( 241304 )  2024/12/29 16:41:01  
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日本銀行の職員は高給や手当が充実しており、さらに雇用延長の制度も整備されている。

退職後も高額な企業年金や天下り先まで用意されているため、生活に不自由することはない。

一方で、一部ではこれらの待遇に対する批判もあり、日本銀行側は支給基準や再就職ルールに沿っていると主張している。

(要約)

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日銀職員は雇用延長の面でも恵まれている 

 

 国民の生活に直結する物価を調整するのは、日本銀行が持つ重要な機能の一つだ。インフレが止まらず、多くの庶民が負担増を強いられるなか、その日銀の職員は「最後の特権階級」とも言うべき、恵まれた好待遇を享受していた。日銀広報課によると、「常勤職員の令和5年度の年間給与額の平均は846.9万円」。実質年4回の職務手当があり、退職金も高額だが、好待遇はそれだけでは終わらない。 

 

 雇用延長の面でも恵まれている。 

 

 日銀は2024年4月から60歳定年を2年ごとに1歳ずつ延長することを決め、60歳から新たな定年までは管理職を外れる役職定年を導入した。定年後は雇用延長制度で「エキスパート職員」として採用される。 

 

 元管理職の場合、エキスパート職員(専任職)の時給は最高4395円、「1日8時間、月10日勤務」で月給約35万円、フルタイムの月20日勤務なら月給約70万円になる計算なのだ。 

 

 日銀はかつて各地に広大な支店長役宅や運動場などを持ち、本誌などの批判を浴びて資産売却を進めているが、現在も東京・赤坂の勝海舟の屋敷跡に建ち、首相や海外の要人との会談に使われる「氷川分館」や、フレンチレストランがある六本木の迎賓施設「鳥居坂分館」、研修施設の「目黒分館」など多くの資産を保有している。 

 

「鳥居坂分館は日銀OBも利用できます。予約すれば友人や家族とフレンチを味わえるし、接待にも使える」(日銀OB)というから、一部は職員やOBの福利厚生にも利用されていることがわかる。 

 

 天下り先も多い。東証プライム市場上場の日本証券金融には、10代連続で社長に日銀理事経験者が天下っているほか、会長と執行役員が日銀OBだ。同社の大株主の投資ファンドから「企業価値を損ねる天下りだ」と批判されている。 

 

 本誌・週刊ポストの調べでは、ほかにも、富山銀行、フィデアホールディングス(荘内銀行と北都銀行の持ち株会社)、七十七銀行、SBI新生銀行、群馬銀行、京葉銀行などの金融機関をはじめ、多くの上場企業の社外取締役などに日銀の幹部OBが天下り。 

 

 さらに、金融機関の短期資金取引や為替取引を行なう日本の短資会社3社(上田八木短資、セントラル短資、東京短資)のすべてに日銀OBが再就職している。 

 

 日本証券金融、銀行、短資会社はいずれも日銀に当座預金口座を持つ取引先で、日銀が日銀法に基づいて「考査」と呼ばれる経営内容のチェックを行なう対象企業だ。日銀の“優越的地位”を利用した天下りではないかとの批判が絶えない。 

 

 日銀マンは高給や手厚い手当に加え、退職後も高額な企業年金や天下り先まで用意されている。これほど恵まれていれば、利上げしても生活には困らないだろう。 

 

 

 日銀の言い分を聞こう。 

 

 まず高額給料や退職金については、〈「支給の基準」では、「適切な政策運営及び業務サービスの維持・向上を図るために必要な人材を確保する上で十分競争力のあるものとし、そうした人材の、主要民間金融機関のほか主要民間企業等における処遇の実情をも勘案すること」と定めて〉いるとした。また、〈最近では、平成27年及び平成31年に、主要民間金融機関及び主要民間企業等の実情を踏まえて、退職手当の引下げを行っています〉(広報課)と説明。退職金を2回も引き下げてなおこれほど高いのだ。 

 

 また、雇用延長のエキスパート職員についてはこう反論する。 

 

〈(現在適用している時給区分の)最高額は3556円で、ご指摘の4395円の区分が適用されている者はおりません。実働時間は職員によって異なりますが、月手当が70万円となる者はいません〉 

 

 さらに天下りについては、〈再就職については、日本銀行法の規定に基づき制定している「服務に関する準則」において、ルールを定めています。具体的には、役員の場合、日本銀行と当座預金取引を有する民間金融機関への再就職を、退任後2年間自粛するほか、局店長級の職員の場合、退職前2年間に就任していた職位が、当座預金取引先と密接な関係がある場合、当該当座預金取引先への就職を、退職後一定期間自粛するなどのルールを設定しています。当該期間経過後のOBの動向については、個人に関することであり、お答えする立場にありません〉(同前)と回答した。 

 

 日銀から天下りを受け入れている金融機関側は、「日銀の再就職ルールに従っております」(セントラル短資総合企画部)など、どこもほぼ同じ趣旨の回答だった。 

 

「利上げによる負担増」に怯える国民に、通用する説明なのだろうか。 

 

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※週刊ポスト2025年1月3・10日号 

 

 

 
 

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