( 241879 )  2024/12/30 18:08:59  
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生活保護は、健康で文化的な最低限度の生活ができない人に対するセーフティネットであり、2015年のピーク時から徐々に減少しているものの、年平均200万人程度が受給している。

東京都23区に注目し、2024年の生活保護受給者数は約200万人。

1980年代に減少傾向となり、1995年から上昇。

特に大都市では貧困が高まり生活保護率が上昇している。

東京都ではおおよそ84.7%の生活保護世帯には働いていない人がおり、9.8%が働いているにもかかわらず受給している。

単身者が85.6%で、高齢者(65歳以上)が58.2%で若干高い。

特に足立区が保護率が高く、中央区が増加率が高い。

貧困に直面しやすい高齢者や一人親家庭が多い地域では保護率が高くなっている。

(要約)

( 241881 )  2024/12/30 18:08:59  
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※写真はイメージです/PIXTA 

 

健康で文化的な最低限度の生活ができない人に対するセーフティネットである「生活保護」。その受給者は2015年のピーク時から徐々に減少傾向にあるといわれていますが、それでも年平均200万人もの人が受給しています。今回、東京都23区に焦点をあて、生活保護の実態を紐解いていきます。 

 

厚生労働省『被保護者調査』によると、2024年9月、生活保護受給者数は200万7,830人、165万0,802世帯でした。 

 

生活保護受給者数は1980年代中ごろを境に減少。1995年ごろを底にして上昇傾向に。1990年代後半の金融危機、ITバブル崩壊、リーマンショック、東日本大震災などの危機を経て、2015年に216万人をピークに近年は緩やかに減少傾向にあります。ただ生活保護受給者200万人超えというのは、1950年代前半の水準。一概に比較することはできませんが、生活に困窮し、生活保護に頼らざるを得ない人が200万人いるという事実は変わりません。 

 

都道府県別にみていくと、2022年、生活保護率(被保護実人員の1ヵ月平均÷各年10月1日現在総務省推計人口(総人口)×1,000)が最も高いのは「沖縄県」で2.24%。「北海道」「青森県」「福岡県」と続き、「東京都」は第5位。東京都のような大都市は貧困に直面しやすい単身高齢者や、母子世帯が多くなり、生活保護率を押し上げています。 

 

東京都に焦点を絞り、生活保護の実態に迫っていきましょう。東京都福祉局『令和5年度福祉統計年報編』によると、生活保護世帯は23万1,299世帯。15年ほど前の2010年の生活保護世帯数を100とすると、2023年は118.5。ここ5年は118台で推移しています。 

 

生活保護世帯を詳しくみていくと、家族のなかに働いていない人のいない世帯は全体の84.7%と圧倒的。一方で世帯主が常勤で働いているのにも関わらず生活保護を受けているのは全体の9.8%。このなかには、働いているにもかかわらず十分な収入を得られず貧困状態にある、いわゆるワーキングプアが相当数いると考えられます。 

 

また単身者の割合が85.6%。また65歳以上の割合は58.2%と、最新の全国平均54.9%と比較すると、若干、高齢受給者が多いといえるでしょう。 

 

 

続いて、地域別にみていきましょう。生活保護受給者が最も多いのは「足立区」で1万8,805人。「江戸川区」1万5,351人、「板橋区」1万4,462人、「練馬区」1万3,624人、「大田区」1万3,078人と続きます。ちなみに人口が最も多いのは世田谷区で93万人。「練馬区」「大田区」「足立区」「江戸川区」と続きます。人口の多い区で生活保護者は多くなりますが、一概に人口に比例するとはいえません。 

 

続いて保護率でみていくと、東京都平均が19.6‰、区部平均が20.5‰。そんななか、最も保護率が高いのが「足立区」で33.9‰。一方で最も低いのは中央区で7.0‰でした。 

 

 

 

【東京23区生活保護率ワースト5】 

 

1位:足立区…23,558人/33.9‰ 

 

2位:台東区…7,023人/32.0‰ 

 

3位:板橋区…17,695人/30.2‰ 

 

4位:葛飾区…13,368人/29.3‰ 

 

5位:江戸川区…19,307人/27.9‰ 

 

また市部で最も保護率が高いのが「清瀬市」で27.2、島嶼部を含めると「八丈町」がワースト1で33.8‰。一方で市部で最も保護率が低いのが「国分寺市」で9.2‰。島嶼部では「利島村」が低く3.0‰でした。 

 

東京23区の保護率を細かくみていくと、東高西低の傾向にあることがわかます。さらに増加率をみていくと、また別の側面がみえていきます。2010年の保護率を100とした際、最も増加率が高かったのが「中央区」。2010年を100とした際、2023年は145.8。続いて「世田谷区」が131.7、「中野区」「葛飾区」が126.7、「練馬区」が126.3……増え方では「中央区」が圧倒的です。また、増加率で最も少なかったのが「台東区」で89.9。現状、2010年の水準を下回っているのは「豊島区」98.1、「文京区」98.9、「千代田区」99.8の4区のみでした。 

 

「中央区」は「千代田区」や「港区」とともに、首都・東京のなかでも都心とされるエリア。なぜ「中央区」で生活保護受給者が増えているのでしょうか。 

 

中央区は他2区に比べて、商業の集積が進み、飲食業やサービス業の割合が多いエリア。コロナ禍の影響により、生活困窮者が増えたといわれています。また貧困に陥りやすい高齢者やひとり親でも、比較的仕事を得られやすいのが飲食業やサービス業。仕事を得ようと生活困窮者が集まるため、保護率も上昇するというわけです。 

 

多くの人が行き交う大都会・東京。華やかさの裏側には、貧困にあえぎ、生活保護を受けながら必死に生きている人たちがいます。 

 

[参考資料] 

 

厚生労働省『被保護者調査』  

 

東京都福祉局『令和5年度福祉統計年報編』 

 

 

 
 

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