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新NISA制度が開始して約1年が経過し、日本証券業協会の調査によると2024年1~10月に約317万件のNISA口座が開設された。

しかし、日経平均株価の変動や情報過多の中、初心者投資家は不安を抱えている。

専門家によると、つみたて投資枠を使っうまく運用をするためには定期的に点検し、自身の金融資産全体のバランスやリスク許容度を考える必要があるとアドバイスしている。

様々な情報に惑わされず、自身の資産状況を把握し、実践を通じて投資やお金に強くなることが重要だと指摘されている。

(要約)

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写真:AdobeStock 

 

新NISA(少額投資非課税制度)が開始され、もうすぐ一年。日本証券業協会の調査によると、証券会社10社の2024年1~10月のNISA口座開設件数は約317万件で、多くの人が新NISAを通じて投資を始めた。一方この一年は、日経平均株価の乱高下も世間を騒がせ、 NISA初心者へのアンケートからは不安を訴える声も聞こえてきた。SNSなどでもさまざまな情報が飛び交う昨今、初心者が自信をもって投資に取り組むにはどうしたらいいのか。新年に向けさらに最適な運用ができるよう、NISAの点検方法と、初心者がお金に強くなる秘訣(ひけつ)を専門家に聞いた。 

 

NISA(ニーサ)は、少額からの投資を行う人のために2014年1月にスタートした「少額投資非課税制度」。イギリスのISA(Individual Savings Account=個人貯蓄口座)をモデルに作られた。ここ数年は個人の資産運用に対する関心の高まりもあり、NISAの口座開設数が特に増加しているといわれている。  

 

通常、株式や投資信託などの金融商品に投資をした場合、これらを売却して得た利益や受け取った配当に対して約20%の税金がかかるが、NISA口座で投資した金融商品から得られる利益は非課税になる。 

 

【図解】新NISAの概要 

 

2024年1月から大改定された新NISAは、年額360万円(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円)、最大1800万円まで非課税保有できる。日本証券業協会の調査によると、証券会社10社の2024年1~10月のNISA口座開設件数は約317万件。新NISA開始前の23年の同時期の数字と比べると、約1.7倍の口座が開設されたという。  

 

新NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」がある。このうち、投資初心者が取り組みやすいといわれるのが、金融庁の定める基準を満たした公募株式投資信託と上場投資信託(ETF)に投資する「つみたて投資枠」だ。投資対象が国内外の上場株式など多岐にわたり自由度が高い「成長投資枠」は、より多くの投資の知識や経験が必要とされるためだ。  

 

Yahoo!ニュースがNISAの利用者1000人を対象に12月に行ったアンケートでも、新NISAの制度開始後にNISAを始めた人の73%が、「つみたて投資枠」のみを利用していると回答した。 

 

 

では、この一年でNISAを始めた初心者たちは、どのような悩みを抱えているのか。この一年は、日経平均株価が激しく変動した時期もあり、7月に最高値の4万2000円台を記録してすぐの8月5日には4451.28円の歴史的急落を経験。アンケートでは、「暴落する不安が常につきまとう」「専門家は直近の乱高下はあまり気にしないでよいと言うが、やはり下がると心配になってしまう」と乱高下おびえる姿に加え、「とりあえずオルカン(投資信託の銘柄『eMAXIS Slim 全世界株式〈オール・カントリー〉』の略称)のみ、で本当にいいのかわからない」「今の銘柄で本当によいのか不安」と自信がないまま投資を続けている姿も浮き彫りになった。  

 

この一年でNISAを始めたと回答した人の67%が、保有している投資信託について基準価額の値動きや利益の確認を「毎日~週に1回はしている」または「月に数回している」と回答。関心高く投資を続けている様子がうかがえた。一方で、この一年でNISAを始めたと回答した人の46%がNISAに関して悩みや不安が「ある」と回答。具体的には「知識が不足している」「まだよく理解していない」「SNS上に様々な情報が飛び交っていて、何が正しいのかよくわからない」という声が多く上がった。 

 

【図解】NISAを始めて1年以内の利用者に聞きました 

 

一方で、基準価額の値動きや利益の確認を「ほとんどしていない」「なにもしていない」と答えた人も22%いた。さらに、この一年で、NISAで保有している銘柄の積立額を増減したり保有銘柄を売却したりしたことのない人はおよそ半数。その理由として「どうしていいかわからない」と回答した人が最多だった。  

 

この状況を専門家はどうみるのか。 CFP ファイナンシャルプランナー・植田英三郎さんは、「NISAの資産状況を頻繁にチェックしている方が多かったのは意外でした。一方で、知識不足に不安を抱えている方や、よくわからないまま投資を続けていることにすっきりしない気持ちの方も多いようです。チェックしている人が多いのはいいことだけれど、投資信託の仕組みや用語の意味、ご自身の金融資産の全体像などを、より深く把握することで、不安を解消する一助になるかもしれません」と話す。 

 

 

長期にわたって資産形成することを目的としている「つみたて投資枠」は、「ほったらかし」にするのがよいといわれている。ほったらかしの反対のやり方は、売買による銘柄入れ替えだ。「売買は多くの場合、手数料がかかります。さらに、売買を繰り返すためには運用商品の情報が必要であり、素人や初心者には難易度が高いといえます」と植田さん。さらに、一定額で毎月積み立てていく購入方法(ドルコスト平均法)は、値下がり時に買える口数が増えるため、「『長期的には右肩上がり』という現在の経済情勢の下では優位になることが多い」(植田さん)という。 

 

植田英三郎さん 

 

