( 234709 )  2024/12/17 18:11:40  
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「ジャパンモビリティショー」でBYDが日本初公開したU8というEVに注目が集まっていた。

日本メーカーは中国メーカーの強さを警戒し、中国市場で苦戦している状況が続いている。

日本メーカーだけでなく、VWやGMも中国市場で厳しい状況にあり、自動車産業全体が乗り越える戦略が求められている。

(要約)

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開幕を前に報道陣に公開された「ジャパンモビリティショー」。BYDのyang wang U8=2023年10月、東京都江東区の東京ビッグサイト(萩原悠久人撮影) 

 

旧知の日産自動車の役員と数年ぶりに再会したのは昨年10月末のことだった。場所は東京・有明の東京ビッグサイト。自動車ファンなら、もうお分かりだろうか。国内最大の自動車ショー「ジャパンモビリティショー」の会場である。 

 

東京モーターショーを衣替えしたこのショーで、多くの日本メーカーは次世代の電気自動車(EV)に関する新車両、新技術を目玉に据えた。そんな日本メーカーの意気込みを上回る勢いを感じさせたのが中国のEV大手、比亜迪(BYD)だった。 

 

中でも来場者の注目を集めたのが、日本初公開となったオフロード仕様のスポーツタイプ多目的車(SUV)「U8」だ。独立した4つのモーターで4輪それぞれを制御する駆動方式を採用しており、左右のタイヤを逆回転させることで、その場で360度回転する「タンクターン」と呼ぶ技術を披露した。 

 

BYDは日本でU8を販売する予定はないのだという。それでも日本に紹介したのは、技術力をアピールするためにほかならない。狙い通り、タンクターンには来場者から盛んに拍手を送られていた。 

 

一方、日産の役員は異なる視点で見ていた。「中国メーカーの強みはスピードとコスト。バックには中国政府が付いており、太刀打ちできない。技術的にも思い切ったことをしてくる」と警戒を隠さなかった。 

 

昨年10月末といえば、中国市場で日本メーカーの苦戦が顕在化していた時期だ。米テスラや現地の新興EVメーカーに押され、日本メーカーは軒並み失速。EVのラインアップが整っていなかった三菱自動車は中国市場からの撤退を余儀なくされた。 

 

それから1年あまり。状況は改善していない。中国における新車販売で、11月はホンダが10カ月連続、日産も8カ月連続で前年割れ。EVやハイブリッド車(HV)の商品ラインアップを拡充したことが奏功し、トヨタ自動車は10カ月ぶりにプラスとなったが、そのことがニュースとして報じられるほど日本メーカーが落ちた谷は深い。 

 

中国市場で苦境に陥っているのは日本メーカーばかりではない。中国の自動車市場を牽引(けんいん)してきた独フォルクスワーゲン(VW)、米ゼネラル・モーターズ(GM)も販売が落ち込み、中国事業のリストラを迫られている。 

 

 

「中国市場で起こっていることは、中国だけの問題ではない。いずれ世界で同じことが起こる」。日産の役員はそうも話していた。 

 

〝予言〟めいたその言葉の通り、日産の販売低迷は中国だけにとどまらず、米国にも波及。在庫が積み上がり、実質値引きとなる販売奨励金が増え、利益を圧迫する悪循環に陥っている。日産は苦境を脱するため、全従業員の7%に相当する9千人の削減を発表。グローバルでの生産能力を2割(約100万台)削減することも決めた。 

 

VWも中国だけでなく欧州でのEV失速を受けて、ドイツ国内で少なくとも3工場を閉鎖するリストラ策を進める構えだ。 

 

中国メーカーの台頭と、既存の大手メーカーの不振。中国市場で起こった地殻変動は世界に広がっていくのか。求められるのは、この難局を乗り切る戦略である。日産に限らず、わが国自動車産業全体が問われている。(論説委員) 

 

 

 
 

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