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日産自動車は米国市場での販売不振を受け、営業利益と最終利益が90%以上減少したことを発表し、世界的に生産能力を20%削減し、9000人の人員を削減することを決定した。

日本市場では特にハイブリッド車の不足が問題になっており、日産車のラインアップが限られており、競合との差が広がっている。

10年前と比較すると、車種のリストラが進んでおり、現在は主力車種のセレナとノートなど一部を除いて厳しい状況にある。

特にセダン市場の低迷やSUVの価格の高さが課題となっている。

販売現場の負担が増大し、市場での競争力維持が難しい状況が続いている。

(要約)

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カスタムカーの展示会「東京オートサロン」に出店した日産自動車のロゴマーク。千葉市美浜区の幕張メッセ。2022年1月14日撮影(画像:時事) 

 

 日産自動車は11月、2023年4月から9月までの中間決算で、米国市場での販売不振などの影響を受け、営業利益と最終利益が90%以上減少したと発表した。この結果、同社は世界規模で生産能力を20%削減し、9000人の人員削減を行うことを決定した。 

 

 減益の主な要因は、販売台数の増加を狙って販売奨励金を増額したことに加え、現地市場で需要の高いハイブリッド車が不足している点だ。特に国内市場では、この問題が顕著に表れている。 

 

 現在、国内市場における日産車のラインアップは非常に限られており、魅力的なモデルが少ない。国内市場への注力が不足しているのではないかと感じさせる状況だ。 

 

 トヨタやホンダなどの競合と比較すると、その差は明らかで、特に目立っている。選択肢が限られているため、特定のカテゴリーで日産車を選ぶ機会自体が少なく、限られたラインアップの中でも主力車は数えるほどしかない。 

 

 本稿では、過去と現在の状況を比較し、日産ディーラーの営業マンが抱える課題について理解を深めてもらいたい。 

 

e-POWERを搭載した日産「ノート e-POWER」(画像:日産自動車) 

 

 現在、国内の日産ディーラーで購入できる新車のラインアップをご存じだろうか。以下にカテゴリー別に整理した。 

 

・電気自動車(EV):アリア、リーフ、サクラ、クリッパーEV 

・コンパクトカー:ノートオーラ、ノート 

・ミニバン、ワゴン:エルグランド、セレナ 

・SUV:エクストレイル、キックス 

・セダン:スカイライン 

・スポーツ:NISSAN GT-R、フェアレディZ 

・商用車:キャラバン、NV200バネット、AD、クリッパー(バン、トラック)、アトラス 

・軽自動車:ルークス、デイズ、クリッパーリオ 

 

 日産のウェブサイトでは、ノートとオーラを別の別枠として紹介し、ミニバンには商用車ベースのキャラバンやNV200バネットを含めている。このような方法は、あたかも「選択肢が多い」と感じさせる印象を与える。 

 

 一方、10年前の2013(平成25)年12月時点の日産車のラインアップはどうだったのか、インターネットで当時のウェブサイトをアーカイブしているサイトを見つけたので、それを参考にして確認してみた。 

 

・EV:リーフ、e-NV200 

・コンパクトカー:ジューク、ノート、ノートメダリスト、キューブ、マーチ 

・ミニバン、ワゴン:エルグランド、セレナ、ラフェスタハイウェイスター、ウイングロード 

・SUV:スカイラインクロスオーバー、ムラーノ、エクストレイル 

・セダン:シーマ、フーガ、スカイライン、ティアナ、シルフィ、ラティオ 

・スポーツ:GT-R、スカイラインクーペ、フェアレディZ 

・商用車:AD、ADエキスパート、NV350キャラバン、NV200バネット、バネットバン、NV100クリッパー、NT100クリッパー 

・軽自動車:デイズルークス、デイズ、モコ、NV100クリッパーリオ 

 

 これらを比較すると、10年間で大規模な車種のリストラが行われたことが明らかだ。特に、コンパクトカーは大幅に減少し、セダンは大衆向けの手頃な価格帯の車がほとんど姿を消した。 

 

 驚くべきことに、10年前と同じ型式の車が現在も販売されており、例えばエルグランドやスカイライン、GT-R、フェアレディZなどは改良が施されているものの、型式自体は変わっていない。 

 

 法規制に対応するための措置である部分もあるだろうが、このような状況では販売現場の負担が増し、国際的な競争力を維持するのは困難で、減収減益を招くのは避けられないだろう。 

 

 

日産自動車のロゴマーク(画像:EPA=時事) 

 

 この10年間で、国内の日産ディーラーの車種ラインアップは大幅に減少し、その影響は販売現場にも表れている。 

 

 最近、愛車のメンテナンスのために、筆者(宇野源一、元自動車ディーラー)が元勤務先を訪れ、担当営業マンであり当時の先輩から現状について話を聞いたところ、販売環境が非常に厳しいという回答を得た。 

 

 現在の日産の主力車種であるセレナ、ノート(オーラを含む)、軽自動車のデイズ・ルークスは商品力があり、一定の需要を確保している。しかし、それ以外の車種については厳しい状況が続いている。 

 

 特に、トヨタのアルファードやヴェルファイア、ホンダのオデッセイと競合するエルグランドは、車齢が長いため競争において不利な状況が多いという。エルグランドを好むユーザーには支持されているが、それ以外の層には響かないとのことだ。 

 

 さらに、根強いファンを持つセダン市場は依然として低迷しており、ティアナやシルフィといったミドルクラスセダンは既存顧客の代替車として提案しても効果が薄い。そのため、オーラをダウンサイジング車として提案するケースが増えているが、他社への流出を防ぐことは難しいという。 

 

 人気のスポーツタイプ多目的車(SUV)、エクストレイルやキックスも、e-POWER専売車であり価格が高いため、マツダやホンダへとくら替えされる事例が多いという。また、法人ユーザーに対する代替車提案にも困難をともない、セダン不足が加わることで、さらに状況は厳しくなっている。 

 

 かつてのように日産ブランドが信頼を得る時代は過ぎ、若手営業マンの多くが数年で退職してしまう現実があるようだ。 

 

日産自働車のウェブサイト(画像:日産自働車) 

 

 日産のラインアップには、国内で販売されていない車種が多く存在する。その一例として、 

 

「キックスのガソリン車」 

 

が挙げられる。先述の営業マンもいっていたが、長年エントリーモデルとして親しまれていたマーチが現在はラインアップにない状況だ。販売見込みが立たないとしても、国内市場向けに適したモデルを提供してほしいというのが販売現場の希望だ。 

 

 日本市場が縮小し、先行きが不透明な状況が続いているとはいえ、創業地である日本市場を再活性化するような車が登場することを期待している。日産ディーラーも、この思いを強く抱いているのではないだろうか。国内外で人気を誇る車種のデビューはもちろん重要だが、 

 

「技術の日産」 

 

として長年顧客に愛されてきた日産自動車の姿をもう一度見たいと、多くの関係者が願っている。 

 

宇野源一(元自動車ディーラー) 

 

 

 
 

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