( 237811 ) 2024/12/22 17:53:24 0 00 写真はイメージです Photo:PIXTA
冬の運転で気を付けたいトラブルについて、専門家が解説します。(1)サマータイヤの保管、業者任せで大丈夫?(2)ラジエーター液は薄くない?凍ってエンジン割れるよ(3)ウォッシャー液は大丈夫?ガソリンスタンドで足してもらったのは薄いよ、の3大テーマに触れます。(モータージャーナリスト/安全運転インストラクター 諸星陽一)
● タイヤの履き替えで 絶対やめてほしいこと
降雪地帯に住む人は、もうスタッドレスタイヤへの交換も終わって、サマータイヤをしっかりと収納したことでしょう。一方で、都市部に住む人はスタッドレスタイヤに替えるかどうか迷っている人も多いことと思います。
サマータイヤからスタッドレスタイヤへの履き替えで、絶対やめてほしいのが、「タイヤ単体での履き替え」です。つまり、現在使っているタイヤをホイールから外して、そのホイールにスタッドレスタイヤを組み付けて使う方法です。
この方法であっても、春が来て履き替えるタイヤが、外した夏タイヤではなく新品タイヤなら問題ありません。しかし、外した夏タイヤを再びホイールに戻すことはおすすめできません。きちんと管理されていれば、再びホイールに戻しても問題ありませんが、半年間も外しっぱなしの状態のタイヤをホイールに組み直して使うのは、良い方法とはいえません。
半年ごとにタイヤを買い換えるのでなければ、ホイールはもう1セット用意すべきです。夏タイヤ用ホイール、スタッドレスタイヤホイールを用意し、それぞれにタイヤを組み込んだ状態で使っていないタイヤを保管するのが、基本的には理想です。
タイヤの保管は、大きく2つの方法に分かれます。1つは業者に依頼する、もう1つは自分で保管する方法です。業者に依頼する場合、必ず確かめるべきことがあります。
● タイヤの主原料であるゴムは オゾンによって劣化する
業者に依頼する場合、「どんな状態で保管されるのか」を必ず聞きましょう。野ざらしにして料金を取るような悪質業者はいないと信じたいところですが、修理工場の一角に積んでおくような業者もいます。それよりは、倉庫やコンテナに入れっぱなしという業者がおすすめです。
タイヤの主原料であるゴムは、オゾンによって劣化します。そのため、電源のオン・オフがあるような場所(電源オン・オフで発生する電気火花がオゾン発生の原因となる)、工場内などはできれば避けたいです。入れっぱなしが良いのは、やはりオゾンの問題です。空気が入れ替われば入れ替わるほどオゾンと触れる機会が増えるので、ドアの開け閉めは少ない方が良いです。
それでは、自分で保管するのはどうするのがベストでしょうか。オゾンが悪い、空気の入れ替えが悪いなどという話を聞いてしまうと、物置がないと保管できないと思われがちですが、一概にそうとは言い切れません。
業者に有料で預けるならば、とことんきちんとやってほしいものですが、自宅保管の場合は妥協も良しとしましょう。あまり細かいことは気にしなくてOKですが、オゾンの件もあるのでエアコンの室外機の近くに保管するのは避けましょう。雨が当たる場所や直射日光も避けます。できれば物置のような場所が最適ですが、カーポートの一角でも大丈夫。ただし、カバーをかけるかタイヤショップで包んでくれるビニール袋に入れておきましょう。
タイヤスタンドは使ったほうがベストでしょうか? 実は、縦置きでも、そのままの平積みでもあまり違いはありません。ただし、平積みするならタイヤとタイヤの間にダンボールを挟むなどしましょう。1本1本が個包装されていない状態で平積みすると、サイドウォールの文字などが転写されてしまい、非常にカッコ悪くなってしまいます。
タイヤを自分で保管する際は準備も大切です。必ず、ホイールとともにキレイに洗浄しましょう。よく乾かすのも忘れずに。その際、タイヤワックスなどは使いません。油性のタイヤワックスはタイヤをキレイに見せますが、同時にゴムを劣化させます。水性のタイヤワックスなら劣化することはないのですが、別に洗浄だけで問題ありません。
また、保管する前には、空気圧を必ずチェックしておきましょう。もし極端に空気圧が低いタイヤがあれば、パンクやバルブ不良の可能性があるので、検査・修理してから保管しましょう。
● ラジエーターの冷却水 濃度が薄いと低温で凍りやすい
タイヤのほかに、冬ドライブの準備で大切なのが水まわりです。まずはラジエーターの冷却水(クーラント液)から。新車で購入し定期的に点検・整備を受けていたクルマは問題ありません。トラブルが起きやすいのは古いクルマです。
夏の間に冷却水不足になり、水のみを足していた場合は冷却水の濃度が薄くなっています。濃度が薄い冷却水は低温で凍りやすいので、注意が必要です。
まあ、凍ってしまうほど冷却水が低濃度になっていることはまず、ありません。サーキット走行会などで冷却性能を向上するために、一般的な冷却水であるLLCではなく純水を使っている、またはLLCを極端に薄くしているケースはあります。
中古車で購入し冷却水に不安がある場合は、整備工場などで相談してみるといいでしょう。万が一、エンジン内部で冷却水が凍ると、膨張によってエンジンブロックやホースなどが割れる可能性もあります。
● 冬場のウォッシャー液は 濃い目の設定が吉
もう一つ気を付けたいのが、ウォッシャー液です。ウォッシャー液も濃度が薄いと凍りやすい性質があります。夏場のウォッシャー液は薄くてもほぼ問題なく使えますし、薄いほうがガラス残りは少なくて快適だったりします。
しかし、冬季にウォッシャー液が薄いと、ノズルのなかで凍ってしまい噴射できないなどのトラブルが起きます。この時、何度もウォッシャー液を出そうとして操作し続けると、噴射モーターが焼き切れることがあります。ノズルがボンネット上にある場合は、エンジンを始動してしばらく待てばエンジンの熱でノズルのウォッシャー液も解けます。
ノズルがフロントウインドウに近い樹脂部分にあると、ワイパーから噴射するタイプはエンジンの熱で解けにくいので、ぬるま湯などを掛けて解かしてあげるといいでしょう。ぬるま湯の温度は30℃程度が適切です。また、ぬるま湯といえどもガラスにかかるとヒビが入る可能性もあるので、絶対にガラスにかからないようにしましょう。
ノズルが凍って詰まることがなくても、噴射してガラスに付着した途端に凍り付くこともあります。噴射した際に霧状になったウォッシャー液が、冷え切ったガラスに付着した瞬間に凍るのです。フロントウインドウは真っ白になりますので、走行中にこの事態が起きるとパニックに陥るドライバーもいます。
こうしたトラブルを避けるためにも、冬場のウォッシャー液は濃い目に設定しましょう。ガソリンスタンドでウォッシャー液を入れてもらえることがありますが、夏場のサービスウォッシャー液はかなり薄くなっていることもあり、そのままの状態だと冬場にトラブルになりがちですので注意が必要です。
>>冬の運転の備え、特にタイヤの履き替えについては、『日本の冬に現れる悪魔の路面!車のタイヤ交換、雪が心配ならベストな選択は?【プロが解説】』も併せてご一読ください
諸星陽一
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