( 232724 )  2024/11/12 02:16:36  
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世界の資産市場は高値のバブル状態であり、このバブルがはじけると「グレートリセット」と呼ばれる構造的変化が訪れる。

その後の世界では自産自消や地産地消が中心となり、食料やエネルギーの生産が重要視される小さなクラスターが形成されると予想されている。

また、ベーシックインカムの導入により低所得者も自分の好きな仕事を続けることができる可能性がある。

ただし、高所得を得るグループや成長企業への投資で高い収益を得るグループも存在するという著者の予測もある。

将来の株式や不動産市場に関しては意見が分かれており、現段階では正しい予測をするのは難しいと指摘されている。

しかし、本書は構造転換後の世界について考える上で重要な視点を提供しているとして、早めに読むべきだと推奨されている。

(要約)

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経済・社会の構造的変化「グレートリセット」がどんな未来をもたらすか(写真:イメージマート) 

 

【書評】『グレートリセット後の世界をどう生きるか 激変する金融、不動産市場』/長嶋修・著/小学館新書/990円 

【評者】森永卓郎(経済アナリスト) 

 

【画像】長嶋修・著『グレートリセット後の世界をどう生きるか 激変する金融、不動産市場』の表紙 

 

 いま世界の資産市場は、とてつもない高値を付ける全面的バブル状態にあり、このバブルがはじけると、「グレートリセット」と呼ぶべき経済・社会の構造的変化が訪れる。著者の見立ては、いまの評論家の見立ての主流ではないが、私は全面的に賛成だ。 

 

 ていねいにデータを見ていけば、異常な資産価格が付いていることは間違いないし、地球環境の破壊や許容できないほどの格差拡大など、グローバル資本主義が限界を迎えていることは、間違いないからだ。 

 

 問題は、グレートリセット後にどのような経済・社会が訪れるのかということだ。私は、40年以上続いたグローバル資本主義の真逆のことが起きると考えている。食料やエネルギーは自産自消や地産地消が中心となり、大都市集中が解消して、域内で経済が循環する小さなクラスターが無数に形成されるというイメージだ。 

 

 著者の予測でも、ベーシックインカムの導入で、お金に縛られずに、低所得だけれど好きな仕事を続ける人が増えていくという部分は、私の予測に近い。しかし、意外だったのは、著者があと二つのグループの誕生を見込んでいることだ。 

 

 一つは、高い能力を存分に発揮して高所得を得るグループ。そして、厳選される成長企業に投資をすることによって、高い投資収益を得るグループだ。私はそうしたグループの存在を想定していなかった。だから、将来の株式や大都市の不動産は、無価値に近いところまで暴落し、二度と戻らないと考えていたのだが、著者の見立てに従えば、すでに高額の不動産や株式が、グレートリセット後にも値上がりを続ける可能性があることになる。 

 

 正直言うと、どちらの見立てが正しいのかは、分からない。グレートリセット後の世界を見た人は、まだ誰もいないからだ。しかし、本書が構造転換後の世界を考えるときに、重要な視点を与えてくれることは、間違いない。だから早く読んでおくべきだろう。グレートリセットは、もはや目前に控えているからだ。 

 

※週刊ポスト2024年11月8・15日号 

 

 

 
 

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