( 239339 )  2024/12/25 18:18:59  
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投資家は、トランプ大統領のSNS投稿に強く警戒しており、その影響が予測できないため、経済政策に対する不確実性が高い。

日本はトランプ外交の中で十分なプレーヤーになれておらず、石破首相との電話会談が短時間で終わったことにも批判がある。

一方で、安倍元首相の妻である昭恵氏がトランプ夫妻との関係を活用し、石破首相との面談を実現させたことには賛否両論がある。

昭恵氏の行動は、非公式な外交ルートとして批判を浴びたが、外交的な柔軟性を示す一環として重要であるとの議論がある。

(要約)

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(c) Adobe Stock 

 

 今投資家はドナルド・トランプ氏のSNS投稿に強く警戒している。いつ何時思わぬ“口先介入”してくるかわからないためだ。経済政策についてはトランプ氏はすでに中国・カナダ・メキシコに対する追加関税を示唆している。そういった関税や不法移民対策は再びインフレを加速させる恐れがある一方で、トランプ氏は貿易赤字の是正を訴えており、それが金利引き下げ圧力となる可能性もある。つまり何がどうなるかわからないが、なんだか波乱起きそうなのだ。 

 

 しかし、悲しいことに、日本はトランプ外交のキープレイヤーになれていない。トランプはもっぱら中東や南北アメリカに重点をおいており、日本の石破茂首相との電話会談はたったの5分で終わってしまった。だがそんな中、安倍晋三元首相の妻・昭恵氏がトランプ夫妻と会食を行ったのだ。そして石破首相との面談をアシストしてきたのだ。このファインプレーを称賛する声がある一方で、批判する声も出ている。作家で経済誌プレジデント元編集長の小倉健一氏が解説するーー。 

 

 安倍晋三元首相の妻・昭恵氏がトランプ次期大統領夫妻との会食を行ったことが、日本国内で批判を浴びている。この行動は民間人としての立場で行われたとされるが、その背景や影響について、様々な意見が飛び交っている。 

 

 人気モデルの長谷川ミラ氏は12月16日、フジテレビ系「めざまし8」に出演し、昭恵氏の行動に疑問を呈した。長谷川氏は「民間人としての肩書きは理解できるが、国葬を行った元首相夫人としての立場を考えれば、外務省や関係機関に一言知らせるべきだった」と主張した。また、「プライベートだとしても、国民が首をかしげる行動ではないか」と疑念を述べた。一方で、元大阪府知事の橋下徹氏は「夫婦は別人格であり、昭恵氏は民間人として自由に行動する権利がある」と反論した。 

 

 同じく12月16日に放送されたテレビ朝日系「羽鳥慎一モーニングショー」でも、この話題が取り上げられた。元テレビ朝日社員の玉川徹氏は、「非常に微妙な時期において、昭恵氏が会食に応じたことは不適切だ」と非難した。そして「トランプ氏の予測不可能な行動が国際的な不安要因になり得る中、民間人である昭恵氏が外交的影響を及ぼす可能性がある行動を取るのは慎重さを欠いている」と述べた。 

 

 

 また、玉川氏は昭恵氏が過去の「モリカケ問題」にも関与したとされることから、「結果的に日本に不利益をもたらす可能性がある」と警鐘を鳴らした。 

 

 これらの議論には、昭恵氏の行動を擁護する意見もある。タレントの石原良純氏は「個人的な関係が外交の一助になる可能性もある」と指摘し、財務官僚で信州大学特任教授の山口真由氏も「トランプ夫妻との個人的な絆が外交に寄与する側面もある」と評価した。 

 

 しかし、多くの批判は昭恵氏の行動が「民間人」としての範囲を超え、日本政府や国民に影響を与える可能性がある点に集中している。特に、政府側への事前の報告がないことや、その行動が国際社会における日本の立場を微妙にする恐れがある点が問題視されている。 

 

 しかし、本当に、昭恵氏の行動は、批判を受けるようなことなのだろうか。石破茂首相は、大統領当選が決まったトランプ氏との電話を5分で一方的に打ち切るという大失態を犯して以来、面会の見通しが立っていなかった。 

 

 自民党の小野寺五典政調会長によれば、石破茂首相とトランプ次期米大統領との電話会談が約5分間で終わったのは、首相の気遣いによるもので、「トランプ氏はもっと話したかったようだが、会合を中座して出てきてくれていた。首相が配慮し、早めに戻ってもらった」と報道番組で明かしている。 

 

 日本のトップリーダーにはアメリカと話す大事な要件がなかったのだろうか。全く意味不明な対応である。トランプの存在に圧倒され、怖気づいたのではないかと邪推もしたくなる。 

 

