( 235354 ) 2024/12/18 19:07:12 1 00 メルカリを利用するユーザーを狙った「返品詐欺」が問題視されている。 |
( 235356 ) 2024/12/18 19:07:12 0 00 メルカリ利用者を狙った「返品詐欺」が問題となっている(写真:當舎慎悟/アフロ)
フリマアプリのメルカリで起きた「返品詐欺」騒動。注目を集めたのは11月のX(旧Twitter)でのメルカリユーザーの告発。戦車のプラモデルを出品したところ、購入者から「パーツが破損している」という苦情が入り、返品に応じることに。ところが返品されたのはパーツが抜き取られた枠やゴミだった。なぜ、このような事例が発生しているのか。だまされないようにするにはどうしたらいいのか。ITジャーナリストの高橋暁子氏に話を聞いた。記事最後にメルカリ側の見解も掲載している。
(湯浅大輝:フリージャーナリスト)
■ 「返品不可」が詐欺の温床に?
──メルカリの「返品詐欺」騒動が注目を集めています。高橋さんはメルカリユーザー同士のトラブルについて取材経験が豊富ですが、こうした問題の本質はなんでしょうか。
高橋暁子氏(以下、敬称略):今回の問題は、メルカリが出品者に対して「『返品不可』と記載することを禁じている」ところに一端があります。
このルールをメルカリが設定する大きな理由は、購入者を守る、つまり「出品詐欺(違う商品が届くこと)」を防ぐところにあります。返品詐欺を働く人間はこのルールを悪用することで、欲しい商品を「無料」で得ているのです。
私は数年前からメルカリにおける返品詐欺の問題を追っていますが、実は話題になっていないだけで、これまでも「商品のすり替え」問題は水面下で発生していました。「ブランドバッグを出品したら傷がついていると言われ、返品に応じると偽物が返ってきた」「新品の商品を出品したのに、中古品が返ってきた」など、類似するケースはいくつも聞きます。
こうした事例においては、返品不可記載ルールがある手前、出品者も返品に応じるしかありません。身の潔白を証明できる出品時の梱包作業の撮影などを行なっているユーザーは極めて少数で、泣き寝入りするしかないのです。
──SNSで見られる返品詐欺の告発については、購入者側に詐欺を働く明確な意思があるようにも思えるのですが、警察は対応しないのでしょうか。
■ 出品者は「確実にだませるカモ」か?
高橋:ユーザー間の取引において「故意」を証明することが現実的に難しい以上、警察が積極的に対応することはないのではないでしょう。
今回のケースで当てはめれば「返品する際に『部品を抜き取ってゴミを送ってしまった』けれどそれは故意ではありません」と購入者が主張すれば、「未必の故意(犯罪事実に対する確定的な認識・許容がない状態)」という言い訳も成り立ってしまい、罪に問うことは難しいのです。
小口の詐欺師は「証拠を残すことが難しい」という出品者の弱みにつけ込み、出品者を「確実にだますことができるカモ」のように考えているのでしょう。
──メルカリ側は、今回の件を受け「お客さまサポート体制の強化・補填の拡大・不正利用者の排除」といった対応策を講じるとしています。
高橋:「不正利用者の排除」という対応については、確かに詐欺的行為を複数回働いているユーザーのアカウントを停止することも可能だと思います。
ただ一方で、返品詐欺を働いているユーザーは少なくないと見られ、メルカリ側としても全てを把握するのは不可能だと思われます。プラモデルの件で返品詐欺の認知度が高まったのは、被害者ユーザーが相当詳細に経緯をポストし、それが多くのSNSユーザーの目に触れたからでしょう。
そもそもの問題点になりますが、「返品詐欺にあった」と証明するためには、出品したユーザー側が販売する際に、商品を事細かに撮影するなどして証拠を残しておく必要があります。そうしていない多くのユーザーは、証拠がないことで泣き寝入りしています。メルカリとしても、証拠がない以上、不正利用者の排除には積極的に動けないのではないでしょうか。
被害に遭った人に対する補填の拡大についても、あくまで証拠画像・動画が残っていることが前提でしょうから、すぐに進むとは思えません。
──抜本的な対策はむずかしいということでしょうか。
■ 「なんでもOK」で成長してきた
高橋:メルカリというプラットフォームは「ユーザー間の合意があれば、(禁止されたものを除いて)何でも売り買いしてOK」というモデルがウケ、成長してきました。高額な転売品や使用済みの化粧品、野菜をはじめとする生鮮食品の販売なども見られます。
もちろん、法律上問題のある商品だけではなく、たびたび問題視される「宿題代行」など倫理的に問題のある商品についても、メルカリは出品禁止を明確にしていますが、それでも出品される商品は実に多様です。
「何でも売り買いしてOKだからユーザーの支持を受けてきた」メルカリが詐欺的な事例が増えてきたからと、ユーザーに対する規制を厳しくしすぎると、ビジネスとしての優位性も損なわれかねません。
──使用済みの化粧品も出品されているのですね。そもそも、メルカリで熱心に売り買いをする人たちは、どんな特徴があるのですか。商品画像をメルカリにアップして、買い手とやり取りして、商品を発送するという一連のやり取りは、非常に手間な印象があるのですが。
■ 「自由」と「自己責任」のバランスは?
