( 237184 )  2024/12/21 19:12:00  
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日本の人口は減少しており、人口減少が様々な産業に影響を与えている。

自動車整備業界では、整備士の数が減少しており、入学者数も大幅に減少している。

自動車の進化に伴い、整備士にはコンピューター技術も必要とされるようになってきているが、若者からの関心が低くなっている。

その背景には少子化や他業界への進学率の上昇があり、技術者や職人の不足が深刻化している状況だ。

今後、日本の産業には大きな変化が訪れる可能性が高いとされている。

(要約)

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〔PHOTO〕iStock 

 

この国の人口はどこまで減っていくのだろうか。今年1年間の出生数が70万人割れになるかもしれず、大きな話題となっている。 

 

そんな衝撃的な現実を前にしてもなお、多くの人が「人口減少日本で何が起こるのか」を本当の意味では理解していない。 

 

ベストセラー『未来の年表 業界大変化』は、製造・金融・自動車・物流・医療などの各業界で起きることを可視化し、人口減少を克服するための方策を明確に示した1冊だ。 

 

※本記事は河合雅司『未来の年表 業界大変化』から抜粋・編集したものです。 

 

整備士はどれくらい減っているのか、一般社団法人日本自動車整備振興会連合会の「2021年度 自動車特定整備業実態調査」で直近の数字を確認してみよう。 

 

整備要員数は39万8952人で前年度より266人(0.07%)減っている。整備士数も前年度より5274人(1.6%)少ない33万4319人だ。整備要員数に対する整備士数の割合(整備士保有率)は83.8%で1.3ポイント減少した。整備要員の平均年齢(自企業の保有する車両の整備を行う事業所を除く)は前年度より0.7歳上昇して46.4歳となっている。ここにも高齢化の波は押し寄せている。 

 

数字だけを見ると「減っているといっても微減ではないか」との印象を受けるが、自動車整備学校への入学者数を見るとそうは言っていられない。 

 

国交省の資料が2003年度から2016年度までの自動車整備学校への入学者数の推移を紹介しているが、急カーブで減少している。2003年度(1万2300人)と2016年度(6800人)を比較すると44.7%もの大激減である。同期間の高校卒業者数の下落率は17.3%である。自動車整備学校入学者数の落ち込みがいかに大きいかが分かるだろう。 

 

2012年度から2016年度にかけての自動車整備の有効求人倍率を見ても、各年度で全職種を上回り、年を追うごとにその差は拡大している。人材不足が年々深刻化していることを示すデータだ。 

 

自動車整備学校入学者数の低迷は現在も続いている。関係者によると、2020年度は入学者数が約6300人だ。学科試験の申請者数も2005年度の7万人から3万6630人へとほぼ半減している。事態を重く見た国交省は整備士の仕事を紹介する啓発ポスターを作成したり、有識者会議で打開策を検討したりしている。 

 

 

整備士を目指す若者が激減傾向をたどる背景には、少子化の影響に加えて、若者のクルマ離れや低賃金、過重労働のイメージが定着していることがある。 

 

ちなみに、警察庁の運転免許統計によれば2021年の20代の免許保有者数は1002万4557人で、2001年の1569万9659人より567万5102人、36.1%も低い水準だ。クルマ離れがいかに深刻かを裏付ける数字である。 

 

かつてクルマは若者にとって“憧れの存在”だったが、もはやそうではなくなってきているのだ。クルマへの関心が薄れて、整備会社を就職先として具体的にイメージしづらくなっているのである。 

 

クルマが「機械」ではなく「コンピューター」へと変貌してきていることもある。バンパー一つとっても、いまはセンサーがたくさん組み込まれている。クルマの構造を理解していることはもとより、だんだんコンピューターの知識も求められるようになってきている。短期間での技術革新に対応できないと敬遠する人もいるだろう。 

 

だが、整備士不足にはさらに大きな要因がある。 

 

大学進学率の上昇だ。製造業や自動車整備業界を就職先として考える対象者が18歳人口の減少以上に少なくなっているのである。 

 

18歳人口が減っていくにもかかわらず、文部科学省は大学数を増やす政策をとってきた。当然ながら入学定員割れが常態化する大学が増えた。そうした大学では「入試改革」と称して、かつてならば不合格にしていたレベルの受験生が入学できるよう新たな推薦入試枠などを設ける動きを拡大させてきた。その結果、長らく日本の各産業を下支えしてきた仕事に就く層が薄くなってしまっているのである。 

 

これは自動車整備士だけでなく、他分野の技術者や職人の減少にも通じる話である。 

 

たとえば、第一種電気工事士だ。経産省の資料によれば2030年には2万6000人不足する。空調設備業界では配管施工の担い手は高齢化が進んでいる。このまま電気工事士や配管技能士といった職種の人手不足が続けば、エアコンが故障してもいつ取り換え工事に来てもらえるか分からなくなる。最近の夏は酷暑続きだけに、まさに命とりとなりかねない。 

 

つづく「日本人はこのまま絶滅するのか…2030年に地方から百貨店や銀行が消える「衝撃の未来」」では、「ポツンと5軒家はやめるべき」「ショッピングモールの閉店ラッシュ」などこれから日本を襲う大変化を掘り下げて解説する。 

 

河合 雅司(作家・ジャーナリスト) 

 

 

 
 

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