( 237629 )  2024/12/22 14:34:38  
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2024年1月から11月まで、訪日外国人客が3300万人を超え、中国人旅行者数が前年比201.8%増の637万人を占めている。

一方、2024年12月に行われた日中共同の世論調査では、中国人の日本に対する印象が悪化しており、87.7%の人が日本に良くない印象を持っていると答えた。

この悪化の理由には尖閣諸島の国有化や政治家の発言などが挙げられる。

SNSを通じてデマや反日感情を拡散する動きもあり、中国の一部の動画投稿アプリでは日中対立をあおる情報が拡散され、多くのアカウントが閉鎖されている。

実際に日本を訪れると好印象が増す中国人旅行者も多いが、中国内では「嫌日」感情が広まっているとの指摘もある。

(要約)

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画像はイメージ(写真ACより) 

 

 2024年の訪日外国人客は1~11月に3300万人を突破した。日本政府観光局が2024年12月18日に発表した。これは日本政府が1964年に統計をとり始めて以来、「過去最速」のペースだ。中国人はこのうち約2割の637万人を占め、前年比201.8%と急伸している。全体の伸び率は49.5%なので、中国人の突出ぶりが際立っている。中国人旅行者数はコロナ禍の落ち込みから大きく回復し、インバウンドに拍車をかけている。個人旅行に加え、コロナ禍で制限されていた団体観光も2023年夏に解禁されたこともあって「復活」が勢いづいた。 

 

■動画投稿アプリで反日デマ拡散 

 

 ところが、2024年12月に発表された日中共同の世論調査で、中国人の対日感情の急速な悪化が明らかになった。日本に良くない印象を持っていると答えた人は87.7%に達し、昨年より24.8ポイントも増えた。印象が良くない理由としては、「尖閣諸島の国有化」や「『一つの中国』原則への消極的態度」「一部の政治家の不適切な言動」などが上位に並ぶ。 

 

 また、「日中関係は重要」と考える人は2005年の調査開始以来、いちども6割を切ったことがなかったが、今回初めて26.3%にまで落ち込んだ。調査したNPO法人「言論NPO」の工藤泰志代表は「国民間の信頼の基盤を失い始めている」と心配する。 

 

 中国の回答者の53.9%は情報源としてインターネットのSNSをあげた。中国のSNSは、デマや反日感情をあおる投稿が出回ることが多い。中国広東省で日本人の男子児童が刺殺された事件をめぐり、中国の動画投稿アプリの一つは、日中対立をあおるデマ情報などを流したとして90以上のアカウントを閉鎖している。 

 

 同時にSNSは、中国人旅行者がもっともよく利用する情報源でもある。人気の高い口コミサイト「大衆点評」の1日のアクティブユーザーは5000万人以上にのぼるという。 

 

 

 じつは、中国人も実際に日本を訪れると、日本の印象が良くなるといわれる。観光庁の2023年「訪日外国人消費動向調査」によると、中国人客の99%が訪日旅行に満足し、さらに98.2%が再訪したいとの意向を示している。中国人が日本に「良い」印象をもつ理由は、2022年、2023年の日中共同世論調査によると、「日本製品の質は高い」や「日本人は礼儀があり、マナーを重んじ、民度が高い」「日本は経済発展を遂げ、国民の生活水準が高い」などが上位となり、「日本人は真面目で、勤勉で、努力家だから」や「日本の環境は美しく、自然が風光明媚で、温泉等の観光地が多い」などが続く傾向にある。こうした好評価は訪日の見聞によって育まれ、SNSによって拡散される。 

 

 中国では、かつてなく「嫌日」感情が高まっている。その理由は政治にからむもので、SNSを通じて広がっている。他方、訪日する中国人客は前年比200%を超えるハイペースで増え続けており、空前のインバウンドの主役になっている。日本にやってきて日本人と交流し、社会を見聞すればイメージが変わり、「親日」の芽が育つかもしれない。 

 

(ジャーナリスト 橋本聡) 

 

 

 
 

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