( 237839 )  2024/12/22 18:29:10  
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2023年3月、大阪市生野区で病院に車が突っ込み、高齢女性2人が死亡する事故が起きた。

過失運転致死の罪で裁判にかけられている男性(73)は無罪を主張し、「痰が原因で咳をして気を失った」と述べた。

しかし、遺族は「気を失ったとしても、2人を殺した。

私にとっては殺人事件だ」として重い刑罰を求めている。

裁判の中で運転歴や体調などについて尋ねられ、被告は痰に関する問題や過去の意識喪失の経験、事故当時の状況に関して答えた。

更に、謝罪の手紙を書けなかった理由を「筆下手だから」と述べたが、裁判の後半では遺族に対して謝罪の言葉を述べた。

(要約)

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当時の事故の様子(2023年3月) 

 

大阪市生野区で病院に車が突っ込み、高齢女性2人が死亡した事故をめぐり、過失運転致死の罪に問われ、無罪を主張している男(73)。裁判で「痰が絡んで、咳をして気を失ったことが原因だ」と明かした。一方、遺族は「気を失っていたとしても、2人を殺した。私にとっては殺人事件だ」と話し、重い刑罰を求めた。 

 

起訴状などによると、呉昌樹被告(73)は2023年3月、大阪市生野区で通院先のクリニックから帰宅するために乗用車を運転中、道路を逆走。さらに歩道を乗り越えて生野愛和病院に突っ込み、黒田シマ子さん(当時86)と口池邦子さん(当時75)をはねて死亡させたとして、過失運転致死の罪に問われている。 

 

今年3月の初公判で呉被告は「事故を起こしたことは認めるが、すでに気を失っていたため過失はなく無罪」と主張。12月12日、大阪地裁で行われた被告人質問で、腰が少し曲がった状態でゆっくりと歩きながら法廷に姿を現した呉被告は、自身の体調や事故当時の状況などを明かした。 

 

開廷後まず被告が問われたのは、これまでの運転状況についてだった。18歳の時に取得したという免許は、事故当時はゴールドで、ほぼ毎日運転していたという。 

 

弁護人「(事故を起こす前)運転をするなかで、違反をしたこととかは?」 

被告「いや、そんなにした記憶はないですね」 

 

弁護人「運転をしていて、危ないと思ったことはありますか?」 

被告「ありません。決してありません」 

 

弁護人は続いて、これまでの呉被告の体調面について尋ねていく。呉被告は6年くらい前に軽い脳梗塞になったものの、歩行や運転に支障はなかったと話した。ただ、よく痰がのどに絡むことがあり、咳をすることがよくあるという。そう話す呉被告は、時折咳込んでいた。 

 

弁護人「痰が絡むのはなぜですか?」 

被告「肺気腫と気管支炎です」「昔たばこをよう吸っていたから、それやと思います」 

 

弁護人「咳をして意識を失ったことは?」 

被告「3年くらい前に、家で(あります)」「ベッドに座って上を見ていて、咳込んで、咳をしている間にベッドから滑り落ちた」 

 

弁護人「そのような意識を失ってしまうという出来事は何回くらいありましたか?」 

被告「いやー、1、2回くらいだと思います。そんなに頻繁じゃありません」 

 

家で意識を失っていたことを妻から聞いて知ったという呉被告だが、救急車を呼んだり、病院を受診したことはなかったという。 

 

検察官「意識を失った2回目というのは、どういう状況だったんですか?」 

被告「あったような、なかったような…」 

 

検察官「覚えていないんですか?」 

被告「はい…」 

 

検察官「そういった(咳をして意識を失う)ことがあったのに、運転をやめようとは思わなかったんですか?」 

被告「いや、たまたまなんかなと」「そのときたまたま痰が絡んで、咳をして...うーん、どう言うたらいいかな」 

 

 

さらに、呉被告は事故当時の状況について、胃腸薬などの薬をもらいに行った病院の帰りで、体調は問題なかったと話した。しかし、交差点で右に曲がり始めてから、事故をおこしてぶつかった音を聞くまでの間、意識を失っていたため記憶がないという。 

 

被告「(右折しようとして)右車線に入ってから。痰が絡んで気持ち悪いし、息苦しいから痰を出そうとして。なかなか出なくて、だんだんだんだん気を失った」 

 

検察官「厳密にどこまで覚えているんですか?」 

被告「覚えているのは(事故を起こした)交差点を右に曲がるくらいですかね、そこらへんまでは。どこまでかははっきりは覚えていない」 

 