高橋:言葉を選ばずにいうと「儲けは多くなくても時間と手間を惜しまない人たち」がヘビーユーザーである、という側面はあると思います。
中でも、返品詐欺を働くような人たちは常習性があり、わずかな利益を確保するために躍起になっています。たとえば、「開封済みのブランド化粧品」と謳って、化粧品の中身を安いものにすり替えて販売する人もいます。儲けの額は、せいぜい数百円、いっても2000~3000円程度ではないでしょうか。
また、売る方も買う方も、メルカリにおいては可処分時間が長い人の方がハマりやすい面があります。日常の不用品などはお金にならないことも多いのですが、儲けが少なくてもそれを大事にできる人たちということですね。出品して獲得した「メルカリポイント」を、メルカリ内で商品を買うことで消費する「メルカリ経済圏」に取り込まれている若者も多いです。
使用済み化粧品がよく売れるのも「先の方をピッと削ってしまえば、問題なく使える」と考える人が多いからです。
メルカリはユーザーに「自由」を与える代わりに基本的には「自己責任」を前提とすることで急拡大しました。ここにきて、そのひずみが大きくなっています。抜本的な改革は難しいのでしょうが、返品不可記載ルールの見直しを含め、何らかの対応を余儀なくされるでしょう。
■メルカリの回答は…
「返品詐欺」の問題について問題についてメルカリはJBpressの取材に対し、11月から開始しているサポート体制の強化や新たな補償方針について以下のように回答した。
【メルカリからの回答】
メルカリでは、お客さまにより安心安全に「メルカリ」をご利用いただけるよう、お客さまサポートの体制強化と新たな補償方針による対応を本年11月から開始しております。
具体的には、お客さまサポートの体制を強化し、お客さま間で解決が難しい問題に対して、より関与を強めることで早期解決を実現すること、これまでの補償方針を大幅に見直し正しくご利用いただいているお客さまへの補償を拡大すること、また、関係当局や警察などと連携し不正利用者の排除を進めること、に取り組んでおります。
これまでもメルカリでは、出品者・購入者を問わず、メルカリをご利用いただいているお客さまが安心してサービスを利用できるよう、社内にカスタマーサービス体制を整備し、365日24時間体制で対応を行っておりました。また、当社の利用規約に違反する商品の自動検知システム及び目視により出品や取引を常時監視し、トラブルの防止に努めております。なお、迷惑行為を確認した場合には、迷惑行為を行うお客さまに警告を行う、一定期間の利用制限または無期限の利用制限を行う、などの対応を実施しております。
また、出品者・購入者どちらにとっても安心して安全な取引ができるよう、メルカリガイドにおいて禁止行為を定めております。迷惑行為を確認した場合には、迷惑行為を行うお客さまに警告を行う、一定期間の利用制限または無期限の利用制限を行う、などの対応を実施しております。
今回、これらの対応に加えて、お客さまサポート体制の強化と新たな補償方針による対応を加えることで、これまで以上にお客さまに安心安全にご利用いただける環境を整えていきたいと考えています。
今後もステークホルダーのみなさまとの対話・連携を強化し、お客さまに適切な情報を提供していくことで、誰もが安心安全に利用できるマーケットプレイスを目指してまいります。
湯浅 大輝/高橋 暁子
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