 そんな石破氏だが、ようやくトランプ氏との面談が設定される見通しとなった。石破首相が公式ルートでの会談に苦労する中、昭恵氏がトランプ氏に石破首相との会談を提案し、それが実現に至ったと考えられる。このタイミングを見れば、昭恵氏が石破外交の窮地を救ったと言っても過言ではないと筆者は推測する。以下にその根拠を挙げる。 

 

 まず、昭恵氏がトランプ夫妻と築いた個人的な関係が挙げられる。昭恵氏は安倍晋三元首相在任中、夫と共にトランプ氏との交流を深めていた。特に、ゴルフ外交や晩餐会などを通じて、トランプ夫妻との親密なつながりを形成していた。2024年12月15日の会食も、この関係性に基づき実現したものである。このような非公式な交友が外交の場面で活用された点は評価に値する。 

 

 

 トランプ氏が安倍晋三元首相に抱いていた信頼と親近感も重要な要因である。トランプ氏は安倍氏を「シンゾー」と呼ぶほど親しい間柄であり、特別な関係を築いていた。安倍元首相が亡くなった後も、昭恵氏はトランプ氏と連絡を取り合い、その友好関係を維持していた。このような背景から、昭恵氏が石破首相との会談を後押ししたと考えられる。トランプ氏は公式な外交ルートよりも、個人的な信頼関係や感情的なつながりを重視する傾向がある。この特徴を踏まえると、昭恵氏が石破首相とトランプ氏を結ぶ「非公式な架け橋」として機能したことは、理にかなっている。 

 

 外交交渉の詳細は公にされることが少ないため、これらの推測を完全に証明することは難しい。しかし、昭恵氏の行動が日本の外交における柔軟な戦略の一環として機能したことは間違いないであろう。彼女の行動がどのように評価されるべきかについては、今後さらに議論が進むのであろう。 

 

 昭恵氏のトランプ次期大統領との会談が非公式な外交ルートとして批判を受けた件について、ロジャー・マク・ギンティ氏の著名な外交論文「Pluck, Luck and Peacemaking」を基に彼女の行動を分析してみたい。この論文が示す通り、平和構築や外交において非公式なチャンネルや個人の役割が果たす意義は非常に大きい。 

 

 まず、昭恵氏の行動は、論文で指摘されている「プライベート・ピース・アントレプレナー」(私的平和仲介者)の概念に一致する。平和構築において、公式なルートが閉ざされている場合や、公式な交渉が停滞している状況では、非公式な仲介者が重要な役割を果たす。例えば、北アイルランドの平和プロセスにおいて、ビジネスマンのブレンダン・ダディ氏がIRAと英国政府の間で秘密交渉を仲介した事例が挙げられている。昭恵氏も、公式な外交ルートでは実現が難しいトランプ氏との対話を通じて、日本と米国の関係強化に貢献した可能性がある。 

 

 非公式な外交の価値は、公式なルートでは扱いづらい課題や感情的な壁を取り除く点にある。マク・ギンティ氏の論文は、非公式な交渉が「対立を完全に分断するわけではなく、例外や協力の余地を示す」と述べている。昭恵氏がトランプ夫妻と築いた個人的な信頼関係は、将来的な外交交渉や両国間の対話にとって有益な基盤となる可能性がある。トランプ氏が個人的なつながりを重視するスタイルを持つ以上、昭恵氏のような存在はむしろ戦略的価値を持つと言える。 

 

 

 非公式な外交活動には、批判や誤解を受けるリスクが伴うことも論文で指摘されている。平和仲介者や非公式な交渉者は、しばしば「異端者」や「敵の協力者」として扱われることがある。しかし、それらのリスクを恐れずに行動することが、後に大きな成果を生むことがある。昭恵氏もまた、批判を覚悟しながらトランプ夫妻との会談を実現した点で、平和構築における「勇気と決断力」を示したと言える。 

 

 昭恵氏の行動が批判を受ける中で、我々が考えるべき重要な問いがある。それは「非公式な外交活動が公式な外交にどのように補完的な役割を果たすか」という点だ。公式なルートだけでは対処しきれない状況が存在する以上、非公式なチャンネルの活用は柔軟な外交戦略の一部として必要である。昭恵氏の行動は、日本の外交における新たな可能性を示唆しており、むしろ高く評価されるべきである。彼女のような非公式なプレーヤーが果たす役割は、論文が示す通り、平和構築や国際関係の改善において重要な意味を持つ。 

 

 昭恵氏の勇敢な行動によって、日本外交は、やっと進み始めた。あとはトランプ大統領に対して、極東アジアの平和を維持し、地位協定を含む安倍晋三元首相でもできなかった高度な要求をすることが石破首相にできるのかどうかということになる。 

 

 

 
 

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