( 234136 ) 2024/12/16 18:36:59 0 00 (写真:Sakura Ikkyo/PIXTA)
公明党と国民民主党の関係がぐんと近くなったようだ。両党は12月10日、政治資金の監査などを行う第三者機関を設置する法案を衆議院に共同提出した。
法案の正式名称は「政治資金監視委員会等の設置その他の政治資金の透明性を確保するための措置等に関する法律案」で、第三者機関である「政治資金監視委員会」を国会に設置し、国会議員に関する政治資金の流れを監視することになる。
■国民民主の原案に公明党が「乗った」
収支報告書に不記載や虚偽の表示があれば、訂正のための措置も講じることができるし、同委員会が要請すれば、国政調査権を行使する両院協議会の設置も可能になる。国民民主党の原案に、公明党が乗った形になっている。
ちなみに公明党は、政務活動費の廃止とともに、立ち入り調査権限を持つ第三者機関「政治資金監督委員会」を政府に設置し、国会の議決で指名された5人を委員とする法案を準備していた。同委員会が求める報告や調査を拒否した場合、罰則を科すことも検討された。
「公明党は当初、調査機関を三条委員会(国家行政組織法第3条に基づいて外局としておかれる独立性が高い行政委員会)といった形で行政府に置くという考えだった。しかし第三者機関が果たす役割については、我々と同じような考えであることから、設置場所は我々が主張してきた国会にして、公明党が検討してきたさまざまな権限を法案の中に含める形とし、共同提出に至った」
法案提出の経緯について、国民民主党の古川元久代表代行がこう説明したが、続いて古川氏が述べた言葉こそが、2党の将来を示唆しているのかもしれない。
「私たちは野党で公明党は与党だが、そういう立場を超えて、国民の信頼を回復できるような政治の絆を作っていく。その第一歩がこの政治資金監視委員会設置法案だ」
そもそも公明党が連立を組む自民党以外と法案を共同提出するのは、異例中の異例だ。だが10月の衆院選で8議席を減らし、24議席にとどまった公明党にとって、背に腹は代えられない事情がある。
というのも、衆議院で政府に中野洋昌国交大臣、輿水恵一復興副大臣、鰐淵洋子厚労副大臣、そして金城泰邦文科大臣政務官と庄子賢一農水大臣政務官の5人を出しているため、衆議院では単独で法案を提出できる21人を満たせなくなったからだ。
■自民党案は公明党にはのめない内容だった
なお自民党は独自で政治資金規正法改正案を提出し、政治資金を監視する「政治資金委員会」を国会に設置するとともに、「政務活動費」の廃止を盛り込んでいる。しかし外交機密などの使途公開に特に配慮が必要な支出を「公開方法工夫支出」として非公開とするなど、その内容は連立を組む公明党にものめないものだった。
実際のところ自公には、以前のような阿吽の呼吸はなくなっている。たとえば大島理森元衆院議長は自民党国対委員長時代、公明党の漆原良夫国対委員長と「悪代官と越後屋」と言われたほどの緊密な関係を築いていた。
「悪代官」とは歌舞伎俳優のような顔立ちの大島氏のことで、「越後屋」とは新潟県出身の漆原氏を指したが、このように揶揄されるほどの密接な関係は今の自公に存在しない。
しかも10月の衆院選で公明党は、政治と金問題を抱える自民党に引きずり込まれた形で大敗した。11の小選挙区で候補を擁立したが、そのうち兵庫2区と8区、東京29区と広島3区の4選挙区しか勝てなかった。
「常勝関西」の大阪では4選挙区全てで敗退し、石井啓一前代表も埼玉14区で落選。比例票についても596万4415票しか獲得できず、ついに600万票を割ってしまった。
■10月の選挙では電話をかけても「冷たかった」
公明党関係者は力なくこう語った。
「公明党は比例復活ができない自民党の“裏金議員”33人に推薦を出した。また自民党の公認ではなかったが、10増10減で石井前代表に大票田を譲った自民党の三ツ林裕巳氏と西村康稔氏の2人も推薦した。こうしたことが、有権者の理解を得られなかったのだろう」。さらにこう加えた。
「これまでの選挙なら、有権者に投票を呼びかける電話をかけると、『もう投票しましたよ』と好意的な反応が返ってきた。しかし10月の衆院選では、電話をかけても反応が冷たかった」
それは来年の参議院選に大きく影響するに違いない。そうでなくても支持母体である創価学会は高齢化が進んで選挙の運動力が低下した上、これまでの個人的な集会を中心とした選挙活動がコロナ禍で大きく変容した。
とりわけ参院兵庫選挙区では、公明党は厳しい対応に迫られる。
10月の衆院選で自民党は53万2662票、日本維新の会は44万6210票、立憲民主党は41万1706票の比例票を獲得したが、公明党が得た比例票は28万346票にすぎなかった。参院兵庫選挙区の定数は3議席だから、公明党は絶望的だ。
5年前の参議院選では、公明党の高橋光男氏は50万3790票を獲得して当選を果たしているが、それには特殊な事情があった。この時、定数2で与野党が議席を分け合っていた広島選挙区で、自民党はベテランの溝手顕正氏に加えて新人の河井案里氏を擁立したのだ。
なんとか河井氏を当選させたい当時の安倍政権は、広島県内の公明票を河井氏に入れてもらう代償として、兵庫県内の自民票を公明党に差し出し、高橋氏は当選。
だが、自民党の加田裕之氏は46万6161票しか獲得できず、次点の立憲民主党の候補に3万1315票差まで迫られた。当時官房長官だった菅義偉元首相は、「ちょっと削りすぎたかな」と反省の意を周囲に漏らしたという。
■次の参院選で選挙協力をすることになるのか
2025年の参議院選では自民党からの票はさほど望めない。とすれば、注目すべきは19万8941票を獲得した国民民主党で、公明党にとってかつては新進党(参議院では平成会)として行動を共にした仲間でもある。また兵庫県には非自民で結集した「連合・五党協議会」の歴史もある。
もっとも県内での立憲民主党と国民民主党との関係は良好で、5年前の参議院選でも、国民民主党は立憲民主党の公認候補を応援した。しかし今や国民民主党の立ち位置は、より与党に近くなった。衆議院で28議席を得て以来、自公との政策協議の機会は確実に増えている。
国民民主党は与党入りをしないまでも、政策実現のために与党とは近い関係を維持していくだろう。とすれば、選挙でも協力関係を結んでもおかしくない。
自民党が1強だった時代は徐々に去りつつある。もし各政党が政策を軸に動くなら、政治は大きく変わるはずだ。この度の公明党と国民民主党の法案の共同提出は、その端緒となりえるのか。
安積 明子 :ジャーナリスト
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