( 233189 )  2024/11/13 16:23:29  
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1982年3月に登場した「青春18きっぷ」が大きく仕様変更された。

以前の「5回分1枚」から「5日間連続」もしくは「3日間連続」に変更され、1人でしか使用できなくなった。

使用日は事前に決める必要があるが、自動改札機にも対応するようになった。

JR各社が人手不足の中、自動化を進めており、有人改札は減っている。

これにより、「青春18きっぷ」も大幅な変更が加わった。

1983年に名称を変更して以来、鉄道事情も様変わりしており、夜行列車などの便も減っている。

リニューアルされた「青春18きっぷ」は、夜行列車を利用せずにネットカフェなどに宿泊しながら旅をする苦労が増えた。

使い方も難しくなり、3日や5日の連続休暇を取ることも難しい状況が続いている。

(要約)

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1982年3月に「青春18のびのびきっぷ」として誕生 

 

 この冬休み期間から、「青春18きっぷ」の仕様が大きく変更される。 

 

 かいつまんで説明すると、「5回分1枚」から「5日間連続」もしくは「3日間連続」になり、1人でしか使えなくなる。使用する日もあらかじめ決めておく必要がある。しかし、自動改札機に対応するようになる。 

 

【画像】昔は夜行列車で旅した人もいるのでは 

 

 大きな変化ゆえ、SNSなどではハレーションはすごい。 

 

 JR側の説明からすると、有人改札での対応を減らすために自動改札機対応にし、その関係で仕様変更をしたということである。 

 

 仕方がない。仕方がない、のだが......。 

 

■なんでもかんでも自動化 

 

 たしかに有人改札は減っており、しかも大きな駅では利用者対応で混雑していることが多い。インバウンド観光客が有人改札に並んでいるところをよく見る。その状況の中で、「青春18きっぷ」に日付入りのスタンプを押すことや、駅から出るときの確認などをするのは手間である。 

 

 JR各社は、人手不足もあり、なんでもかんでも自動化しようとしている。「みどりの窓口」はどんどん減らされ、「指定席券売機」や、あるいは「えきねっと」などのインターネット予約システムを使用するようにと呼びかけている。 

 

 改札はあっても有人対応はしておらず、自動改札のみというところもよく見かける。ホームドアなどは、安全対応の駅係員を減らすためにも実は有効である。ワンマン運転の区間は増え、乗務員までも減らすことになった。 

 

 「青春18きっぷ」の大規模仕様変更も、そういった流れの中で対人サービスをどう減らすかを考えた上でのことといえる。 

 

 それゆえにこれまでの利便性を犠牲にしてきた。 

 

 1982年3月に「青春18のびのびきっぷ」として誕生。83年春から「青春18きっぷ」に名称変更し、今日に至る。当初は2日連続券と1日券数枚という組み合わせだったものの、84年夏から1日券5枚というものになった。 

 

 当然ながら、金券ショップでのばら売りが問題になった。この対応のために、96年春から5回分1枚になった。ただ、2日使用と3日使用を組み合わせたり、期間内なら5日連続しない日に使用したりすることも可能だった。なお、それでも数回使用したものを金券ショップに売る人は、いたのだが......。 

 

 もっとも、鉄道のほうの事情も変わっていった。 

 

 

 「青春18きっぷ」ができた当初は、各地に長距離を走る普通列車が残っていた。客車列車の場合もあった。 

 

 夜行の普通列車を使用すると、長距離を格安で移動することができるようになり、お得感は大きいものがあった。 

 

 特急や急行に使用されていた車両を改造した普通列車や、深夜帯を走る長距離夜行列車などが多く存在し、時間はかかるけど快適に長距離を移動できた。 

 

 JRになると、各地で夜行の座席指定快速列車が運行され、格安の座席指定券を買えば「青春18きっぷ」で乗ることが可能だった。「ムーンライト九州」など、「青春18きっぷ」の時期に合わせた快速列車もあった。 

 

 いまは、こういった列車はもうない。しかも、地方の普通列車は、運行区間が短くなっていった。 

 

 さらに、整備新幹線が各地に延伸したことにあわせて、並行在来線が第三セクター化された。きっぷの値段は変わらず、「ステルス値上げ」のような状態になった。 

 

 「青春18きっぷ」ができたときから、大きく事情が変わっていった。「昔は大垣行きの夜行列車などを利用したよなあ」と思い出す人も多いと思われる。そういう列車は「青春18きっぷ」の利用者にとって便利だった。 

 

 リニューアルした「青春18きっぷ」は、3日もしくは5日連続というしばりがある。これなら、せめて夜行の普通・快速列車があればと思うものの、いまはない。移動しながらホテルなどに泊まっていくしかない。2泊3日、もしくは4泊5日の旅となる。 

 

 シャワーのあるネットカフェなどに泊まり続ける、というのはあまりにもきつすぎる。格安のビジネスホテルは、いまは人気が高く、予約が取りにくい。コロナ禍終了後多くの人が各地に行くようになり、宿泊施設の確保が難しくなっている現状がある。かなり計画的に利用しなければならなくなっている。 

 

 3日ならともかく、5日の連続した休みを取れるか、という課題もある。 

 

 難題だ。 

 

 「青春18きっぷ」をめぐる状況は、変わり続けている。その上でどんどん使いにくくなっている。 

 

 「青春18きっぷ」の使い方を考えるのは、かなりの難問になってしまった。(小林拓矢) 

 

筆者プロフィール 

 

こばやし・たくや/1979年山梨県甲府市生まれ。鉄道などを中心にフリーライターとして執筆活動を行っている。著書『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。 

 

 

 
 

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