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10月27日の衆院選で自公過半数割れが起き、注目を集めるのが国民民主党代表の玉木雄一郎氏。

選挙で勢力を4倍に増やし、石破茂首相を支える存在として注目されている。

玉木氏は連立や部分連合を否定し、個別の政策ごとに与党と協議する方針を示している。

国民民主側は経済対策や復旧・復興を要求し、自民党は要求を検討する姿勢を示している。

玉木氏は政策実現を最優先し、所得税の「103万円の壁」引き上げを強く訴えている。

自民党は妥協案として50万円程度の引き上げを検討している。

外国特派員協会での記者会見でも経済政策などについて明快に説明し、高い評価を受けている。

(要約)

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(写真:Bloomberg) 

 

 「10・27衆院選」での自公過半数割れを受け、混迷政局のキーパーソンとして国民的注目を集めているのが、玉木雄一郎・国民民主党代表(55)だ。選挙戦で「対決より解決」「若者の手取りを増やす」と訴えて勢力を4倍増(28議席)させ、窮地の石破茂首相の“救いの神”ともなり得る存在となっているからだ。 

 

 一躍「時の人」となった玉木氏。すぐさまインタビューなどで「ポストは求めず、国民に約束した政策実現に邁進する」として自公政権との連立やいわゆる部分連合を否定した上で、個別の政策ごとに与党と協議して、その結果次第で関連法案などへの賛否を決める方針を打ち出した。 

 

 玉木氏としては、自公だけでなく立憲民主など野党各党に対しても、経済対策や政治改革などでの主張を実現すべく、多角的な協議を展開する構えだ。 

 

 ただ、政権の維持と安定化を目指す自民党は、手練手管を駆使しての「玉木氏取り込み」を狙っており、「結果的に国民民主が石破政権の補完勢力とみなされる状況となれば、自民の使い捨てにされるだけ」(政治ジャーナリスト)との厳しい指摘も相次ぐ。 

 

 これに対し玉木氏は、「我々の対応が、いわゆる“宙づり国会”での政局混乱を収める新たな政治状況をつくることになる」として、連日のテレビ出演やこまめなSNS発信での存在アピールに余念がなく、国民的期待の大きさがそれを後押ししているのが実状だ。 

 

■国民民主側の要求内容 

 

 そうした状況を受け、自民、国民民主両党は8日午前、小野寺五典、浜口誠両政調会長が国会内で会談し、経済対策をめぐる協議を本格化させた。 

 

 その中で浜口氏ら国民民主側は①「103万円の壁」については、年末調整による補塡のほか、壁越えによる手取り収入減対策をする企業を政府が支援する「年収の壁・支援強化パッケージ」の拡充②ガソリン税を一部軽減する「トリガー条項」の凍結解除や電気代、ガス代の引き下げ③能登半島の復旧・復興に向け、体育館へのエアコン設置、災害公営住宅の用地費・造成費支援、能登半島国定公園内の被災設備の復旧費に対する災害対応特例の適用――などを要求した。 

 

 

 これに対し自民側は「今日は要求を聞くにとどめ、改めて党内で関係者と詰めたうえで回答したい」と今後、政調会長レベルでの協議を通じて結論を出す考えを伝え、国民民主側も了承した。さらに、石破首相と玉木代表が11日の党首会談の中で政治改革など他の課題と合わせて、経済政策についても意見交換することも確認した。 

 

 これに先立ち、国民民主は6日、自民党への要望項目とりまとめのための会合を開催。毎日新聞の記事によると、その中で玉木氏は「抜本的な改正は税制改正などを伴うが、前倒しで補正対応できるものについてはエネルギー価格の高騰対策も含め、速やかに一つ一つ実現につなげていきたい」と述べ、政府が今月末にも策定する今年度補正予算案への要求内容盛り込みに強い意欲を示した。 

 

■ポスト求めず、「年収の壁」大幅引き上げを最優先 

 

