( 238116 ) 2024/12/23 15:09:02 0 00 強制執行の舞台となったあいりん総合センター。路上生活者らからは「センター」と呼ばれていた
’24年12月1日午前7時頃、大阪市西成区のあいりん総合センターの敷地で野宿していた路上生活者らに対し、強制執行が行われた。
大阪府が路上生活者らに対し、大阪地裁に立ち退きを求めた提訴を’20年4月22日に起こし、今年5月に最高裁が上告を退ける決定を下し、路上生活者側の敗訴が確定していた。この決定に基づき、半年以上が経った今回の強制執行となったのである。
1970年に開設したあいりん総合センターは設立以来、職業安定所をはじめ食堂や病院、団地などが併設されており、全国から集まった幾多もの労働者を支援してきた。労働者などからは「センター」と呼ばれており、西成、とりわけ、あいりん地区を象徴する建物だ。
最盛期には日雇い労働などを探し求めて早朝から長蛇の列ができていたことや、同時に家を持たない路上生活者の寝床としても長年にわたり活躍した側面を持つ。
建物の老朽化や耐震性の問題に伴い’19年4月には閉鎖されており、建て替えが決定していたが、閉鎖後も建物中央の「寄せ場」と呼ばれるホールやその周辺には路上生活者が引き続き寝泊まりしていた。
◆支援団体が警察と激突
強制執行当日、オレンジ色や緑色の上着を着た作業員や私服警察官らが大挙してセンターの周囲へ配置され、重機やトラックなどが続々と横付けされ作業が開始された。突然始まった作業に路上生活者らは驚きとともに呆気に取られたという。
センターのシャッター前に置かれていたソファや布団、ゴミなのか区別がつかない道具などさまざまなモノが次々とトラックに運び込まれていく。同時にセンターの西側を通る道路にはバリケードが設置され、作業完了の17時前まで完全に通行止めとなった。
この大阪府の作業により路上生活者支援団体から「こんな不意打ちやめろや! 警察は帰れ!」など抗議活動が始まった。道路の真ん中に横たわる人もいたため、再三の説得で毛布に包み歩道上へ移動させるという場面も。
そして12時に近付くにつれ、今度は歩道上で炊き出しをさせろと支援団体の要求が。警察側は「歩行の妨げになるので認められない」と繰り返していたが「炊き出しの場所を奪ったのはそっちやろが!」などと押し問答の末、あらかじめ用意していたリヤカーから鍋釜などを歩道上に置き、支援団体は炊き出しを始め、昼食のお粥を路上生活者らに提供した。
提供後は「次は17時に炊き出しを行います」とアナウンス。それ以降、警察官や支援団体らも一旦はその場を離れ、最小限の人数が留まっていた。
15時過ぎ、裁判所の執行官らが占有者に対して残置動産物の保管場所等の掲示を行った。今回の強制執行は撤去物をゴミとして処分するのではなく、あくまでも保管物として扱うのである。また、路上生活者らが寝泊まりできる場所も同時に提供していた。
16時頃には支援団体が軽トラなどを使用しさまざまなモノを運び始めた。そして道路上に大きな組み立て式テントを設置し始めたのである。
さすがに警察側も「道路上のしかも真ん中まで出てるテントは認められん。速やかに撤去して下さい。16時13分、警告します」と語気を強めた。すると支援者側は「車も通れてるし何があかんのや! ここがあかん言うねんやったらどこか場所用意せえよ!」と声を荒らげた。
さらに押し問答は続き、再度警察が「16時20分、警告します。速やかにテントを撤去してください」と集まった支援者らに警告を行った。同時に西成署交通課の警察官も臨場し、テントの幅や道路の占有面積などをメジャーで測定し、車両の通行の妨げになっている事実を撮影するなど淡々と証拠採集を行っていた。
支援団体もさすがにまずいと思ったのか、テントは放置して調理する場所を突如として変更した。休日のため閉所していたガード下の西成総合福祉センターの柵を越えて調理を始めたのである。
◆「俺らに生肉食え言うとんのか」
警察は「私有地のためただちに退去してください。不法侵入になります」と警告したが、「いつも使ってる公共の場やないけ。何が不法侵入やねん」とまたもや押し問答が。そして警察側がセンターの担当者を連れて支援団体の説得を試みた。
担当者は「ここは私有地なんで直ちに移動してください」と繰り返し伝えるも、「場所も移れ、火も使うなって俺らに生肉食え言うとんのか」とまた語気を荒らげ、終始興奮状態の支援団体。
担当者は「これ以上占拠を続けるならば警察に対応をお任せします」と伝えると、「おたく見たことない顔やしホンマにセンターの職員なんか? 警察にお任せするて暴力を容認すんねんな!」と興奮した様子だった。
そして別のセンター職員が登場し「あくまでもお願いという形で再三お伝えはしました。調理を終えたら速やかに退去してくださいね」との言葉に支援団体は拍手喝采。炊き出しの豚汁が路上生活者らに提供された。
同時に支援団体もテントを片付け、警察らも撤収するなど、この場での逮捕者等は出ることなく早朝からの押し問答はあっけなく幕を下ろした。
取材・文・PHOTO:有村 拓真
FRIDAYデジタル
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