( 239694 ) 2024/12/26 14:36:22 1 00 国民民主党の玉木代表がモーニングショーに対して放送法違反の可能性を指摘し、それに反論する一方で、モーニングショーは国民民主の178万円の壁引き上げを批判してきた。 |
( 239696 ) 2024/12/26 14:36:22 0 00 国民民主「玉木代表」とモーニングショーの「玉川徹氏」
テレビ朝日の「羽鳥慎一モーニングショー」(平日:8:00)は放送法第4条に違反している可能性がある──国民民主党・玉木雄一郎代表は自身のXアカウントに、そう投稿した。正々堂々の反論と評価するべきか、政治家による報道への介入と捉えるべきか、様々な意見があるに違いない。一方で「モーニングショー」が「103万円の壁を178万円までに引き上げる」という国民民主の主張を一貫して強く批判してきたことは紛れもない事実だ。
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「モーニングショーVS国民民主党」の詳細に触れる前に、改めて、「壁の見直し」で、減税額がどう変わるか確認しておこう。
産経新聞が大和総研に取材した記事(註1)によると、103万円の壁を123万円に引き上げた場合、「単身または配偶者控除のない共働き(子供は16歳未満)で年収500万円の世帯」の減税額は1万円程度だという。
一方、178万円という国民民主の主張が実現した場合、上記の条件と同じ世帯で減税額は13・3万円まで増える。そして178万円の引き上げが実現すると、国と地方で合計7・6兆円の税収減になると政府は試算している。
「モーニングショー」が問題視していることの一つに「国民民主は税収減を穴埋めする財源を提示していない」という点がある。
では、まず玉木氏が12月23日、「モーニングショー」を批判したXの内容をご紹介しよう。ただし該当のポストは長文のため、根幹部分だけを転載させていただく。
《国民民主党が「協議再開を与党に泣きついた」とか「財務省から出てきた財源の試算にあわてている」などと一方的に報じるのはバランスを欠いていると思いますし、悪質な印象操作だと感じます》
《国民民主党に財源がないと主張するなら、自民党には物価高騰への具体策がないではないかと両面から報じていただきたいと思います。与党の123万円案による5,000円や1万円の減税では、物価高騰対策にはなりません》
《自民党も(メディアも)、財源への懸念を述べることには熱心である一方で、どう物価高を克服して、どのように日本経済を成長させ国民生活の向上を実現するのか、ビジョンを欠いています》
玉木氏は《前から申し上げているとおり、せめて違う意見を反論できるコメンテーターか、私でもいいので番組に呼んでいただけないでしょうか》と番組に要望。一方的な批判が今後も続くのであれば、放送法4条「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」の趣旨に反すると訴えた。
番組を視聴している方はご存知だろうが、たしかに「モーニングショー」は、特に番組コメンテーターの玉川徹氏が、国民民主の178万円引き上げを強く批判してきた。
玉川氏は元テレビ朝日の報道局ディレクターとして豊富な取材経験を持ち、しかも画面に映るだけで視聴率が跳ね上がる“数字を持つ男”としても知られている(註2)。現代の“オピニオンリーダー”と評しても過言ではないだろう。
ただし、玉川氏は歯に衣着せない発言が目立ち、ネット上で激しい議論が起きることも多い。2022年9月に安倍晋三元首相の国葬が営まれた際には、菅義偉元首相の弔辞を「電通が入っていますからね」と指摘。たちまち批判が殺到し、翌日の放送で事実に反する発言だったと謝罪した。その上で出勤停止10日間の謹慎処分が発表されたことは記憶に新しい。担当記者が言う。
「今回の“壁”問題に対する、玉川さんの反論は2点に要約できます。まず1点目は、178万円に引き上げるという公約の本質は何かという問題です。この公約は物価高対策とか働き控えの解消、年金問題など様々な視点で議論されてきました。それを玉川さんは『103万円問題の本質は恒久減税』と指摘。実現してしまうと税収減少と公共サービスの低下は必然であり、だからこそ国民民主は公党として財源を示す責務があると主張してきました。実際、政府が7・6兆円の税収減を試算しても、玉木さんは『財源は与党が考えるべき』と突っぱねてきたのは事実です。ちなみに恒久減税とは1年や2年といった限定的な減税ではなく、それなりの期間、持続する減税政策を指します」
国民民主の古川元久代表代行は12月22日に放送された「日曜報道 THE PRIME」(フジテレビ系列・日・7:30)に出演し、減税穴埋めの財源として地価税の凍結解除に触れた。しかし、この発言はネット上などで「減税を訴えて増税は矛盾」などの批判が集中し、古川氏は「たとえで言った。党として言ったつもりはない」と釈明に追い込まれた。
「古川さんが地価税に触れたことに玉川さんは番組で『国民民主が財源を考えていなかったことは明らか』と批判を強めました。そして第2点目は、『思い切った減税を実施すれば消費に回って経済が活発化し、かえって税収が増える可能性がある』という見解に対する反論です。178万円に引き上げた際の減税額は低所得者層より高所得者層のほうが多く、高所得者層ほど減税分は貯蓄に回す傾向が過去のデータから明らかになっていると玉川さんは番組で指摘してきました」(同・記者)
