( 235919 )  2024/12/19 18:29:46  
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忘年会シーズンが終わると新年会シーズンが始まり、飲み会が増えるが、飲み会への億劫さや価値を見落としている人もいる。

飲み会は一流、二流、三流にわかれており、仕事やプライベートで重要な役割を果たしている。

ビジネスの場での食事や飲み会はチームビルディングにつながり、助け合いや協力を促す。

また、会話力の重要性も指摘され、飲み会でのコミュニケーションを通じて仕事や人間関係に良い影響を与えることが示されている。

続いて、研究結果に基づき、飲み会の場の違いが持つ意味や効果について説明されている。

(要約)

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(c) Adobe Stock 

 

 忘年会シーズンだ。それが終われば新年会シーズンに突入するわけで、「酒が飲める!酒が飲める!酒が飲めるぞ!」と息巻いていても、連続すれば体にがたがくるので、飲み会に対して億劫になりがちな人もいるだろう。そんな中で飲み会の接し方で「その人が一流かどうかわかる」と語るのは作家で経済誌プレジデントの元編集長、小倉健一氏だ。果たして一流の飲み会とはーー。 

 

 人と会って一緒に食事をするのは、正直なところ面倒だと感じる人が多いだろう。さらに、お金もかかるので、できれば避けたいと思う人も少なくない。特にリモートワークが広がった今では、仕事の飲み会に限らず、友達や仲間との飲み会ですら行きたくないと考える人もいるだろう。無理に付き合いで参加しても、楽しめないし、時間が無駄だと感じる人もいるかもしれない。 

 

 だが、飲み会を軽く考えるのは危険だ。仕事でもプライベートでも、飲み会が持つ効果を見落としてしまうのは損をする可能性がある。たとえ学歴が高くても、仕事ができる優秀な人であっても、飲み会を否定してしまうと得られるチャンスを逃してしまうことがある。 

 

 飲み会に行きたくない理由として、性格的に論理的な人が多い印象がある。そうした人たちは、飲み会の価値を具体的に説明されないと「ただのお酒の場」と捉えてしまうのだろう。しかし、飲み会には意外と深い意味や役割がある。それを理解すれば、参加する価値が見えてくる。 

 

 そこで、飲み会がなぜ必要なのか、そして飲み会をどのように活用すれば良いのかを考えてみたい。研究論文や実例を参考に、飲み会を「一流」「二流」「三流」という視点で分けて説明する。これにより、飲み会を単なる時間やお金の無駄ではなく、有意義な場に変える方法を探ることができる。飲み会の持つ力を正しく理解すれば、きっと新しい気づきがあるだろう。 

 

 ビジネスの場で行われる会食や飲み会は、ただの楽しい集まりではない。人と一緒に食事をする時間が、仕事仲間の結束力を強くする重要な役割を果たしている。これを裏付ける研究がある。「Eating Together at the Firehouse: How Workplace Commensality Relates to the Performance of Firefighters」(「会食の力:一緒に食べることがビジネスチームを強くする理由」2015年)という論文がそれだ。 

 

 

 この研究では、アメリカの大都市にある消防署で、消防士たちがどのくらい頻繁に一緒に食事をしているかを調べた。その結果、頻繁に食事を共にするチームほど、協力して仕事をする力が高いことが分かった。 

 

 研究は、消防署の13施設で行われた質的調査や、395人の消防署オフィサーへのアンケートをもとにデータを集めた。そのデータによると、一緒に食事をする習慣があるチームは、仕事への満足度が高く、チームのパフォーマンスの評価も良い傾向にあった。食事を共にすることで、信頼感が育まれ、仕事中の協力が自然に進むようになるという。 

 

 食事の場には特別な力がある。緊張をほぐし、リラックスした雰囲気を作り出すのだ。そのため、メンバー同士が心を開きやすくなる。また、仕事の話だけでなく、個人的な悩みや日常の話を共有するきっかけにもなる。この研究では、食事中の会話がチームの連帯感を高めるうえで大きな役割を果たしていると述べられている。 

 

 さらに、会食の習慣はチーム全体の協力を引き出す。一緒に食べることで、価値観や目標を共有しやすくなるからだ。データによると、頻繁に共食しているグループでは、職場での協力行動が目立つという。例えば、仕事中にお互いを助けたり、問題が起きたときに自然に協力し合うことが増える。 

 

 企業もこのような会食の力を活用できる。特に、新しいプロジェクトを始めるときや、メンバー同士の関係を深めたいときに効果的だ。ランチミーティングや食事を伴うディスカッションは、職場のチームワークを高める良い方法だと言える。この研究が示す通り、食事を共にすることで仕事の効率や信頼関係の構築につながるのだ。 

