( 236539 )  2024/12/20 18:47:07  
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現代の艦艇は、大戦時代と比べて大砲や機銃の装備が少なくなっており、その理由としては、ジェット機やミサイルの技術が発展したことが挙げられる。

これにより、空中での戦闘が主流となり、速度の速いジェット機を撃墜するために、艦隊防空ミサイルの開発が進められた。

また、艦砲の必要性も減少し、大戦艦同士の艦隊決戦が起こらなくなったことも影響している。

艦砲や機銃の代わりに、長射程のミサイルが積極的に開発され、現代の艦艇はスッキリした外観となっている。

(要約)

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垂直発射システムからミサイルを発射する護衛艦「まや」。このように、現在の艦艇の火器は甲板内部に収まっているものが多い(画像:海上自衛隊)。 

 

 自衛隊の新型護衛艦であるもがみ型と、第二次世界大戦頃の艦艇を比べると大きな違いがあります。それは、昔は大口径の大型砲塔を複数積み、さらに無数の多連装砲や対空機銃があったのに、それが全くなくなっているからです。せいぜい艦首に備えた5インチ砲ぐらいしか目ぼしいものはありません。なぜ、現在の艦艇は大砲や無数の機銃を装備しなくなったのでしょうか。 

 

 現在の艦艇の甲板がスッキリしている理由には、大戦後にジェット軍用機の時代が到来し、急速にミサイル技術が大きな発展を遂げたことが大きく関係しています。 

 

 戦後、速度の上がったジェット機を撃墜するには、機銃や機関砲ではかなり困難になっていました。そのため、より速い戦闘機を捕捉するため、アメリカ海軍は「テリア」や「ターター」、イギリス海軍では「シースラグ」などといった艦隊防空ミサイルの開発を始め、1950年代に次々と水上艦艇に搭載するようになります。 

 

 さらに、艦砲についても航空戦力の性能向上により、目視できる環境での戦艦や巡洋艦などを主体とした艦隊同士が戦う、いわゆる艦隊決戦が発生しなくなった関係で不要になりました。 

 

 そのため、空母や艦載機などの戦力に劣るソビエト連邦では艦砲のかわりに、空母などの大型艦船を破壊可能な長射程・大威力の巨大な艦対艦ミサイルを積極的に開発するようになります。その後、ソ連と対立していたアメリカでも同様に艦対艦ミサイルの威力に開眼、そちらにシフトしていきました。 

 

 これらミサイルは、箱や筒状の入れ物であるキャニスターや甲板内の垂直発射システムに内蔵してあるため、甲板は構造物が少なくなっています。さらに昔の艦砲や対空機銃は、発射速度が遅く、レーダーやGPSなど各種のデータリンクによる照準制御もないため、命中率の低い銃砲を「数撃ちゃ当たる」といわんばかりに甲板へ多数配置しました。だからこそ、それらがなくなった現在の艦艇の方がスッキリした印象を受けてしまうのです。 

 

 

もがみ型護衛艦「くまの」と、最上型巡洋艦の「熊野」を比較した画像。やはり21世紀のもがみ型は甲板上がスッキリしている(画像:海上自衛隊公式とパブリックドメイン写真を編集部で加工)。 

 

 ミサイルの技術が向上すると、今度は「誘導の効かない艦砲や対空機銃を搭載するくらいならばミサイルを配置した方が効率的」という考え方で、一時期はアメリカ海軍のロングビーチ級原子力ミサイル巡洋艦やイギリス海軍の22型フリゲートのように、ミサイルしか搭載しない艦船も登場します。ところが、ミサイルのコストは通常の砲弾よりはるかに高いため、砲全てをミサイルへ転換するには至りませんでした。 

 

 また、高いコストを抑制する必要性から、コンピュータ制御の導入や砲身冷却などのシステムにより、精度と発射速度が格段に進歩した、単装の小口径速射砲や、バルカン砲の愛称で知られる、発射速度に優れた多銃身機関砲を積むようになりました。これらは、かつて栄華を誇った連装砲や対空機銃・対空砲の代わりになるかのごとく搭載されていきます。 

 

 ところが、2024年現在は、対艦ミサイルの高性能化によってCIWSや小口径砲では迎撃が困難であると指摘され、近接防空ミサイル(RAM)と併用されるようになっています。 

 

 2020年代に入って多用されるようになった、自爆ドローンの対策に関しては、いまだにコストパフォーマンス面などからCIWSや小口径砲の方が有効です。ただ、ドローンなどの防衛兵器に関しても、将来的にはレーザー迎撃兵器などに置き換わる可能性もあります。 

 

 ちなみに、模型にすると、細かい突起物の多い大戦型軍艦の方が完成時の見栄えや達成感が高いという声はある模様で、その見た目ゆえに第二次大戦時の艦艇にロマンを感じる人はまだまだ多いようです。 

 

斎藤雅道(ライター/編集者) 

 

 

 
 

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