( 237124 )  2024/12/21 18:10:43  
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日本の自動車メーカーは激動の時代を迎えており、日産自動車が経営危機に直面している。

日産は日本の自動車メーカーの中でも大きく悪化した業績を抱えており、日産が三菱自動車を合併し経営統合を模索している。

自動車業界は淘汰の時代に突入し、欧州最大の自動車メーカーや他の自動車メーカーも経営難に直面している。

自動運転技術の進化により、自動車メーカーの存続が不透明になっており、トヨタやスズキなど、スタンドアロンで生き残れるメーカーが少ないと言われている。

(要約)

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日本の自動車メーカーは激動の時代を迎えている(イラスト/井川泰年) 

 

 自動車業界を取り巻く動きが風雲急を告げている。12月18日には、ホンダと日産自動車が経営統合に向け協議していることが報じられた。そこには日産が筆頭株主となっている三菱自動車の合流も視野に入っている。 

 

 そもそも大前提として、日産の業績は大きく悪化していた。11月に発表した2024年度上半期(4月~9月)の中間決算は純利益が前年比93.5%減の192億円と大きく落ち込み、全従業員の6.7%にあたる9000人規模の人員削減と世界生産能力の20%縮小に踏み切らざるを得なくなった。日産について、同社の経営コンサルタントを務めた経験もある大前研一氏はどう考えているのだろうか。新刊『新版 第4の波』も話題の大前氏が、日産が凋落した背景を考察し、今後の自動車業界の展望を読み解く。 

 

 * * * 

 私は40年ほど前、日産の経営コンサルタントを務めていた。英国進出やトヨタに後れを取っていた新車開発などの分野だったが、当時の日産には計画を実行・実現する力があった。 

 

 しかし、それから約10年後、塙義一さんが社長に就任した頃には、関連会社や子会社に本社OBが天下りして“悪しき官僚主義”が蔓延して組織が硬直化し、それに伴う高コストと在庫の山で赤字が膨らんで深刻な経営危機に陥った。 

 

 塙さんはその解決策としてルノーの資本参加を選び、ルイ・シュバイツァー会長に経営陣の派遣を要請した。当時はフランスのタイヤメーカー・ミシュランの北米事業部で子会社の合理化に辣腕を振るったカルロス・ゴーン氏がルノーにスカウトされたタイミングでもあった。「コストカッター」の異名を取っていたゴーン氏を塙さんが迎え入れて自由にやらせたのは、ある意味やむを得ない経営判断だったと思う。 

 

 塙さんは会長を1期務めると、ゴーン氏をCEO(最高経営責任者)にして全権を委ね、引退してしまった。この頃からゴーン氏に歯止めがかからなくなるが、業績は改善していたので、日産の利益貢献に依存していたルノーのフランス本社もゴーン氏に対する牽制が効かなくなってしまった。それ以降の出来事はマスコミで報じられた通りである。 

 

 そして、今また経営危機に瀕する中で、内田社長は手をこまぬいているように見える。再び大胆な経営改革が必要だが、仮に“第2のゴーン”を連れてきたとしても、今の日産を再建することはできないだろう。もし私が社長を頼まれても、絶対に引き受けない。南米やアフリカなど手仕舞いしなければならないところが山ほどあり、もはや打つ手がないからだ。 

 

 

 さらに深刻なのは、いま自動車業界は根本的な変化に直面し、“淘汰の時代”に突入していることだ。実際、日産だけでなく、多くの自動車メーカーが危機的な状況に置かれている。 

 

 たとえば、本連載で述べたように、欧州最大の自動車メーカーであるドイツのフォルクスワーゲン(VW)グループは、収益性改善のためにドイツ国内の工場を閉鎖して最大3万人の人員削減を行ない、新車販売の3割を占める中国でもリストラに踏み切る方針を示すという苦境に立たされている。 

 

 ドイツ勢は高級車の代名詞であるメルセデス・ベンツとBMWも、2024年上半期(1月~6月)は世界販売台数や営業利益が前年同期より減少している。いずれも市場競争が激化し、EVや自動運転への投資が嵩む厳しい経営環境の下で四苦八苦しているのだ。 

 

 自動車メーカーは世界的な再編が進み、北米はGM(ゼネラルモーターズ)などビッグ3とテスラの4社、ドイツはVW、メルセデス・ベンツ、BMWの3社、フランス・イタリアはルノー、ステランティス【*】、フェラーリの3社しかない。イギリスのジャガーはインドのタタ・モーターズ、スウェーデンのボルボは中国の浙江吉利の傘下に入った。 

 

【*ステランティス/多国籍自動車メーカー。フランスの「プジョー」「シトロエン」を擁するグループPSAと、イタリアの「フィアット」「アルファロメオ」「マセラティ」などのブランドを持つFCAが合併して誕生】 

 

 一方、日本はまだ10社が存続しているが、このまま生き残れる保証はない。 

 

 さらに5~10年後には、自動運転がレベル5(完全自動運転)の時代を迎える。レベル5になれば、私の計算では自動車の台数は現在の10分の1で事足りる。 

 

 このように見てくると、単独で生き残ることができる日本の自動車メーカーは、囲碁で言えば全陣地に布石を打っているトヨタと、インドに強く日本国内でも販売台数2位のスズキくらいかもしれない。 

 

【プロフィール】 

大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。ビジネス・ブレークスルー(BBT)を創業し、現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊『新版 第4の波』(小学館親書)など著書多数。 

 

※週刊ポスト2024年12月27日号 

 

 

 
 

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