( 238164 )  2024/12/23 16:07:12  
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石破茂首相の補佐官である矢田稚子氏が、所得税の非課税枠を引き上げる方針を自民・公明両党が決めたことや、女性の賃金格差が深刻な問題であることなどについて報道されています。

矢田氏が率いる調査チームが行った試算では、女性が出産後に再就職しても「年収の壁」を超えると家計の手取り総額が増えることが示され、政治や社会で注目を集めています。

特に、女性が働き続けることで家計にとって有利な点が明らかにされ、女性の賃金格差解消が地方創生や労働力の確保などにも繋がるとして、議論が進められています。

(要約)

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石破茂首相の賃金・雇用担当補佐官を務める矢田稚子(わかこ)氏。 

 

所得税の非課税枠「年収103万円の壁」について、123万円に引き上げる方針を自民・公明両党は決めた。 

 

「女性の稼ぎ方」に大きなスポットが当たっているが、現在の深刻な男女の賃金格差は、女性が望むと望まざるとに関わらず“働き控え”して、収入増や出世のチャンスに恵まれなかったことが一因だ。しかし、女性たちが「壁」を超えて働くようになれば、世帯の手取り総額(可処分所得)は最大で約1.7億円も増えると政府のデータは示す。 

 

この調査を率いたのは、女性の雇用や賃金の問題に取り組んできた矢田稚子(わかこ)氏だ。矢田氏は岸田文雄前首相に続き、石破茂首相の首相補佐官も務めている。女性の賃金を上げることで、肝いりの「地方創生2.0」につなげたいという石破首相の狙いのもと、政権をまたぐ異例の続投となった。 

 

深刻な人手不足、消費低迷、そして女性が流出し少子化が進む地方の現状も「年収の壁」と無関係ではないのだ。 

 

2024年6月、政府が公表したデータが静かな衝撃を広げた。夫婦と子供が二人いる世帯で、出産後の妻の働き方が変わると「世帯が生涯で受け取る手取り総額」がどう変化するかを試算したものだ。 

 

夫はフルタイムの正社員で22歳から65歳まで働くと設定。妻も22歳で就職するが、出産後の働き方は「正規雇用で65歳まで就労継続」から「いったん退職して再就職」「退職して再就職せず」まで6パターンを想定した。 

 

その結果、正社員で就労を継続した場合は、出産退職して再就職しない場合と比べて、世帯にとって1億6700万円も生涯の可処分所得が多くなることが分かったのだ。  

 

この試算が今、世帯の手取りを増やすため「年収の壁」が与野党で議論されるなか、改めて注目されている。  

 

この試算の特徴は、夫は88歳、妻は93歳と平均的寿命まで生きると仮定したうえで、2人分の賃金だけでなく退職金、公的年金、児童手当、企業の配偶者手当なども「収入」に加え、税(所得税、住民税)や社会保険料(厚生年金保険、医療保険、介護保険、雇用保険)の負担も詳細に計算したことだ。  

 

その結果、出産後も育休を経て正社員で働き続ける場合では、世帯の手取り総額は4億9200万円と高くなるのに対し、出産で退職して再び働く場合では、「正社員で再就職」なら4億4100万円と4億円を超える一方、「パートで再就職」だと3億円台半ばになることが示された。 

 

「パートで再就職」のなかでも、(1)「年収の壁」内で年収100万円の働き方なら3億5200万円で、(2)「年収の壁」超の年収150万円だと3億6400万円になり、生涯で1200万円の違いがあることが示された。 

 

 

また、(3)「壁」をもっと超えて年収200万円で働く場合は、夫の配偶者手当の受給は220万円から0円へ、 配偶者控除などの恩恵は200万円から20万円へそれぞれ縮小されるものの、妻の給与所得は約1600万円、年金所得も約1000万円も増え、(1)より合計2200万円の手取り増となることも明らかにされた。  

 

つまり、配偶者控除などの“目先の特典”はなくなっても、賃金総額も老後の年金もかなり増えるため、「壁」を飛び越えて働くほど、生涯では世帯として「お得」になるのだ。  

 

この調査を主導した矢田稚子首相補佐官 は言う。 

 

「女性で最も多いのは、出産後に再就職しても『年収の壁』の中で働く人。私自身もそうだが、『年収の壁の中にいるとお得ですよ』と刷り込まれてきた。そういう人が特に40~50歳代には多い。でも、実際は就業継続した場合と比べて「壁」の内だと1億4000万円も違うことを可視化できました」(矢田首相補佐官 ) 

 

手取りを増やすため「年収の壁」をどう動かすかが政党間で議論されているが、本気で手取りを増やしたいなら、「壁」に合わせて働くのでなく、「壁」を超えて働くほど効果があるということだ。特に老後の年金を増やす観点からも、後者の方が断然「お得」であることが示された。  

 

こうした実態は民間調査などでも断片的に指摘されてきたが、女性の多くは今も「壁」の中にとどまっている。日本でも20~50歳代の就労率は約8割と高い水準だが、女性就労者の53%は非正規。男性の約2割より圧倒的に多い。 

 

その結果、男女の賃金格差が先進国のなかでも大きく、労働者の約半分を占める女性が低賃金である状況が日本全体の賃金アップを難しくしている。 

 

さらには、女性の働き控えが深刻な人手不足、消費の低迷、老後の生活資金の不安などにもつながっていることが見えてきた。 

 

「1986年に男女雇用機会均等法が施行されて、女性労働者が性別により差別されない社会を目指すことになった。ところが同時に、サラリーマンに扶養される専業主婦は年金保険料を納めなくていいとする第三号被保険者制度も作られるなど、『内助の功』に特典をつけてきたのではないか。 

 

こうした仕組みが、女性は家庭にいた方がいい、働くなら扶養のなかがお得、というアンコンシャス・バイアスを作ってきたと思う」 

 

と矢田首相補佐官は指摘する。アンコンシャス・バイアスとは、実態とは違っていても信じられている「無意識の偏見」のことだ。 

 

「女性は家庭を守るもの」「子どもが大きくなったら少し働くのでいい」などの考え方は、戦後に広がった「夫は稼ぎ、妻は家事育児」という男女役割分担を反映したもので、高度経済成長を下支えした。ところが少子高齢化で労働力人口が減る今、「合理性のない思い込み」になっているという。 

 

榊原智子 

 

 

 
 

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