 

 チームで成功を目指すなら、結束力は欠かせない。その結束力を高めるために、会食の時間を取り入れることは非常に有効だ。食事の場が仕事の目標を達成するための第一歩となる。次に、飲み会でのふるまいについて考えてみる。スタンフォード大学ビジネススクールのトーマス・ハレル教授が行った研究によれば、社会で成功するために重要なポイントがいくつか見えてくる。この研究は、スタンフォード大学ビジネススクールを卒業した人たちを10年間追跡して調査したものだ。その結果、意外なことが分かった。 

 

 

 まず、学業成績が優秀であることと、社会での成功にはほとんど関係がないという点だ。つまり、学校での成績が良くても、それだけでは成功につながらないということだ。それよりも重要なのは「会話力」だという。この会話力とは、ただ上手に話すということではない。いろいろな立場の人と上手にコミュニケーションを取れる能力を指している。 

 

 例えば、顧客や上司、同僚、部下など、どんな相手とも良い関係を築ける能力が求められる。この研究で最も成功した人たちには「言語的流暢性」という共通点があった。言語的流暢性とは、どんな状況でも自信を持って話せる能力だ。さらに、相手によって話し方を変えることができる柔軟さも重要だという。例えば、経営層には簡潔に要点を伝え、技術者には詳細なデータを示し、営業担当には具体的な数字を使うなど、状況に応じて話し方を変えることが求められる。 

 

 日常の中でも、空港での待ち時間や夕食時の会話、タクシーでの移動中などの短い時間に、相手と快適な会話を続けられる人が成功する傾向があるという。そういった場面で気まずくならずに話せる人は、相手から「また一緒に仕事をしたい」と思われる可能性が高い。このように、会話力を持つことは、仕事の成功や昇進にもつながる重要なスキルである。 

 

 飲み会の場も、こうした会話力を発揮する絶好のチャンスだ。ただ単にお酒を飲むだけではなく、相手の話をよく聞き、自分の考えを適切に伝える練習の場として活用するべきだ。飲み会を有効に使えれば、日常の仕事や人間関係にも大きなプラスをもたらすことができる。 

 

 最後は、飲み会の場の研究だ。調べてみると、飲み会をどこでやるかを真剣に考えている論文を発見した。「誰が夕食に来ると思う? 戦略的経営コンサルティングにおけるリミナリティの構造と利用」(2006年、イギリス『ウォーリック・ビジネススクール』)という調査だ。 

 

 この調査で、社長の自宅、高級レストラン、ピザ屋で行われた夕食会において、何が成果として上がったかがわかった。まず、社長の自宅だ。「家族的」な雰囲気を演出し、幹部やコンサルタントに心理的な圧力をかける意図があったという。その場では、幹部たちは会話にほとんど参加せず(80%が社長一人の発言)、会議というより「聴衆」の立場で過ごし、コンサルタントはこの場を通じて、CEOの意図や「公式な場では得られない」情報を収集することができたという。 

 

 

 次に高級レストランでの夕食会だ。ここでは、クライアントからの信頼獲得、相手方経営者の意見や政治的視点の収集、次回会議の方向性確認を目的に開催されるのだという。相手の話、率直な自社の経営課題や何気ない会話から組織内の政治的な力関係を把握し、プロジェクトの優先順位を変更することができたという。つまり、高級レストランでは、権威的でありながら個人的な交渉が行われる場として機能したということだ。 

 

 最後が、ピザ屋だ。日本でいうところのカジュアルなイタリアンレストラン、居酒屋といったところだろう。ピザ店では、階層や役割を超えた自由な意見交換が促進された。非公式な場での交流により、緊張が和らぎ、互いに情報を開示する雰囲気が生まれ、従業員からの支持を獲得できたという。 

 

 こうした調査結果を見れば、飲み会も場所によって、得られるものが全く違うことを十分に理解しなくてはいけない。高級レストランでの飲み会は、権威性が生まれること、カジュアルな飲み会は親しみやすさが生まれるということを十分意識した方が良い。 

 

 また自分が経営者なら、自宅に部下を招いての飲み会は、自分の意見を押し付けるのに、最高の場ということになる。 

 

 こうして考えると、ビジネスリーダーの3流は飲み会にいかず、2流は場所選びにまで頭が回らない。一流は上のすべてを知って行動できる人のことということになる。 

 

小倉健一 

 

 

 
 

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