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松江市の国宝である松江城の近くで建設が進むマンションについて、市の対応が揺れている。

マンションは高さが57メートルで、市の景観計画に適合すると判断されたが、途中で誤りだったとの意見が出て市民から批判が集まっている。

市は建設業者に高さを下げるよう要請したが、業者は断り、市は景観基準の見直しや高度地区への指定を検討しているが対象はこのマンションには適用できない状況。

市民や建築家は松江城をシンボルとする市民には望ましくない建設であり、世界遺産登録にも障害になる可能性があると懸念している。

(要約)

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 松江市の国宝・松江城近くで建設が進むマンションを巡り、市の対応が揺れている。いったんは景観基準に抵触しないと判断したが、お墨付きを与えた審議会の委員から「誤りだった」との声が噴出。市は事業者に高さを下げるよう要請したものの実現の見通しは立たず、市民から批判が出ている。(松江支局 門脇統悟、小松夕夏) 

 

(写真:読売新聞) 

 

 マンションは19階建てで106戸の分譲を予定。高さ57・03メートルは、約200メートル北側にある松江城の天守(海抜56・72メートル)とほぼ同じで、マンションとしては市内で最も高くなる。 

 

 市の景観計画では、松江城など3か所を眺望保全の重点区域に指定し、松江城については「天守から見える東西南北の山の稜線(りょうせん)の眺望を妨げない」との基準を設けている。 

 

 市は昨年10月、施主の京阪電鉄不動産(大阪市)から建設の届け出を受け、建築の専門家らで構成する市景観審議会に諮問した。審議会は、眺望を妨げないとの市の見解も踏まえて審議し、同年11月2日、上定昭仁市長に「基準を満たしている」と答申した。 

 

松江城近くのマンション建設現場(手前)。クレーンが設置され、工事が進む(松江市で、読売ヘリから)=前田尚紀撮影 

 

 しかし、市民団体「まつえ/風景会議」は今年1月、「城下町の景観が大きく損なわれる」として、建設予定地の購入を求める要望書を市に提出。さらに2月には、審議会委員12人中9人が「街並みとの調和も一体として審議すべきだった」として、審議のやり直しを求める意見書を市に出した。 

 

 ある委員は「市が景観を妨げないと言う以上、反対しづらい空気だった。恥をさらすようだが、看過できなかった」と話した。 

 

 上定市長は「答申を反故(ほご)にすることはできない」として審議会に再び諮問はしなかったが、「松江らしい景観を保全する観点から望ましくない」と表明。京阪電鉄不動産に高さを低くするよう申し入れたが、採算面から断られたという。 

 

 マンションは3月末に着工。8月には、城周辺の町内会が建設反対の陳情書を市議会に提出した。上定市長は10月、親会社の京阪ホールディングス(同)にも高さの引き下げを直談判したものの、受け入れられなかったという。 

 

 

 マンションは2026年11月に完成予定だ。京阪電鉄不動産は「法令に基づいて手続きを進めており、計画通りに建設する」としている。 

 

 市は景観基準の見直しや、建物の高さを法的に規制できる「高度地区」への指定の検討を始めたが、既に着工したこのマンションには適用できない。土地の購入については「事業目的のない土地を買い取ることはできない」と否定している。 

 

 建築家で市民団体事務局の寺本和雄さん(79)は「松江城は市民にとってのシンボルで、城の高さを超える建物ができるなんて思ってもみなかった。市はもっと早く高度地区の指定や景観計画の見直しをすべきだった」と憤る。市が目指す松江城の世界遺産登録についても「障害になる」と懸念する。上定市長は「これまで高層マンションがなかったところに甘えていた部分があった」と認めつつ、「新たな活路を見いだす状況にはなりにくい」と語った。 

 

 ◆松江城=関ヶ原の戦いで功を上げ、出雲・隠岐の領主となった堀尾吉晴が松江市中心部の亀田山に築き、天守は1611年に完成した。築城当時のまま残る全国12の天守のうち5番目に古く、2015年に国宝に指定された。 

 

 城周辺の景観保護を巡っては、対策に動いた自治体もある。 

 

 長野県松本市では1999年11月、国宝・松本城近くの商業区域に、高さ29・4メートルの天守を上回るマンション(9階建て、31・5メートル)の建設計画が浮上。翌年に建設反対の住民運動が起こり、市は市営住宅の用地として土地を購入する形で建設を止めた。さらに2001年3月、32・6ヘクタールの城周辺を高度地区に指定し、高さを15~20メートルに制限した。 

 

 兵庫県姫路市も21年4月、世界遺産・姫路城周辺の大手前通り地区について、同様に高度地区に指定し、地上から石垣までの高さと同じ50メートルなどに規制している。 

 

 市によると、大手前通りに面した百貨店跡地に高層マンションなどが建つ可能性があったことなどから判断したという。 

 

 

 
 

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