 そもそも、衆院選を通じて玉木氏が指摘した「103万円の壁」とは、所得税がかかり始める年収103万円の課税基準のことだ。その内容は、超高所得者以外が対象の基礎控除(48万円)と、給与額に応じて一定額を差し引く給与所得控除(55万円)の合計である103万円を超える年収になると、所得税の支払いが生じることを指している。 

 

 例えば年収105万円のパート従業員の場合、控除分の103万円を差し引いた収入2万円に対し、所得税5%分(1000円)が課税されるなど、手取り収入が減ることがパートやアルバイト従業員の働き控えにつながる「年収の壁」の1つとなっている。 

 

 しかも、所得税の支払いだけでなく、103万円を配偶者手当の支払い基準とする企業もあるため、収入減も意識して就業調整する世帯もあるとされる。この「年収の壁」には、他にも企業規模などに応じて社会保険料がかかり始める「106万円の壁」や「130万円の壁」などがあるが、国民民主は今回「103万円の壁」に絞って、自民と交渉する方針だ。 

 

 玉木氏は衆院選での議席4倍増を受け、時事通信のインタビューなどで、「手取りを増やす経済政策を訴え、若い人、現役世代にメッセージが明確に届いたことが議席を増やした要因だ。われわれは政策本位で、協力できるところは協力する」と選挙公約の実現を最優先する考えを繰り返してきた。 

 

 

 これに対し永田町では「玉木首相」誕生の可能性を指摘する声も出たが、玉木氏は「(野党に動きが出ても)乗らない。参院は自民、公明両党が過半数を持っており、それを踏まえて自民党が国民民主と政策協議をしようと決めてくれたのだから、これを動かしつつ、しっかり政策実現をしたい。今はポストではなく、政策実現が欲しい」と自民・公明両党との協議を最優先する立場を強調した。 

 

 その上で玉木氏は政策協議で妥協の可能性についても「(公約を)100%できるとは思っていない。ただ、手取りを増やすと訴え、(議席を)4倍にした以上は手取りを増やさないと駄目だ。(所得税負担が生じる)103万円の控除額を引き上げることは譲れない」とし、178万円という引き上げ額についても「まずは178万円。最初から発射台を下げる話はしない」と語った。 

 

■自民税調は「50万円程度の引き上げ」を検討 

 

 一方、8日の政調会長レベルでの協議に先立ち、自民党税制調査会(宮沢洋一会長)は6日、党本部で「インナー」と呼ばれる幹部の非公式会合を開き、2025年度税制改正に向け、国民民主が求める「年収103万円の壁」の是正を含む議論を開始した。 

 

 宮沢氏は旧大蔵省出身で「税のスペシャリスト」(自民幹部)とされ、会合後、「出席者から社会保険料が発生する106万円や130万円の方が壁なんだろうとの話もあった」と説明した。その上で「(自公の)2党だけでは法律、税法が通らない。国会で可決できる案をつくるのは大変な作業だ」と協議の難しさを強調した。 

 

 さらに、関係者からは「178万円は無理だが、落とし所として50万円程度の引き上げは検討の余地がある」との妥協案も浮上しており、水面下での駆け引きが続いている。 

 

■野田氏より明快な玉木解説で高評価―外国特派員協会 

 

 そうした中、玉木氏は8日午前10時から外国特派員協会で記者会見し、内外の記者団からの質疑に応じた。 

 

 その中で、米大統領再登板が決まったトランプ次期大統領の関税政策による日本の経済政策への影響について見解を求められた玉木氏は、「経済がより過熱しインフレになりがち」と分析。 

 

 さらに、日銀の金融政策についても「実質賃金が安定的にプラスになるまでは変更すべきではない」と述べ、来春以降に利上げを先送りすべきとの見解を示した。 

 

 この会見はネットでも大きな反響を呼び、「頑張れタマキング!」などの激励コメントが相次いだ。 

 

泉 宏 :政治ジャーナリスト 

 

 

 
 

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