アンケートでも「乱高下は気にするなというが、最初は下がると心配になった」(60代男性)、「暴落する不安が常につきまとう」(50代男性)という声があるように、売買を繰り返すことを前提とすると、株価や基準価額の変動に一喜一憂することになり精神衛生上もよくない。植田さんは、「『ほったらかし』の姿勢は、金融機関担当者の営業攻勢を避けるにも効果的。投資信託ではインデックス投信を選ぶなど銘柄選びをしっかりすれば、基本的には『ほったらかし』でよいと思います」と言う。  

 

一方で、アンケートにもあったように、知識不足などにより「どうしていいかわからない」ので「ほったらかし」というのはあるべき姿ではないと、植田さんは指摘する。  

 

「経済は生き物なので8月の大暴落のように大きく変動することがありますが、いつ変動するかの予測は不可能です。さらに、ライフプランやマネープラン、資産状況は変わっていくものですので、『ほったらかしが基本』といわれるつみたて投資枠であっても定期的に点検して、状況を確認しつつ続けていくことが必要です」  

 

では、具体的になにをしたらよいのか。初心者がまず始めることが多いNISAの「つみたて投資枠」を使っているケースを仮定し、植田さんに解説してもらった。 

 

図解】NISAつみたて投資枠 毎月点検したい項目 

 

まず点検項目として挙げられるのは、①利益額または損失額を表す、点検日時点の評価額と取得価額との差額だ。自分の持っている投資信託が合計いくらになっているのか、購入時に支払った額や前回の点検時の額と比較してみよう。  

 

次に目を向けたいのが、②基準価額の推移のグラフだ。「普段、郵送でNISAの報告書を受け取っている方などは、保有する銘柄名をインターネットで検索することでチャートを見ることができます」  

 

そして、三つ目が、③NISAだけでなく、現金や預貯金、生命保険などすべての金融資産の合計額だ。「収入が安定していない場合などは、NISAなど投資に毎月一定額を積み立てていたら、預貯金などの元本保証の金融商品の割合が少なくなっていたということもあり得ます。金融資産全体をみて、バランスがとれた状態を保てているか、チェックすることも重要です」  

 

これらの項目を、「できれば毎月、最低限半年に一度は点検して」と植田さんは言う。  

 

例えば、収入の増減が起きた場合には、それに合わせて無理のない積立額に調整する必要がある。さらに、年齢や収入の変化、資産総額によって、リスク許容度も変化するため、それに合わせて最適な金融資産の持ち方を検討する必要がある。  

 

「よく言われるのは、2、3年分の生活資金と教育資金・住宅購入資金などの目的の決まった資金は運用にはまわさないで残しておくのが望ましいということ。残りが投資運用資金になります。一般的に、若い世代ほど今後収入を得られる期間が長く収入が増える可能性も高いため、リスク許容度は高くなります。逆に年をとるほどリスク許容度は低くなります。一方で、資産総額が増えて投資に回せる余裕資金が増えると、その分リスク許容度が高くなる傾向もあります」  

 

「暴落が不安」「今の銘柄でよいのか」。そんな不安を解消するには、まずは自分の資産状況の全体像を把握し、どの程度のリスクを許容できるのかを振り返るところから始めるのがよさそうだ。「保有していなくても気になる銘柄の基準価額のチャートを追って保有銘柄と比較してみたり、話題の企業の株価の推移を見てみたりすることでも、値動きの感覚をつかむことができ、漠然とした不安の解消につながるかもしれません」 

 

 

「つみたて投資枠」で値動きに慣れ、さらに多くの資金を投資にまわしたいという場合や、株式投資にも興味が出てきたような場合に、検討されるのがNISAの「成長投資枠」だ。  

 

植田さんは、「投資信託だけで『つみたて投資枠』と『成長投資枠』の両方を使う選択もあるが、一定期間(1~2年)投資信託で運用して投資の感覚に慣れたら、株式投資を併用することをお勧めしています」と言う。 

 

【図解】株と投資信託の比較 

 

投資信託は分配金が出るものもあるが、基本的には長期的に保有して値上がり益で資産を増やすことを目的としている。一方株式投資は、自分で運用するため知識や手間も必要になるが、その分手数料が低く、高成長銘柄を選ぶことで投資信託より高い収益が期待できるうえ、東証プレミアム銘柄の場合、平均2~3%の配当があるという。  

 

「投資の知識を増やすために、マネースクールや資格取得など様々な勉強方法がありますが、投資信託協会や日本証券業協会、金融庁のウェブサイトにわかりやすく整理された情報が載っているので、まずはそういったものを活用して、わからないことや関心をもったことを調べていくのがよいと思います」と植田さん。  

 

「知識不足」を不安に感じている投資初心者は多いが、「並行して、どんどん実践をしていってほしい」とも、植田さんは話す。  

 

「私自身、定年退職後にファイナンシャルプランナーの資格を取りましたが、他人にお金のアドバイスができるようになるまでには10年ほどかかりました。金融商品で損をして痛い目にあったこともあります。実践をして、損とはどういうことか、コストとはどういうことかを身をもって経験する。それが、投資を始め資産運用やお金に強くなる一番の近道だと思いますよ」 

 

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」はYahoo!ニュースがユーザーと考えたい社会課題「ホットイシュー」の一つです。生活防衛や資産形成のために、経済ニュースへの理解度や感度を上げていくことは、今まで以上に重要になってきています。一方で経済や金融について難しいと感じる人も。くらしと地続きになっている日本や世界の経済について、身近な話題からひもとき、より豊かに過ごすためのヒントをユーザーとともに考えます。 

 

 

 
 

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