( 237979 )  2024/12/23 04:51:34  
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飲食店の従業員に黒髪を要求する就業規則について、法的な問題があるかどうかを弁護士竹下氏が解説している。

身だしなみは重要だが、髪の色を規制する理由はあいまいであり、個人の自由として尊重されるべきであると指摘している。

職場での規制が私生活にまで影響を及ぼす場合は過大であり、就業規則による制約が合理的でない場合は労働者に対する要求としては妥当ではないとしている。

(要約)

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「飲食店の従業員だから黒髪」という就業規則に問題はないのか(イメージ) 

 

 昨今では、飲食店などの店員の服装や髪型などの身だしなみについて、より自由を尊重する傾向がある。しかし、一方では従業員の身だしなみについて、就業規則で規定されているケースもある。たとえば飲食店の就業規則として、髪の色まで従業員に要求することは法的に問題ないのだろうか。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。 

 

【質問】 

 娘が飲食店で働いています。楽しい職場らしいのですが、納得できないことがあるそうで、それは就業規則に記された髪の毛の色。女性従業員は黒髪に統一しなければならず、その理由を上司に問うても納得できる答えはなく、娘は不満タラタラ。やはり就業規則に従えない場合、娘は辞めるしかないですか。 

 

【回答】 

 飲食店であれば、清潔な身だしなみは不可欠ですし、客や同僚に不快感を与えるような外観であってはならないでしょうが、髪の色を黒に統一する理由は、上司も納得できる説明ができないように、あまり思い当たりません。 

 

 働く者の服装や髪型等の身だしなみは、自分の外観をどのように表現するかという個人の自由に属する事柄です。その点について労働者を規制するためには、業務をする上での必要がある場合に限られ、必要があっても、規制が労働者の利益や自由を過度に侵害しないような合理的な範囲に限られるべきで、たとえ合理的範囲の規制ができても、それは職場においてなしえること。 

 

 要は、使用者の指揮命令が及ばない自由時間で、個人としての私生活を営む場において、職場での規制を受けるべき理由はないのです。同じ頭髪でも髪型だと、その種類によっては職場を出れば、すぐに好みの型に変更できるような場合もあるかもしれません。 

 

 しかし、職場での毛髪の色を規制されると、髪の色は簡単には変更できないので、職場での毛髪の色が私生活でも事実上強制され、自由な自己表現ができなくなってしまいます。となると、毛髪の色を黒に限定する規制は過大であり、特にそのことを承諾して入社したような場合を除き、就業規則をもって労働者に要求することには無理があると思います。 

 

 例えば、就業規則で労働者の身だしなみや服装を服務規律として定め、これに違反した場合、程度に応じて懲戒等の処分をしたり、人事考課で低評価をすることが見受けられます。もし、娘さんが店の雰囲気を壊す異様な色に染めたのでなければ、黒髪でなかったとしても、そのことを理由に、使用者側が就業規則違反として懲戒処分や不利益処分を行なえません。 

 

【プロフィール】 

竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。 

 

※週刊ポスト2024年12月27日号 

 

 

 
 

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