のようす
中国の国民は、自分の家を持ちたいという欲求が強く、自宅を手に入れるという夢を実現しようとマンションなどを買い求めた。1995年から2022年まで、中国の国内総貯蓄率は平均で44.6%と世界的にも高く、うち7割の貯蓄は価格上昇期待の高い不動産分野に流入していった。
その結果が、大規模な不動産バブルの発生だった。
2020年8月に政府が“3つのレッドライン”を導入し、不動産業者の借り入れを抑制し始めるとバブルは崩壊し始めた。2024年9月時点で、不動産市況の悪化に歯止めはかかっていない。それに伴い、中国経済の成長率は低下傾向にある。
現在のマンション在庫は6000万戸、処理に10年を要するといわれるほどの供給過剰状態だ。乱立するタワーマンションも多くが売れ残っている。
前編記事〈「中国の激安製品」お断りの国が続々と…切り札なき中国経済に聞こえ始めた「崩壊の足音」〉で伝えた通り、こうした状況のなかで中国は外需を取り込むための投資と生産を重視している。
だが、中国は投資と生産ではなく、需要の不足を解消しなければならない。参考になるのは、資産バブル崩壊後のわが国経済の教訓かもしれない。
大規模なバブルが崩壊すると、経済の立て直しに主に3つの方策が必要になる。
まず、金融・財政政策を発動して目先の景気を下支えする。二つ目は、不良債権処理を進め金融システムの安定性を確保する。三つめは、規制緩和を進めて企業の活力を高め、新しいモノやサービスを生み出す。人々が欲しいと思ってしまうモノやサービスが増えれば経済は成長できるからだ。
1997年度までわが国は財政支出を増やし、公共事業を積み増した。1999年2月に日銀はゼロ金利政策、2001年3月に量的緩和政策を開始するなど金融緩和を進めた。1992年ごろから顕在化した不良債権問題の処理は遅れ、1997年に金融システム不安が起きた。2002年の“金融再生プログラム”によって、不良債権処理は進んだ。
ところが、わが国の政策運営に関して、3つ目の規制緩和などでの需要創出は難しく、日本経済は長期停滞に陥った。
今年9月以降、中国は金融・財政政策を打ち、金融システムの安定維持策も実施した。ただ、中国政府は依然として投資と生産を増やし、輸出を伸ばそうとしている。
中国の経済政策立案を支えた政策運営のエキスパートが政府の主要ポストから外れ、必要な政策の立案・実行が難しくなっているとみられる。現指導部が統制を強めて政治基盤の強化を優先しているため、経済問題に目が向かいづらいのかもしれない。
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9月、習近平国家主席は、閣僚に経済成長目標(2024年は5%前後)の実現に“努力”するよう指示した。また、政府は国民に倹約を求めた。
中国政府は、規制緩和や構造改革を進めて消費を増やし、経済のモデルチェンジをすることの重要性は感じていないのかもしれない。
現在の状況を考えると、中国が新しい需要を創出し経済成長率を高めることは可能だろう。国有企業などの民営化を進め、ガバナンス体制を整備する。
また、IT先端企業などへの締め付けは緩め、新しい発想の実現を支援する。1978年以降の改革開放路線はこうした考えを実行し、中国の高成長時代につながった。ティックトックなどの急成長は、中国の起業家の成長や野心が今なお旺盛であることを示す。
政府が、成長期待の高い分野にヒト、モノ、カネを再配分しやすい環境を整備できれば、状況は変化する可能性はある。
高付加価値のモノやサービスを提供する企業は増え、雇用環境は改善し個人消費は上向くだろう。それは、経済成長率の回復、不良債権処理に重要だ。年金など所得再分配策のためにも、消費を増やして経済のパイを大きくすることは必要だ。
しかし、今のところ、中国政府は需要の創出より、供給サイドを重視している。
過剰生産能力がある中で投資を増やしても、不良債権を減らすことは難しい。その状況が続くと、すう勢として経済成長率は低下し、デフレ環境も深刻化するはずだ。
投資と生産の重視から消費拡大へ政策の転換が遅れれば、わが国以上に厳しい長期停滞に中国経済が陥る恐れは高まることも懸念される。
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【さらに詳しく】〈中国はもう無理かも…“補助金ジャブジャブEV”に苦戦を強いられたトヨタ、日産、ホンダが狙う「次なるドル箱市場」〉では、血みどろの“EV地獄”と化す中国の惨状を解説しています。
真壁 昭夫(多摩大学特別招聘教授)
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