10月の衆議院選挙で国民民主は躍進を果たし、公示前の7議席を28議席と大幅に伸ばした。マスコミ各社の出口調査で有権者のうち“現役世代”の支持が多く、「103万円の壁を178万円に引き上げる」という公約が評価されたことが分かっている。
「日本テレビ系列と読売新聞社が共同で行った出口調査を見てみましょう。18、19歳の有権者から国民民主は19%の支持を集め、自民党に次いで2位。20代は26%、30代からは22%で共にトップ、40代でも15%で3位という支持を得ました。今回の総選挙では、裏金事件で揺れた自民党に強い逆風が吹いたにもかかわらず、立憲民主党は受け皿としての機能を充分に果たせませんでした。その原因の一つとして社会保障などの担い手である10代から40代の有権者が立憲民主ではなく国民民主に票を投じたことが挙げられました。今後の政治の方向性を占う意味でも、非常に重要な動きだと考えられます」(同・記者)
SNSなどネット上には「もう税金や社会保障費の負担に耐えられない」という切実な声が殺到している。現役世代の悲鳴だと考えられ、彼らが国民民主に大きな期待を寄せているのがよく分かる。
こうした動きは、ネット上でモーニングショーの報道スタンス、つまり玉川氏の発言に批判が集中することにつながっている。Xからいくつかご紹介しよう。
《玉川は、財務省の手先なのか? 元々、103万円の壁は、30年も隠し増税してきていた。その財源をどうこういうのは、おかしい! 》、《今朝のモーニングショー、玉川さんは唐突に「103万円の壁廃止で町にゴミがあふれる」とか言い出す》、《玉川徹のイカれっぷりに反吐が出る。103万円の壁は生存権の問題だ》、《ふざけんな、玉川。みんな苦しいんだよ。減税してほしいんだよ》──。
政治アナリストの伊藤惇夫氏は、国民民主の「103万円」の公約に批判的なスタンスを取っている。デイリー新潮が11月15日に配信した「元グラドルと不倫『玉木雄一郎氏』に飛び交うヤジと声援 最大の問題は『バブル人気が弾けた後』」から、コメントの一部をご紹介する。
《「目玉政策の『103万円の壁撤廃』について、玉木氏は当初、財源は『税収の上振れ分で賄う』と説明しました。ところが壁の撤廃は超大型の恒久減税を意味します。私も含めて多くの識者や政治家が『税収の上振れ分は年によって額の変動が大きく、恒久減税の財源としては不適当ではないか』と疑問を投げかけると、紆余曲折を経て現時点では『財源を考えるのは政府・与党の責任』と自民党に丸投げしてしまっています。これでは政党の政策論争としては無責任な態度と言わざるを得ません」》
今回、改めて伊藤氏に見解を求めると、「玉木さんは総選挙の際、『減税』という言葉を使わず、『手取りが増える』などとアピールしました。有権者の支持を集めた原因の一つだと考えられます」と指摘する。
「1996年、新進党の党首だった小沢一郎さんは突然、『消費税は3%に据え置きし、所得税と住民税の半減で18兆円の大減税を実施する』ことを公約に掲げました。当時の私は新進党に勤務し、政策の取りまとめも担当していました。必死に電卓を叩いて財源を捻出したことをよく覚えています。そして国民民主が電卓を叩かずに公約を発表したことも間違いないでしょう。実は昭和の時代から減税を訴えて有権者の関心を得ようとした政党は珍しくなく、国民民主の看板政策を“旧来型”と見なすことも可能です。昔からよくある減税の公約を『103万円の壁を打破する』とか『手取りを増やす』と表現したことで新鮮なイメージを与えることに成功しただけなのです」
伊藤氏によると総選挙時に玉木氏は、「103万円の壁」について現在とは少し異なる主張を訴えていたといい、これは国民民主の“本質”を考える上で重要だという。
「玉木さんは総選挙の際、学生が対象となる特定扶養控除の年収要件引き上げに力点を置いていました。これは何を意味するかと言えば、10代から20代の票を意識していたということでしょう。ところが玉木さんが考えていた以上に『103万円の壁』は広範な有権者に支持され、大きなうねりを起こすことに成功しました。それを見て『178万円への引き上げ』を強く打ち出す方針に変更したわけで、こうした経緯を見ると、やはり国民民主にはポピュリズム(大衆迎合主義)の側面があると指摘せざるを得ません」(同・伊藤氏)
これほど有権者に自分たちの公約が“刺さる”とは思ってもいなかった──それが国民民主の偽らざる本音のようだ。
「予想以上に有権者の支持が集まり、国民民主はキャスティングボートを握ることになりました。与党との協議で古川さんが10分で退席したことが話題を集めましたが、あれは必死のパフォーマンスというのが本当のところでしょう。拳を振り上げたのはいいが、その拳をどうしたらいいのか分からないようにも見えます。税金や社会保障費などの国民負担率は5割に達する勢いで、現役世代から悲鳴が上がるのは当然です。しかし国民民主の政策が指し示す射程は、あまりにも短いのではないでしょうか。本来であれば社会保障や税の制度を広い視野で抜本的に見直し、現役世代の負担が可能なのはどれくらいなのか、大きな構えで精緻な議論を行うべきです。その際は失われた30年の総括も必要ですし、アベノミクスの検証も避けては通れないでしょう」(同・伊藤氏)
物価高だけに対応するなら恒久減税よりも日銀が利上げを行い、過度な円安を是正する方が近道かもしれない。円が強くなれば100円ショップに安価な食料品が並ぶだろう。ただし、その場合は国債の利払いが増加してしまう。結局、にっちもさっちもいかないのが現在の日本なのかもしれない。
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