検察官「意識がなくなったことは覚えているんですか?」 

被告「はい、ポーっと来たからね」「咳をして、あまりに息がしにくくなって、酸欠状態になって、ポーっと。要するに、酸欠状態にみたいになったんです」 

 

弁護人「意識が戻ったのはいつですか?」 

被告「ぶつかってから、誰かが横におって、起こしてもらった。『トントン』ってドア叩かれて、『エンジン切れ』と」 

 

記憶があいまいなためか、呉被告がはっきりした答えを述べずにいると、検察官から問いただされる場面もあった。 

 

検察官「信号の右折の矢印を見た記憶はありますか?」 

被告「見た記憶はないけど…(右折をする)前の車が流れていたからね、右折のランプがついたかなと」 

 

検察官「ランプは見ていない?」 

被告「はい」 

 

検察官「右折する車が出たから、自分もいけるやろと?」 

被告「はい」 

 

検察官「咳をし始めたとき、車を停めようとは思わなかったんですか?」 

被告「にっちもさっちもいかない、横も車だし、前も車だし」 

 

事故当時の状況について質問が相次ぐ中、弁護人から、事故の原因をどう考えているか問われると… 

被告「痰が絡んで、咳をして気を失ったことが原因だと思います」 

 

弁護人「アクセルの踏み間違えとかの可能性はないんですか?」 

被告「それはないと思います」「(事故現場付近の交差点は道が混んでいて)車がちょっとずつ進むところだから、足を(アクセルに)置いているくらいだから」「アクセルをそんなに強く踏むこともないし、ブレーキをそんなに強く踏むこともない」 

 

 

遺族への謝罪の手紙は、結局今に至るまで書いていないという。呉被告は、書こうという気持ちはあったものの、「筆下手だ」という回答を繰り返した。 

 

検察官「遺族の方に謝罪の手紙を書こうという気持ちはなかったんですか?」 

被告「思ったんですけど、拘置所で4か月缶詰にされたから...頭がポーっとして、考えられへんくなって」 

 

検察官「弁護人に『代わりに謝罪文を書いてほしい』と頼みましたか?」 

被告「いうてました。『文句を考えて』と。「筆下手やから、考えてくれ』って」 

 

検察官「今自宅にいますよね。謝罪文を書こうとは思わなかったんですか?」 

被告「...(数秒間沈黙したあと、首をかしげて)筆下手やからね」 

 

初公判の冒頭で起訴内容の認否を問われた際には謝罪せず、「気を失っており無罪」などと主張した呉被告。この日は質問に答える形で、謝罪の言葉を口にした。 

 

検察官「謝罪文を書く代わりに、何か今ご遺族の方に伝えたいことはありますか?」 

被告「本当に悪いことをしたと思っています。すみませんでした」 

 

検察官「事故を起こしたこと以外に、何が悪いと思っておられますか?」 

被告「...(15秒ほど沈黙して)どういう意味かな」 

 

検察官「事故を起こしたことを謝りたいということですが、どういうところを申し訳ないと思っていますか?」 

被告「僕のせいで亡くなった方が...」 

 

検察官「事故を起こしたことについて謝ると?」 

被告「はい」 

 

弁護人「今後、運転はしますか?」 

被告「もうしないです。免許も返しました」 

 

閉廷後、遺族がMBSの取材に応じ、重い刑罰を求めた。 

 

事故で妻を亡くした男性(70代)「(呉被告には)まず素直に事実関係を認めていただきたい。きょうの被告の説明もちょっと頼りない、あやふやというかはっきりしないところがあるので、はっきりしていただきたい。咳をして気を失ったことがあるという事実があれば、今回もそういう事例が起こったのかなと思います。ただ、いつの時点で気を失ったのか、意識を失ってアクセルを踏んでしまったのか、単なる踏み間違いなのか。そのあたりが明確ではないということですね、本人の説明次第ですから」 

 

呉被告の親族からは謝罪の申し出はあったものの、被告本人からの申し出はこれまでにないという。 

 

事故で妻を亡くした男性(70代)「(謝罪の手紙も)書こうと思えば書けるのであって、あとは(被告)本人がその意識が強いか弱いかの差じゃないかと思います。はっきり言って私から見れば、車という凶器を使った2人への殺人事件なんです。気を失っていたとしても2人を殺したわけですから、冒頭にまずお詫びの言葉があってしかるべきじゃないかなと考えています。ところが、冒頭で『私は無罪です』と言われたので『この人はどんな考えをしているのかな』と思いました。(裁判所には)法律に基づいて最大限の処分をお願いしたい」 

 

今後の公判の日程はまだ決まっていないが、医師の証人尋問などが行われる見通しだ。 

 

 

 
 

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