( 239831 ) 2024/12/26 17:11:37 0 00 「日経平均は3000円になってもなんら不思議ではない」と語る森永卓郎氏
闘う経済アナリスト・森永卓郎氏の連載「読んではいけない」。今回は、森永氏が炎上した「日経平均3000円予想」について真意を明かす。過去のバブル崩壊を振り返ると、日経平均3000円はなんら不思議ではないと考える森永氏。さらに、「リスクを正しく伝えていないメディア」にも苦言を呈す。
* * * 過日、経済系のYouTubeチャンネルにゲスト出演した際、日経平均株価について「来年中に3000円になる。本音を言うと2000円くらい」と発言した。これに対して、堀江貴文氏が私の発言を否定し、「自分が死ぬからって何でも言っていいわけじゃない」とかみついてきた。このほか、複数の経済学者が「ありえない」と異議を唱え、炎上状態となった。
しかし、彼らは現実が見えていない。いま世界で何が起こっているか。ドイツでは連立政権が崩壊し、フランスでは内閣が総辞職。シリアでは50年以上続いてきたアサド政権が崩壊し、韓国では戒厳令を出した尹錫悦大統領の弾劾訴追が可決した。世界が激動の最中にあるのだ。これだけ国際リスクがあるなかで、いまの株高が続くと思うほうがどうかしている。
1929年の世界恐慌の直前は家電産業や自動車産業の株価が高騰した。あまりにも行きすぎた価格上昇が続けば、必ず大きな反動がくるというのが過去の教訓だ。
現在に目を向けると、10年ほど前からGAFAをはじめとするビッグ・テックの躍進に続き、自動運転車やAIブームによる半導体バブルが株価高騰を支えている。だが半導体は少しでも需給が緩むと価格が大暴落する特性を持つ。技術の追い上げで供給が増えれば、価格も簡単に下がる。半導体関連の株価は近い未来ドカンと下落するだろう。
世界恐慌の際はNYダウ平均が90%近く暴落。1989年末に始まった日本のバブル崩壊でも日経平均株価は80%強暴落した。令和バブルが崩壊すれば日経平均は3000円になってもなんら不思議ではないのだ。
問題は経済に精通しているわけでもない“エセ経済学者”たちが「株価の暴落はありえない」と口を揃えることだ。今回の私の炎上騒動は主にSNS上が舞台だったが、闇深いのはテレビである。証券会社など番組スポンサーとなっている金融村の意に沿って、「株価はまだ上がる」と言い続ける人物ばかりを重用している。まっとうな経済学者でさえ、スポンサーを逆なでする発言をすれば干されるため、「株価安定コメント」に終始しているのが現実だ。
私の場合、2023年5月に財務省をはじめとする日本経済の暗部を書いた『ザイム真理教』(三五館シンシャ)を発売して以降、情報報道番組から出演依頼がなくなった。あるプロデューサーからは、「番組全体をリニューアルすることになったので」と降板を言い渡されたが、翌月にその番組を見たら、リニューアルされたのは私だけだった。
唯一レギュラー出演が続いているのは、金融村がスポンサーについていないラジオ番組だけだ。これが日本のメディアの姿なのである。
リスクを正しく伝えず、夢だけを見せるエセ経済学者たちの罪はあまりに重い。
【プロフィール】 森永卓郎(もりなが・たくろう)/1957年7月12日生まれ。東京都出身。経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。日本専売公社、経済企画庁、UFJ総合研究所などを経て現職。近著に『身辺整理』(興陽館)『投資依存症』『書いてはいけない』(ともに三五館シンシャ)など。テレビやラジオのコメンテーターとしても活躍中。
※週刊ポスト2025年1月3・10日号
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